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トルコとアメリカとの亀裂は、トランプ政権で転換するのか

2017年04月15日 15時50分 JST | 更新 2017年04月15日 15時50分 JST
Umit Bektas / Reuters
Turkish President Tayyip Erdogan addresses his supporters during a rally for the upcoming referendum in Konya, Turkey, April 14, 2017. REUTERS/Umit Bektas TPX IMAGES OF THE DAY

トルコのビナリ・ユルドゥルム首相は、トルコとアメリカの間に生じた亀裂がドナルド・トランプ政権下では修復できると、慎重ながらも楽観的にみている。

バラク・オバマ前政権とはシリア政策に加え、2016年7月15日に発生したクーデター未遂事件の首謀者とトルコが非難しているフェトフッラー・ギュレン師の引き渡しをめぐり対立している。ギュレン師は、穏健派のイスラム主義勢力「ギュレン運動」の指導者で、現在、アメリカの亡命している。ユルドゥルム首相は3月9日、中東で最も重要なイスラム同盟国トルコとアメリカの間の関係が損なわれていると語った。

トランプ氏はアメリカ大統領選の期間中、イスラム教徒を攻撃するコメントを繰り返していた。トルコの首脳も他のイスラム教国と同様にトランプ氏を糾弾していたが、11月8日のトランプ氏勝利後は、公の批判を控えるようになった。トランプ氏は大統領就任後、ギュレン師の引き渡しやシリア問題について、明確な立場をまだ表明していない。しかし、もしトランプ氏がトルコの要求に応えなかった場合、NATO内の重要な同盟国であり、過激派組織IS(「イスラム国」)掃討の米軍拠点となるトルコは、これ以上黙っていないかもしれない。

トルコの政府高官は、トランプ氏が前任者の政策を転換し、自分たちの好ましい方向になることを期待している。

「我々は、アメリカの政権に明るい希望を持っている」と、ユルドゥルム首相は通訳を介して語った。「これまでの数年以上に、前向きな発言をしてくれると信じている」

ユルドゥルム首相(中央)は3月9日、外国人記者に対し、トランプ政権下で両国関係の改善を楽観視していると語った。

オバマ政権の最後の数年間は、アメリカとトルコの間でシリアにいるISに対する方針が一致せず、協力関係に亀裂が入っていた。アメリカは、クルド人勢力「人民防衛隊」(YPG)というによる政治運動の軍事勢力をシリアにおける貴重な現地の軍事パートナーとみなし、この集団がISと戦うのを軍事面で支援した。トルコでは、YPGをクルディスタン労働党(PKK)というトルコ・アメリカ両国がテロ組織に指定している集団の一部とみなしており、アメリカの対応は容認できない立場だ。

しかしアメリカ国防総省は、シリアで最も重要なISの拠点ラッカを奪還する軍事行動に際しては、こういった武装勢力を取り込む方向にあるようだ。

「YPGと組むという間違った判断を、トランプ政権は繰り返すべきではない」と、ユルドゥルム首相は語った。「アメリカは、テロ組織と戦うのに別のテロ組織の力を借りるべきではない。アメリカが引かないなら、両国の関係は相当なダメージを受けることになる」

すでに二国間の関係が悪化していたところへ、2016年7月15日、トルコでクーデター未遂事件が起きた。トルコはこの事件を、自ら亡命し、アメリカ・ペンシルベニア州に住むフェトフッラー・ギュレン師に忠誠を誓う集団が引き起こしたと非難している。アメリカは、ギュレン師がクーデター首謀者の役割を果たした証拠がないとして、師をトルコに引き渡すという要求を聞き入れなかった。

ギュレン師の引き渡し要求に対するオバマ政権の反応は「私たちをバカにしているようだった」と、ユルドゥルム首相は語った。

トルコはこのような仕打ちを受けていたことから、同盟国から見放されたという感情を持つようになった。トルコ政府はアメリカ政府に対し、ISのほかPKK、ギュレン師の信奉者が政権内に侵食する三重苦に苦しむトルコを軽視していると非難している。アメリカはアメリカで、ISとの戦いにクルド人部隊の存在感が増していることを否定しようとするトルコにフラストレーションを感じるようになっている。クーデター未遂に関連して何万人もの人を拘束し、10万人を公職から追放したトルコ政府の弾圧を、非民主的な粛清とみている。

しかしユルドゥルム首相がトランプ政権に対して中立的であっても、シリアのクルド人勢力やギュレン師の引き渡し要求に対する態度を、アメリカの現政権が劇的に変化させるかは不透明だ。

大統領選前後での人事異動が最小限にとどまるアメリカ国防省は、シリアのクルド人勢力との協力に関してトルコ政府の要求に左右されることはないとみられる。

「アラブ系シリア人連合と連携しているYPGは、ISから多くの都市を解放したシリア民主軍(SDF)の一部だ。SDFが有能な戦力であることが証明されたから、ISとの戦いで引き続き戦略的に支援していく」と、対IS軍事作戦の報道官のジョン・ドリアン空軍大佐は強調した。トルコはYPGをPKKの一派だとみているのに対し、アメリカの立場は異なる。「アメリカはYPGを外国のテロ組織と認定していない」と、ドリアン大佐は語った。

アメリカが支援するシリア防衛軍は昨年、マンビジというシリア北部の町をISISから奪還した。アメリカは現在、YPG戦闘員を含むSDFを活用しつつ、ISのシリア最強拠点ラッカの奪還作戦を立てているところだ。DELIL SOULEIMAN/GETTY IMAGES

ギュレン師をトルコに引き渡す意思について、新政権は具体的なメッセージを一切伝えていない。トルコ政府が楽観的な見方をしている根拠は、トランプ政権の前国家安全保障担当補佐官で、在米ロシア大使と接触した疑惑で辞任を余儀なくされたマイケル・フリン中将が新聞に寄稿した寄稿記事のようだ。

大統領選投票日にあたる2016年11月8日、フリン氏は寄稿記事で、ギュレン師は「怪しげなイスラム学者」であり、アメリカはギュレン師の安全を確保する必要はないと主張した。その2日後、トルコ政府寄りの「デイリー・サバー」紙が、トランプがトルコとの関係改善に向けて、「フェトフッラー派テロ組織(FETO。トルコ政府のギュレン師支持派の呼び名)に圧力をかけ、ギュレンを引き渡す」との見出しで報じた。

しかし、そのフリン氏はもうホワイトハウスにいない。そして、トルコ政府に対するフリン氏のシンパシーも、彼の政治信条に基づくものでもなさそうだ。寄稿する4カ月前、7月のクーデター発生時にフリン師は、トルコがそれまでに「イスラム寄りに移行」していたと非難する一方で、エルドアン大統領追放を支持していた。後に、フリン氏の調査会社がトルコ政府に関連するオランダ企業の傘下となり、53万ドル(約6100万円)の報酬でギュレン師引き渡しに関する調査活動を請け負った。そこでフリン氏はクーデター未遂への姿勢を変化させたという。フリン氏は外国機関の代理人として司法省に登録した

トルコのベキル・ボズダー法相は3月9日、ギュレン師の対応でトランプ政権からまだ何も確証を受けていないと語った。ジェフ・セッションズ氏の司法長官就任後、ボズダー氏は祝電とともに、ギュレン師の問題がトルコにとって重要だと伝える書簡を送った、と記者団に語った。21日に行われたセッションズ氏との電話会談でも改めて要求を伝えたという。

アメリカ司法省は、ギュレン師引き渡しに対するトランプ政権の立場が前政権と異なっているかについて明言を避けた。「私たちは、トルコ政府が新たに提出する文書を精査し、事実関係と、関連する国内法規に基づいて引き渡しについての決定を下す」と、司法省のニコール・ナバス報道官は回答した。

クルド人部隊との連携と、ギュレン師の引き渡し――この重要な2つの問題にトランプ政権がどう対処するかが、エルドアン政権がトランプ氏の反イスラム的な発言や政策にどこまで寛容でいられるかに影響する。

いまのところ、イスラム教圏の6か国を標的としたトランプ政権の渡航制限令はアメリカ国内の問題、というのがトルコ政府の公式な立場だ。しかしトルコは以前、同盟国のイスラム嫌悪には容赦なく批判を加えている。トルコの政治家からの発言をみると、トランプ大統領の政策にフラストレーションが溜まっているのがわかる。

「アメリカが引き続きオープンなのかどうか、内向きになるのかどうか、アメリカに可能性や多様性がこれからもあるのか、その多様性が豊かさをもらたすのか脅威となるのか、いずれもアメリカの現政権が決める問題だ」と、トルコのメフメト・シムシェッキ副首相は語った。「しかし、個人的な見解で言えば、アメリカは自らの行いで災いを招いている」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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