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シリアに巡航ミサイル59発 米ロ関係の緊迫化は避けられない

2017年04月07日 20時41分 JST | 更新 2017年04月07日 20時41分 JST
Carlos Barria / Reuters
U.S. President Donald Trump delivers a statement about missile strikes on a Syrian airfield, at his Mar-a-Lago estate in West Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017. REUTERS/Carlos Barria

アメリカ軍は4月6日、初めてシリア政府への直接的な軍事攻撃を開始した。6年間にわたるシリアの内戦に対してアメリカの関与を強めた形だ。

2日間の協議を終えたドナルド・トランプ大統領は、軍に対し、シリアのシャイラト空軍基地を標的に59発の巡航ミサイルを発射する許可を出したと、国防総省(ペンタゴン)報道官ジェフ・デイビス大佐が説明した。これは4日にシリアのバッシャール・アサド大統領が主導したとみられる、反政府派支配地域ハンシャイフンへの化学兵器攻撃の報復措置として実行された。アメリカの政府高官は、化学兵器による攻撃で70人以上が死亡したとロイター通信に語った。

トランプ氏の声明全文は以下の通り。

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アメリカ国民のみなさん。4日にシリアの独裁者バッシャール・アル・アサドは何の罪もない市民に対し、恐ろしい化学兵器で攻撃した。アサドは致死性の神経ガスを使用し、無力な男性、女性、子供たちを窒息死させた。非常に多くの人がゆっくりと、残酷な方法で亡くなった。かわいい赤ちゃんたちまで、この残忍な攻撃で無残に殺された。いかなる神の子もこのような恐怖に苦しむべきではない。

今夜、私は化学兵器攻撃の拠点となったシリア軍の飛行場を標的に軍事行動を命じた。致死性の化学兵器の拡散と使用を防止、抑制することがアメリカの国家安全保障上の重大な利益となる。シリアが、禁止された化学兵器を使用し、化学兵器禁止条約に違反し、国連安全保障理事会の要請を無視したことは明白だ。

数年にわたりアサドの態度を改めさせようとしたこれまでの試みは、すべてことごとく失敗した。その結果、難民危機はますます悪化し、地域は不安定になり、アメリカとその同盟国を脅かしている。

今夜、私はすべての文明国に対し、シリアの虐殺と流血、ありとあらゆるテロ行為を終わらせるために協力を求める。私たちは問題だらけの世界で困難に直面し、神の知恵を求めている。また傷ついた人たちの命と亡くなった人たちの魂のために祈りをささげる。そしてアメリカが正義の側に立つ限り、平和と調和が最後に勝利すると信じている。

おやすみなさい。アメリカと全世界に神のご加護を。ありがとう

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トマホーク対地巡航ミサイルが、アメリカ東部夏時間4月6日午後8時40分、地中海東部の駆逐艦から発射された。アメリカ軍は、シリア領空に操縦士が搭乗した戦闘機を送ることなく目的物を爆撃できる。標的は、戦闘機、強化格納庫、石油貯蔵施設、物流倉庫、弾薬庫や掩蔽壕、対空防衛システム、レーダーであるとデイビス大佐は述べた。「最初の指示は、シリアの戦闘機やサポート施設や設備を激しく損壊あるいは壊滅させ、シリア政府が化学兵器を使えないようにすることだ」

シリア軍は7日声明を発表し、アメリカ軍のミサイル攻撃は「あからさまな侵略行為」と批判し、6人が死亡し、被害は広範囲に及んだと主張している。ホムス県のタラル・バルジ知事もミサイル攻撃を非難し、武装勢力掃討の目標を果たすと強調し、「シリアの指導者、政策に変更はない」と述べた。

トマホークがシリアに向けて発射した動画。詳細はhttps://go.usa.gov/xXQ7t。

■ シリア攻撃の法的根拠は?

下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長(民主党)はMSNBCに、「追加攻撃の計画については現在のところない」と語った。シフ氏は、6日夜に国家情報長官のダン・コーツ氏から報告を受けた。

化学兵器の攻撃について、シリア政府は関与を否定しているが、レックス・ティラーソン国務長官は6日、アサド政権が関与しているのは「疑う余地がない」とトランプ政権が捉えていると述べた。ニューヨークタイムズのピーター・ベイカー記者が「アメリカがアサド大統領を退陣させるために国際的な連携役を担うかどうか」と尋ねると、ティラーソン氏は、「そのプロセスを進めている」と述べた。これはトランプ政権のこれまでの立場とは完全に異なる。

トランプ氏は6日、大統領専用機内で記者団の質問に答え、アサド政権に対して「何かしらの対応が必要だ」だと述べた。しかし彼は、アサド氏の退陣をはっきりとは求めなかった。

「アサド大統領は恐ろしいことをしたと思う」と、トランプ氏は記者団に語った。「シリアで起こったことは人類の恥だ。私は、アサド大統領が実行したと思っている。何かしらの対応が必要だ」

シリアへの軍事介入は、シリアの主要な同盟国ロシアとの連携、過激派組織IS(イスラム国)との戦い、シリア内戦の和平交渉といったトランプ氏の選挙公約からは完全に逸脱している。アサド政権は内戦を通じて何度か化学兵器攻撃を行ったとして非難されているが、トランプ氏はかつてアサド氏を、「不愉快だが安定的な支配者だ」と評していた。化学兵器による攻撃の犠牲者を撮影した写真には子供が多く含まれており、これでトランプ氏の立場が変わったとみられる。

アサド政権を攻撃する法的根拠(仮にあるのだとしたら)について、トランプ氏の主張ははっきりしない。アメリカはISがアルカイダの分派として、2001年の軍事力行使権限法に基づき、シリア領内のISを爆撃する権限を主張してきた。しかし、シリア政府に対する軍事行動を認めると解釈できる、議会の承認を得た戦争権限法はない。自国防衛だと主張することもできない。バラク・オバマ前大統領が2013年、化学兵器を使用したアサド政権に対し今回と同様の報復措置を検討したときには、オバマ氏は議会の承認をまず最初に求めようとした。

■ 急激な方針転換

アサド政権に対するアメリカの一方的な攻撃は、間違いなくロシアとの間に緊張が生まれる。ロシア政府は長年シリアを政治的、軍事的に支えており、2015年9月にはアサド氏を支持する空爆作戦を開始した。

「アメリカはプーチン大統領とは連携しなかった」と、ティラーソン国務長官は述べた。国防総省のデイビス大佐によると、ロシア軍は攻撃に先立ち、従来からある「衝突回避連絡網」を使って通達を受けた。アメリカは「空軍基地にいるロシア人とシリア人の人員に対する危険を最小限に留める」ための予防線を張ったと、デイビス大佐は述べた。しかし、攻撃で死傷者が出たかどうかについては明らかにしなかった。

トランプ氏は大統領就任前、シリアへの介入に断固として反対し、大統領就任以降はシリア難民のアメリカ入国を阻止しようとしてきた。しかし、今回の軍事行動はこの路線に逆行している。

「数年にわたりアサドの態度を改めさせようとしたこれまでの試みは、すべてことごとく失敗した」と、トランプ氏は6日に語った。「その結果、難民危機は深刻化し続け、この地域は不安定化し続け、アメリカとその同盟国に脅威をもたらしている」。しかしトランプ氏は、シリア難民の入国禁止の立場を変えるかどうかについては、明らかにしなかった。

2011年の内戦開始以降、2万4000人の子供を含む20万7000人の民間人が戦闘で死亡している。2013年には、シリア軍によるダマスカス近郊東グータへのサリンガスを使用した攻撃により1000人が死亡したが、人権団体の記録によれば、以降も小規模な化学兵器を用いた攻撃が複数回行われている。

ここ数年のアメリカのシリア政策は、ISの掃討と、領土の奪還を目指すクルド人民兵組織への軍事支援を重視していた。ISが支配する都市ラッカへの進出を支援するため、現在シリアには数百人のアメリカ兵が駐在しているワシントンポストによると、アメリカ軍はシリア北部に1000人の兵を追加派遣する予定だ。

今回の攻撃が行われる以前に、トランプ政権はアサドから権力を奪うことは優先課題ではないと表明していた。しかし、民間人に対する化学兵器の攻撃が起きたことで、トランプ氏は5日、「シリアやアサド政権に対する私の態度は大きく変わってしまった」と語った。

「昨日子供たちを襲った空爆は私にとって大きな衝撃を与えたということだ。大きな衝撃だ。空爆はひどい、とてもひどいことだ」と、トランプ氏は批判した。「空爆を目にしたが、これ以上にない非常に最悪の状況だ。私には柔軟さがあり、非常に大きな可能性として、伝えたいのは、空爆はすでに起こってしまったことであり、シリアやアサド政権に対する私の態度は非常に大きく変わってしまったということだ。もう変えられない」

今回トランプ政権が急激に方針転換したことを考えると、将来どのような方向へ進むのかは不透明だ。攻撃後、ティラーソン国務長官はアメリカの政策について混乱を招くようなコメントを出した。「今回の攻撃により、シリアでのわが国の軍事活動について方針や姿勢が変わったとはいえない。その点では変更はない」

U.S. Navy

2017年4月7日、地中海から攻撃を行うミサイル駆逐艦ポーター

U.S. Navy

2017年4月7日、地中海から攻撃を行うミサイル駆逐艦ポーター

Carlos Barria / Reuters

2017年4月7日、地中海から攻撃を行うミサイル駆逐艦ポーター

U.S. Navy

フロリダ州ウェストパームビーチのマー・ア・ラゴの別荘で、シリアへのミサイル攻撃についての声明を発表するアメリカのドナルド・トランプ大統領。

U.S. Navy

2017年4月7日、地中海からトマホーク対地ミサイルでの攻撃を行う、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦ロス

U.S. Navy

2017年4月7日、地中海から攻撃を行うミサイル駆逐艦ポーター

U.S. Navy

2017年4月7日、地中海から攻撃を行うミサイル駆逐艦ポーター(DDG 78)

Carlos Barria / Reuters

フロリダ州ウェストパームビーチのマー・ア・ラゴの別荘で、シリアへのミサイル攻撃についての声明を発表した後、会見場を去るアメリカのドナルド・トランプ大統領。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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シリアの化学兵器攻撃、サリンか

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トランプ大統領、化学兵器による空爆で「シリアに対する態度を変えた」