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渋谷に集まる若者のリアルを切り取る。映像作家、石田悠介が表現する独特の「距離感」とは?

いろんな夜に起こったできごとを聞いて、リアルなエピソードを集めて組み合わせるところから作り始めました。

ビルの階段を降りてバーに入る若者たち。クラブで踊っている人がいれば、グラスを片手にライブに聴き入る人もいる......。そんな夜の渋谷によくある光景は、時代とともにすぐに様変わりする。少し時間が経つだけで、今の若者にとっては過去の姿になってしまうのだ。

映像作家の石田悠介氏は、そんな渋谷の今、若者のリアルを如実に映し出す映像を創り出している。同じ空間の中で、同じ目線で彼らと話をする距離感にいる石田氏は、渋谷の若者をどのように見つめ、どんなことを映像で表現しているのだろうか。石田氏に伺った。

石田悠介 プロフィール>

映像作家。国内外のCM・ミュージッククリップ・ファッションムービーなど様々な映像をディレクションしながら、2015年には短編映画「Holy Disaster」を監督。国境やジャンルを越えて、独自の視点で映像を捉え、新たな解釈で映像制作を行っている。2016年12月にリリースされた若手注目バンド、D.A.N.『SSWB』のミュージックビデオでは、渋谷で夜を過ごす若者のリアルを独特の世界観で描いている。

■今時の若者たちの日常を切り取る

——2016年12月にリリースされたD.A.Nのミュージックビデオ『SSWB』では、「若者」のリアルな姿が描かれていますが、どんなコンセプトだったのでしょうか。

今回は、曲のテーマの一つに「人間関係の距離感」というものがあると聞いて、渋谷の若者でその「距離感」を表現するのがいいなって思ったんです。今を生きる若者の姿や独特の距離感を、ありのまま映し出せるような映像にしたいなと。そういうのって意外と少なくて、あってもちょっと現実とずれてて嘘っぽかったりするんです。映像制作の仕事において、日本だとデビューが遅くなってしまうので、ディレクターになる頃にはみんな若者から遠ざかってしまっている。そうするとリアルな若者の姿とはどうしてもギャップができてしまうんですよね。

だから、このビデオではミュージシャンのライブによく来てる子や、渋谷の店でよく会う子達をキャスティングしました。彼らのいろんな夜に起こったできごとを聞いて、リアルなエピソードを集めて組み合わせるところから作り始めました。

——ふだんから渋谷にいる若い人たちと交流のある石田さんにとって、彼らの特徴、おもしろいと感じるのはどんなところですか?

自分たちと大きく違うなと思うのは、今の子ってひとつのグループの中にもいろんな子がいるんです。一昔前だったら、スケーターはスケーター同士、バンドマンはバンド界隈の仲間とよく遊んでたと思うんですけど、今の子たちは好きな年代もジャンルもミックスなんですよね。自分はこれが好きで、みんな好きなものがそれぞれ違うってこともちゃんと尊重してるし、それによって友達を選ばない感じがします。もしかしたら、ある意味他人に対して無関心と言えるのかもしれないですけど。そういう彼ら独特の「距離感」というのがおもしろいなと思います。

僕はほぼ渋谷しか知らないので、もしかしたら「渋谷の若者」に限定した話かもしれません。東京って職業によって住む地域や行く店が決まってるなって思うんですよね。どうしても職業割になりがちなので、似たような領域とか仕事をしている人と会う機会が自然と多くなってしまう。自分としてはなるべく偏らないようにはしたいなと思ってます。

——異業種の方と会う機会はふだんから多いのでしょうか?

映像をやってる友人は意外と少ないですね。どちらかというと音楽をやってる人が多いです。他だと、コンサルをやってるバリバリのサラリーマンとかもいます。それくらい異色な業界の話の方が、知らないことが多くて新鮮だしおもしろい。会う度にいい刺激をもらってます。

■「音と映像の関係にこだわる」石田悠介氏から生まれるもの

——映像を作る中では、どんなことにこだわられていますか?

音楽系の友人が多い影響もあってか、作る映像においても「音と映像の関係」にものすごく気を使ってます。ミュージックビデオだと音楽ありきになってしまいますけど、それ以外の時は基本的にいつもオリジナルで音楽を作ってもらってます。音と映像の関係次第で、観ている人と映像との距離感が変わる。それでシーンに対する見方も変わってしまうと思っているので、そこは入念にやるようにしています。

個人的には、夜のシーンがけっこう好きです。夜の方が、何かが起こりそうな気配があると思っていて。その良さを失くさないためにも、夜の撮影では、暗い部分をあえて残すとか奥を見えなくするとか、そういう余白から生まれるような感覚を大事にして作っています。次回作では、余白の中を漂う人物を描いた寓話的な映像を作ろうとしています。

——映像のコンセプトやストーリーは、どんな風に生まれるのでしょうか?

僕の場合は車を運転してる時が多いです。さっきのビデオもそうですね。昨年、半年間かけて車でヨーロッパを旅していたんですけど、見たことのない景色の中を運転している時に色々思い浮かんできて。気が付いたら2時間も運転してたなんてこともありました。あとはライブとか映画を観ている時。目の前に強い刺激のものがある時に、自分は目の前の光景を見てるはずなのに頭が全然違うことを考え始めて、色々な想像が膨らんできたりします。

誰かが話してるのを見てる時に、話の背景を勝手に想像したり、個人的な裏事情をストーリーに仕立てたりもしますね。たとえば友人がいつもと違うドリンクを頼んだりするだけでも、「なんでなんだろう」と考え出すきっかけになったりします。

——逆に、アイデアや作業が息詰まってしまうのはどんな時ですか?

編集の作業が一番大変だなと思います。短編映画の時とかだと3ヶ月くらい編集してました。でも、気分転換とかはあえてせず、どっぷりはまってやるタイプかもしれません。唯一のリフレッシュといえば食事の時くらいですね。あとはコーヒーをよく飲むんですけど、飲みすぎると胃が重くなってしまうし、甘いものも好きじゃないので、炭酸水を飲むことが多いです。ずっと座ってパソコンに向かってるんで何か口に刺激が欲しくなるんですよね。本当はお酒を割る用に炭酸水をストックしてるんですけど、それをボトルごとゴクゴクと飲む。編集の追い詰められた後半とかによく飲んでます。(笑)

■20年後の若者が見ても「これおもしろいよね」と言われるものを創りたい

——これからは、どんな映像を作りたいと考えてらっしゃいますか。

時代が移り変わっても残るもの、強いものを作りたいと思っています。たとえば、20年後の10代や20代の子が見ても、「なんかこれおもしろいよね」と言ってもらえるような。そのためには、映像の綺麗さだけでインパクトがあるような表面的なビジュアルではなく、パワーがあって見た人に何かが残るような、全体の物語や世界観を大事にしたいと思ってます。正直、以前はビジュアルに注意がいきがちだったんですけど、昨年のヨーロッパ旅行を経て、考えが大きく変わったかもしれません。

これからも、ジャンルや形態にとらわれず、自分が惹かれるもの、周りから受ける刺激や感じたことを、どんどん映像で表現していきたいと思っています。その中で、どんなに年月を経ても色褪せないストーリーを描くことで、観た人の中に残る映像を追求していきたいです。

(撮影:西田香織)

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ウィルキンソンは充実したライフスタイルを演出する炭酸水ブランドです。

「炭酸水はそのまま飲むものとは思ってませんでしたが、海外旅行に行って食事していた時に飲み始めたのがきっかけで飲むようになりました。今ではキンキンに冷やした炭酸水を飲んで、よくリフレッシュしています」(石田悠介氏)

(提供:ウィルキンソン)

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