連邦最高裁判事の人事、共和・民主の駆け引き激化 「フィリバスター」vs.「核オプション」の行方は?

党派間の緊張は強い。
U.S. Supreme Court nominee judge Neil Gorsuch listens to a question as he testifies during the third day of his Senate Judiciary Committee confirmation hearing on Capitol Hill in Washington, U.S., March 22, 2017. REUTERS/Jim Bourg
U.S. Supreme Court nominee judge Neil Gorsuch listens to a question as he testifies during the third day of his Senate Judiciary Committee confirmation hearing on Capitol Hill in Washington, U.S., March 22, 2017. REUTERS/Jim Bourg
Jim Bourg / Reuters

アメリカ上院司法委員会は4月3日、ドナルド・トランプ大統領が連邦最高裁判事に指名したコロラド州デンバー第10巡回控訴裁判所のニール・ゴーサッチ判事を承認した。

今後は上院本会議での採決となるが、野党民主党は議事進行を妨害するフィリバスター(長時間演説などの議事妨害)を仕掛ける構えだ。フィリバスターが宣言されれば、議員が1人でも要求した段階で無制限で審議が継続される。

上院は共和党52議席、民主党48議席で共和党が過半数を占めるが、フィリバスターを打ち切るためには、上院の全議員の5分の3(60議席)以上の同意でクローチャー(討議終結決議)を行う必要がある。このため、ゴーサッチ氏承認のためには民主党から賛成票8票が必要になる。

または、60票で承認という上院の規則を変更する方法もある。下級審裁判所の判事については2013年に規則変更し単純過半数(51票)の賛成票で承認されるが、最高裁判事については変更されていない。

トランプ大統領は2月1日、共和党の上院議会首脳のミッチ・マコーネル上院院内総務に、連邦最高裁判所判事に指名したニール・ゴーサッチ氏を承認するために、単純過半数の51票で承認されるよう、上院の規則変更を求めると語った。

上院の規則変更は最後の選択肢を意味する「核オプション」と呼ばれる禁じ手であり、議会では長年共和・民主両党ともこの手段に踏み切ることを躊躇していた。

民主党はゴーサッチ氏承認拒否を目指し、阻止に必要な41議員の確保に動いていた。このマジックナンバーは、3日にクリス・クーンズ上院議員(民主党)が阻止に加わると表明した時点で達成された

クーンズ氏は「私はクローチャーに反対します」と、自身が属する民主党の議事妨害を支持する意向を表明した。「最終的に我々全体が『核オプション』を回避する方法を見つけ、次の連邦最高裁判事の空席補充を党利党略で決めないという確約がない限り、クローチャーには応じられません」

共和党側には現在2つの選択肢がある。1つはトランプ大統領に別の候補者を指名するよう求める。これは民主党の要求を飲むことになるからまず考えられない。もう1つは「核オプション」を行使して上院の規則を変更し、最終的に民主党抜きでゴーサッチ氏の承認を出来るようにすることだ。これはあり得る。

共和党側は「核オプション」を行使することも辞さないと示唆している。

チャック・シューマー民主党院内総務は、ニール・ゴーサッチ氏の最高裁判事指名にフィリバスターを発動させるための必要な票数をすでに確保している。BILL CLARK/CQ ROLL CALL

規則変更など誰しも本音ではやりたくない。現在は最高裁判事の任命と法案の採決に対してフィリバスターが使えることになっている。

もし共和党がゴーサッチ氏の承認に必要な60票の要件を廃止すれば、上院が議会妨害のルール自体を無視するのは時間の問題だと危惧する人たちもいる。そうなれば、上院の採決は下院の単純過半数決議に近付き、コンセンサスを重視した決議にプライドを持つ上院の伝統が失われる。

共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員は「そうなったら、大変悲しいことだ」と語った。

党派間の緊張は強い。民主党は今も、バラク・オバマ大統領が指名したメリック・ガーランド氏の指名を拒否した共和党に根強い不信感がある。共和党はガーランド氏に対する指名公聴会の開催すら拒否し、トランプ大統領にゴーサッチ氏を指名させた。民主党はゴーサッチ氏の承認を阻止するよう、彼らの支持基盤からも強い圧力を受けている。一方で共和党は、民主党がゴーサッチ氏の承認か、上院規定を骨抜きにするかの選択を迫っている、と憤っている。

共和党は、7日の本会議で採決できるよう、着々と手続きを進めている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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