トランプ大統領就任式、献金者の記録に多くの誤り見つかる 就任式委員会「技術的ミス」

ハフポストUS版がクラウドソーシングデータ・プロジェクトを利用して特定した。
U.S. President Donald Trump and first lady Melania Trump attend the Freedom Ball in honor of his inauguration in Washington, U.S. January 20, 2017. REUTERS/Jonathan Ernst
U.S. President Donald Trump and first lady Melania Trump attend the Freedom Ball in honor of his inauguration in Washington, U.S. January 20, 2017. REUTERS/Jonathan Ernst
Jonathan Ernst / Reuters

アメリカのドナルド・トランプ大統領の大統領就任式委員会は4月24日、同委員会が連邦選挙委員会(FEC)に提出した最終報告書に誤りが多数あることを認めた。報告書に記載されたミスの多くは、ハフポストUS版がクラウドソーシングデータ・プロジェクトを利用して最初に特定したものだった。

大統領就任式委員会のアレックス・ストローマン広報担当は24日夕方、「我々は報告書を修正して、判明したミスは全て訂正する予定です。最近になって判明した献金者記録や技術的なミスの多くが含まれます。FECに対し報告するときの慣習に沿って訂正します」と述べた。

大統領就任式委員会は、トランプ大統領が1月20日に開いた複数の祝賀会に向けて、1億ドル(約110億円)以上の資金を集めた。祝賀会には2つの就任舞踏会が含まれ、総数およそ3万人のゲストが集まった。集まった献金額は新記録を樹立した。しかしNPO「キャンペーン・リーガル・センター」のブレンダン・フィッシャー顧問弁護士によると「明らかに法が求める情報を真面目に収集しようとした形跡が見られない」という。

FECに提出した500ページを超える申告書に含まれるミスのほとんどは、共和党が今年導入した資金集めとチケット発券用システムで調べることが可能だ。このシステムがトランプ大統領支持者に対して専用のオンラインアクセスコードを発行していた。

1月初旬にメールで発行されたアクセスコードを使うと、受取人は1枚50ドルで、トランプ大統領主催の2つの就任舞踏会の大規模な方に参加するチケットを購入する権利を行使できた。数日内に、アクセスコードを売買する流通市場が立ち上がり、友人にコードを譲るよう頼む人や、オークションサイトのイーベイ(eBay)でチケットを購入する人も出た。

同じアクセスコードは存在せず、コード毎に特定の枚数のチケットが買えるように出来ていた。遊園地の乗り物と同じ仕組みだ。コードによっては2枚しか入場券を買えなかったり、100枚購入可能な場合もあった。しかしコードはそれぞれ特定の住所と紐づけしてあった。要するに他人に譲渡すると、譲渡された人物の名前も元々コードを受け取った人の住所と並んで、報告書に記載される仕組みだった。

トランプ大統領支持者の女性が24日、ハフポストUS版の取材に応じ、4つの別々なアクセスコードをどう使ったか説明してくれた。それぞれ違う友人のコードで、400ドル分の舞踏会入場券を購入した。

「トランプ候補に献金した人たちには、手書きの丁寧な就任式への招待状が届いて、添え状には『こちらがアクセスコードになります』と書かれてあり、暗証番号を入力するようになっていました」と、この女性は語った。

「私たちは就任式や舞踏会に出席するのにアクセスコードが必要でした。アクセスコードを使いましたが、寄付ではありませんでした。チケットの代金でした」と女性は語った。この人物は職務上政治献金ができないため、匿名を条件に取材に応じた。

「チケットを購入したとき、就任式参加用Webサイトでは実住所の情報を入力するよう求められませんでした。チケット代金はクレジットカードで支払ったんですが」と続けた。「チケットを渡す相手の名前とメールアドレスも入力しました。舞踏会のチケットを送ってもらうためです」

入手可能な記録を調べた限りでは、そういった人たちの名前は一切トランプ大統領就任式献金者としてFECに報告がない。それどころか第58回大統領就任式委員会が提出した最終報告書の中では、元々入金した人物が50ドルの金額を8回にわたって献金し、4つの別々なメールアドレスを使用したとの記載がある。

そういったミスが大統領就任式委員会の公式書類に載っているということは、委員会が記録を正確に残すという基本的なチェックすら怠ったということになる。これはFECのガイドラインでは必要条件となっていることだ。

「選挙運動とは異なり、就任式委員会にはさほど詳細な報告が義務付けられていないことを考えても、FECが要求する基本的な報告要件すら満たしていないと思います」と、フィッシャー弁護士は語った。「新しいルールではなく、今回の件は怠慢が原因のようですね」

ドナルド・トランプ大統領とファーストレディーのメラニア・トランプ夫人が2017年1月20日ワシントンの国立建築博物館で開催された軍関係者限定の舞踏会で姿を見せる。SAUL LOEB VIA GETTY IMAGES

一見住所記載の単純ミスかと思う間違いを最初に特定したのは、元々はハフポストUS版が立ち上げたCitizen Sleuth Project(市民探偵プロジェクト)で事実確認をしていたボランティアたちだ。トランプ大統領就任式の寄付者の集計表を公開で共有可能な形にしてある。こちらからアクセス可能。「市民探偵プロジェクト」では、トランプ大統領の就任式献金者記録について、クラウドソースを使って事実確認を実施した。1000人以上のボランティアの力を借りて、トランプ大統領の就任式委員会に集まった1500件以上の献金に関する詳細な情報が明らかになった。

フィッシャー弁護士によると、「市民探偵」のボランティアが明らかにしたミスにより、トランプ大統領の就任式委員会が法に定められた、適切な基本的注意事項を守ったかどうか疑念が生じるという。個々の献金とアクセスコードの送付先を結びつけることで(順に回すのは簡単で、実際に献金した人の住所ではない)、トランプ大統領就任式委員会は献金者記録のパラレルワールドを実質上でっち上げたことになると、フィッシャー弁護士は指摘した。

フィッシャー弁護士はさらに、チケットを購入した人に対し就任式委員会が、チケット購入は政治献金として当局に通知が届くことをもっと分かりやすく伝えるべきだったと述べた。

「委員会はチケット購入者に支払総額が200ドルを超えると、名前がFECに報告されると伝えるべきでした」と、フィッシャー弁護士は語った。

ストローマン氏によると就任式委員会は、チケットを購入してもFECに報告がいく政治献金には当たらない、と思わせるような仕掛けはしていないという。献金用のWebページには必要な情報がすべて掲載されていると指摘し、読み損ねた人の自己責任であり、トランプ大統領の就任式委員会の落ち度ではないと述べた。

しかし友人の代わりにチケットを購入して献金者に名を連ねることになった人物は、FECへの報告書を修正したからといって、騙されたという気持ちは変わらないだろうと語った。

彼女はチケットは政治献金ではなく、パーティー券購入だと思っていた。これは本人には大きな違いだ。なぜなら職業上献金が制限されているからだ。彼女はトランプ大統領の就任式委員会が出した報道発表の内容を指摘し、舞踏会のチケットが「近年最もお手頃価格」と銘打ち、「チケット購入を問い合わせれば」誰にでも手に入ると謳っていることを挙げた。ストローマン氏は、誤解を招いた形になり遺憾だと述べた。

「こちら側には、献金した人たちと情報ベンダーから寄せられる情報しかありません。ですからどんな報告であれミスを教えてもらえるというのはありがたいことです。そうすることで記録を修正でき、最終的には起きたことを正確に、後世のために残すことができるのですから」と、ストローマン氏は述べた。

就任式委員会は現在多数の献金者記録を調査しているが、委員会が独自の財務書類を見直したところ、他にも疑わしい公開情報記録の真相が明るみになっている。

それにはキャサリン・ジョンソンの名義で振り込まれたとみられる2万5000ドルの献金が含まれる。キャサリン・ジョンソン氏は元NASAに勤務していた数学者で、伝記映画『ヒドゥン・フィギュアズ』の登場人物の1人にもなった。リストにはNASA本部の住所が含まれていたが、ジョンソン氏は何十年も前に引退している。献金の件がアメリカのネットメディア「ジ・インターセプト」で最初に報道された後、ジョンソン氏の家族は即座に、ジョンソン氏本人が献金をした事実はないと述べた。

トランプ大統領の就任式委員会の事務局は24日、不正確な報告となった理由を釈明しようと努めた。

「ジョンソン氏と、ジョンソン氏が国家に対し貢献した事実には最大限の敬意を抱いています」とストローマン氏は述べた。「残念ながら、ミスが起こり、委員会への献金者が本人のカリフォルニア州の実際の住所でなく、NASAが住所となる別人のものとすり替わっていました。今回の件で混乱とご迷惑をおかけしたことに対し、ジョンソン氏とその家族の皆様に謝罪いたします」

それ以降明らかになった謎の献金に「イザベル・T・ジョン」という名義のものがある。トランプ大統領の就任式委員会に40万ドル(約4400万円)の献金をしたが、身元の追跡は困難だった。FECでは200ドルを超える金額を寄付した人物は必ず名前と住所を控えるよう委員会に義務付けている。「イザベル・T・ジョン」の住所はニュージャージー州の空き地だった。

この件が委員会の目に留まった後、ストローマン氏は以下のように説明した。「コンプライアンス担当のスタッフが全記録を手作業で調べ、この献金者が誤ってイザベル・T・ジョンとなっていたことが判明しました。実際の献金者はイザベル・トネリさんでした」

実際は、イザベルとジョン・トネリ夫妻が献金者だったと付け加えた。献金はシティバンクから電信送金された。シティバンクはニュージャージー州イングルウッド、シルバン・アベニュー111という住所を使ったが、送金の手間を省くためだったという。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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