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「保育園落ちた」入園式5日前に内定取り消し アレルギー児の受け入れ体制、全国で課題に

2017年04月17日 15時59分 JST | 更新 2017年04月20日 18時08分 JST
Yurikoizutani / Huffington Post

東京都大田区の看護師の女性(27)は、3月29日の夕方、4月から1歳の長男を預けるはずだった東京都の認証保育所から突然、内定取り消しの電話を受け、絶望的な気分になった。

長男には食物アレルギーがある。女性によると、保育所を運営する法人の理事長は、電話で取り消しの理由をこのように話したという。

「食物アレルギーのことは聞いていましたが、アナフィラキシーとは知らなかった。給食スタッフが帰った後、息子さんのアレルギーに対応できる自信がないので...」

「こんな時期に言われても困ります」。女性は目の前が真っ暗になったという。食い下がったが、保育所側は「預かれない」「ギリギリの連絡になったのは最後まで受け入れの努力をしようとした結果」と話した。「こちらでも他に入れる園を当たる」「4月中旬までは一時保育として預かることもできる」などと提案もあったが、緊急事態だったため、女性は自力で他の保育所を探した。

■「アレルギーの子、預かれる」と言っていたのに

長男は生後6カ月頃、アレルギーの症状が始めて見つかった。卵入りのおやつを誤って食べて、嘔吐し、全身に蕁麻疹ができた。意識を失うような重い症状(アナフィラキシーショック)ではなかったが、病院で検査を受けて卵アレルギーだと診断を受けた。

※東京都の調査報告書では、アナフィラキシーについて「『食物、薬物、ハチ毒などが原因で誘発される全身性の急性アレルギー反応をいう。じんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、呼吸困難などの呼吸器症状、目や鼻などの粘膜症状が 2カ所以上の臓器に同時に、かつ急激に現れる状態』」と定義されている。女性の長男は嘔吐と蕁麻疹という2カ所への症状が出たので「アナフィラキシー」と診断された。アナフィラキシーのうち、ショック状態(血圧低下や意識障害など生命の危機的な状態)に陥っている状況を、アナフィラキシーショックと呼ぶ

それ以降、離乳食では卵を使用していない。しかし、病院の指導の下で、最近は卵黄だけを食べさせる慣らし食を始められるようになった。

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この認証保育所の「しおり」。アレルギーに対応すると書いてあった。

女性の住んでいる大田区は、保活の激戦区。通園が可能な12カ所の保育所に申し込みをした。アレルギーのある子でも預けられるか、問い合わせで確認したが、全ての保育所が対応可能と答えた。いずれも「2〜3人は在籍している」との答えだった。

区の認可保育所は全て落ち、同じ区内にあるこの東京都の認証保育所だけが受け入れ可能だった。アレルギーについても確認し、1月30日に入所が内定、入園金も振り込んだ。

その後、給食の担当者との食育面談では医師の指示書も提出し、アレルギーの原因を除去する給食が必要であることなどを確認した。

ところが、2月に健康診断を受けた後、入園式のわずか5日前になって、保育所は突然に内定取り消しを女性に通告した。女性は期間限定で母親に仕事を休んでもらい、3月中旬から引き継ぎのために既に仕事に復帰していた。4月以降、本格的に仕事を再開する予定だった。

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理事長から3月27日に女性に送られたメール。この時点では「園として対応を整えたい」と言っていたのだが...。

絶望的な気分になったが、仕事のシフトはもう決まっている。女性はすぐさま、あちこちの保育所に問い合わせた。区の助けもあって、何とか、3月31日になって、別の認証保育所に半年限定で長男を預けられることが決まった。

「アレルギーについては何度も確認し、医師の指示書も提出していた。それを、ギリギリになって内定取り消しだなんて酷すぎます」。

女性は、半年後のために保活をまだ続けなくてはならない。

東京都少子社会対策部保育支援課の担当者はハフィントンポストの取材に対して「あってはならないこと」と話した。

■保育園はなぜ預かれなかったのか

ハフィントンポストの取材に対して、保育園の理事長は文書や電話でこのように回答した。

理事長はアレルギーだからといって一律、預かれないわけではなく、人員など「園全体の体制の問題」と説明している。

今回の件の最大の問題は、当園の事務手続の遅延で、入園選考取消のご連絡が大変遅くなってしまったことだと考えております。
この点大変ご迷惑をおかけしたことを、【長男】さんとご両親に対して申し訳なく思います。入園申し込みの段階でアナフィラキシーについては触れられていなかったこともあり、医師の診断により当園に明らかになった時点では人員の手配も試みましたがかなわぬ状況でした。受け入れたい気持ちもありながら、お預かりする可能性のある時間全てをカバーする人手を確保できなかったことから、生命にかかわるアナフィラキシーショックの可能性のあるお子様を責任を持って預かることができないと判断したものです。
当園は、アレルギーを理由に拒否したわけではなく、アレルギーや障害をお持ちのお子様を差別し、一律に入園を拒否しているわけではありません、また、当園が認可園ではないことから、認可園以外はきちんとした保育ができないという誤解が生じるのは不本意です。

■多くの保育園で、アレルギーの子への対応が課題に

入園間際の内定取り消しについて、保育所側も非を認めている。

一方で、アレルギーのある子の受け入れには、一般的に保育所側でも苦慮している事情があるようだ。

保育所のアレルギーの子への対応については、東京慈恵会医科大学の研究班が厚労省の事業としてまとめた調査報告書が発表されている。2016年2月に、全国の認可・認可外保育所など約3万2000の施設を対象にして、約半数から回答を得た大規模な調査だ。

それによると、アレルギーの子どもがいる施設は約8割。多くの施設にとってアレルギー対応が課題になっている。対応としては、約8割の施設で、原因となる食材を抜いた給食を提供し、約7割で専用食器などを使用していることがわかった。

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内定通知書。「内定を取り消すこともある」の文言はあるが、通知日は1月30日。

一方で、アレルギーのある子に原因となる食材を誤って配膳した、あるいは食べさせてしまったことがある施設が30%もあった。子どもがアナフィラキシーを起こしたことがある施設は、4.5%あった。

調査報告書では、「個別対応には多くの人員配置が必要だが、現状では十分な人員確保は難しい。保育士が余裕をもって受け入れられず『対応に責任が持てないから』という理由で、食物アレルギー児が敬遠される傾向があるものと推察する」と指摘されている。

今回の女性もまさにこの推察と近いケースだと言えるだろう。

■「アレルギー対応可能な人員配置を」

一方、東京都では、2012年に起きた調布市の小学校での死亡事故をきっかけに、保育所を含む子どもの施設でのアレルギー対応のマニュアルを作成・配布し、実態の調査も行っている。

2014年度の東京都の調査結果によると、食物アレルギーのある園児・児童の受け入れ状況について、認可保育所は98.2%、認証保育所では95.6%以上の施設が「預かる」と回答した。一方で、「預かる」とした施設でも、「対応可能な場合のみ」、「重症者やアナフィラキシーの既往がある児は預からない」と回答したところがあったという。

2013、2014年度にアレルギーなどに関する外部の研修などに参加した施設は認可保育所で90.6%、認証保育所で80.1%だった。不参加の主な理由は、日程が合わない40.8%、該当する園児・児童がいない28.5%、人手不足24.4%だった。

行政への要望の項目では「アレルギー対応食は通常給食より材料費が高く、人手もかかる。忙しい中でミスが起きやすくなるのではないか。現場の負担が増大している」との回答も寄せられていた。

東京都によると、都が定めている認証保育所として園を運営するためには、『アレルギーやアトピーのある子に配慮すること』とされる実施要項の規定に従うことが必要になっている。しかし、受け入れが認証の条件になっていたり、受け入れた保育所に対して金銭・人員的な補助があるわけではない。

つまり、受け入れるかどうかは保育所の自主的な判断になる一方で、万一の場合の責任は保育所が負う可能性もある。

都の担当者は、「今回の対応はあってはならないことで、望ましい対応とは言えない。しかし、民間同士の契約なので介入はできない。配慮もあくまでお願いベース。都としては『食物アレルギー緊急時対応マニュアル』で保育所に情報提供すること、実施要領で配慮をお願いすることで精一杯です」と話している。

小児科の看護師でもある女性はこう訴える。

アレルギーは強く反応が出る時もあれば弱く出る時もある。軽いと思っていた子でも、時にはアナフィラキシーを起こすこともある。『軽ければ対応可能』と思っていたこと自体が、アレルギーについての知識がないことを露呈しているなと思いました。
今の時代、アレルギーがある子はごく一般的。それが保育園に預けられないとなると、親たちは仕事に復帰できなくなってしまう。保育士さんも負担が大きい中で心苦しいですが、保育所には、命を預かる以上はきちんと勉強してほしい。行政には勉強して対応できるような、余裕のある仕組みを整えてほしいと思います。

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