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なぜ沖縄では小学生が飲酒するのか? 「裸足で逃げる」著者・上間陽子さんに聞いた暴力と虐待の連鎖

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OKINAWA
沖縄・名護市の夜景(イメージ画像) | Sean Pavone via Getty Images
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沖縄県恩納村で2017年2月、小中学生3人が乗ったバイクが転倒する事故があった。そのうち、1人の中学生は死亡。無免許運転していた那覇市の小学6年男子は、飲酒もしていた。さらに、3月にも那覇市で中学生3年生女子が飲酒運転で現行犯逮捕。ネットでは「沖縄ではこれが当たり前なのか」「親は何をしている」と非難の声が上がった。

では、こうした子どもたちの親は、何をしているのか。なぜ、我が子を放置しているのか。そうした疑問に答える本がある。「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」(太田出版)だ。この本には、沖縄で生まれ育った10代から20代の女性が仮名で登場する。彼女たちの多くが10代で子どもを産み、キャバクラや風俗店で働いていた。そのほとんどが、シングルマザーだ。

著者である琉球大学教育学研究科教授の上間陽子さんは、2012年夏から彼女たちの話に耳を傾け、調査してきた。家族や恋人から暴力を受け、裸足で逃げ出した女性たちに救いの手はあるのか。小中学生が飲酒運転した事件の背景には何があるのか。前編に続いて聞いた。

■殴られて駆け込んでも、助けてくれない警察

本書に登場する女性の一人、鈴乃さんのケースでは、警察も助けてくれなかった。鈴乃さんの父親は仕事をせず、家にもほとんど帰ることがなかった。やがて母親と離婚、鈴乃さんはシングルマザーになった母親に、3人の兄弟と育てられる。母親は昼間はウエイトレス、夜はホステスのダブルワークで、家を空けることが多かった。

鈴乃さんは高校2年で妊娠。同級生の恋人は度々、鈴乃さんを殴っていた。強いストレスで、鈴乃さんは7カ月で子どもを早産。たった914グラムで生まれた子どもは退院できず、何度も危篤に陥った。それでも、恋人は鈴乃さんを殴り続けた。

鈴乃さんは命の危険を感じて、何回も警察に駆け込んでいる。しかし、「入籍していないカップルの暴行は保護の対象ではない」と、追い返されてしまう。帰ったら殺されるから、今夜だけ警察署の待合室に置かせてくれと頼んでも、聞き入れてくれなかった。

幸い子どもは退院できたが、また恋人とケンカ。鈴乃さんはそのまま抱っこひもで子どもを抱き、友人と3人で警察署に向かった。これまでは何もしてくれなかった警察署も、吸引器をつけた赤ちゃんを抱いた鈴乃さんを見て、やっとDVシェルターに入れてくれることになった。

「暴力が起こるかもしれないという予見自体が、暴力性を帯びているにも関わらず、助けてもらえない。おかしいですよね。警察署によっては動きが鈍く、県警本部にまで話を上げないと動いてくれないことがありました。私の講演に、以前、私の目の前で調査の女性にひどい対応をした市役所の人がきていたのですが、話を聞いたあとその人が泣いていて、『自分は風俗で働く女性の生活について思考停止してしまい、これまでひどいことをしてしまった』と話してくれました。間に合わないかもしれないけど、やらないといけない。ですから、暴力はなぜ起こるのか、暴力を受けた人がどうなるのか、あちこちで話すようにしています。予防は大事です。暴力は絶対に起こらない方がいい」

暴力から、裸足でやっと逃げ出した女性たちが、新たな居場所を得て生きていくことがどれだけ難しいか。上間さんの調査から浮き彫りになる。

■なぜ、沖縄で暴力の連鎖が起こるのか?

ここでまた、疑問が浮かぶ。彼女たちに対する暴力の背景には、沖縄が持つ歴史・文化的な問題があるのだろうか。それとも、別の原因があるのだろうか。

「共同体的なものが残っているところは、基本的にどこでも言葉を介さないコミュニケーションがあります。そして、そういうものが残存しているコミュニティは、社会的暴力性が内包されている。これは、沖縄だけの特質ではないと思っています。ただ、沖縄の場合は、米軍基地が身近にあります。この本に出てくる子たちの多くは、基地の近くで育っていて、特に男の子たちが日常的に軍隊との付き合いがあります。

例えば、男の子たちはタトゥーのスタジオに出入りをしていますが、そこで基地の海兵隊の子たちと接触します。彼らは16、17歳で、英語もつたなく、アメリカが母国の子ではない。そういう子たちが、急いで入れ墨をしたがる。軍隊内部ではいじめがあり、なめられないように何でも良いから早く入れてほしい、と来るわけです。そこで、身体的なものが優位になってしまうマッチョイズムの文化がクロスする。そもそも、育つ場所が暴力を内包している町でもあるんです」

さまざまな要因が絡み、暴力の連鎖が生まれる。その構造は複雑で、単純な解決策は見当たらない。しかし、少なくともそこから逃げてきた女性たちに対する支援は、急務だろう。これまで、沖縄県では性暴力にあった女性に対する援助は、「強姦救援センター・沖縄REICO」の地道な活動などがあるが、データとして実態がつかめていなかった。しかし、上間さんの調査により、徐々に明らかになりつつある。

「ただ、やらないよりはマシだなと思っているのは、女の子たちは助けられた経験がないと、次に何かが起こった時に助けを求めてくれない。どんどんあきらめていくという形にしかならない。だから、できるだけのことはやる。厳しい状況は変わらないけれど、『助けて』と言ってほしいから、種まきはしておかないといけない。それを止めれば、次の危機をキャッチできないと思っています」

■キャバクラのドレスをカバンに詰めて登校した鈴乃さん

たとえ、根本的な解決にならないとしても、支援を続けることの大切さを教えてくれるのが、鈴乃さんの事例だ。鈴乃さんがもう暴力を受けないよう、シェルターの職員は元恋人に対する接近禁止命令の手はずを整えてくれた。その後、実家に戻った鈴乃さんを助けてくれたのは、子どもの担当になった保健師だった。外出すれば再び元恋人に暴力をうけるのではないかと強い恐怖を感じながら暮らしている鈴乃さんを外に連れ出し、子どものリハビリに伴走してくれた。

当時17歳の鈴乃さんは、昼間は子どもの面倒をみて、夜はキャバクラで働く生活を始めた。高校を卒業できなかった後悔から、休学していた学校の定時制課程に入り直す。カバンにはキャバクラのドレスを詰めて登校した。そんな生活を送るうちに、鈴乃さんは看護師になりたいと思うようになる。出産した病院の看護師たちが、鈴乃さんがDVを受けているのに気づき、声をかけてくれたことに憧れていたという。

子どもが小学生になってから鈴乃さんは看護学校を受験するための勉強をスタート。3年後に見事、看護専門学校に合格した。キャバクラで稼ぎながら勉強を続け、現在は看護師として働いている。

「鈴乃さんが出産した病院は、たまたま若年出産のサポートに力を入れているところでした。助産師さんの知見があり、長期的に母子に関わるべきと考えてくれる病院です。鈴乃さん本人も頑張りましたが、行政がうまくつないだケースですね」

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沖縄の夜の街で働く少女たちを調査している上間陽子さん

■ネグレクトで育つ子どもたちの親はどう育ったか?

今年になってから、那覇市の小中学生による飲酒運転が相次いで発覚した。ネットでは、「非行少年少女」や彼らの親に厳しい批判が寄せられたが、私たちはそうしたことが起こってしまう背景を、まず考えなければいけない。

「那覇市は地域によってグラデーションがあるところです。地域によっては、お酒を子どものうちから飲むというケースがちらほらあります。沖縄県の教育関係者は啓蒙的で、『子どもにとって良いことはこれだ』と提示することを好みます。でも、それだけで変わるようにはあまり思えない。暮らしの中で、しょうがなく起こってしまっていることがあります。だからこそ、『子どもにお酒を飲ませてはだめ』とただ正論をいえばいいのではなくて、その親子の生活に即した次の一手を打つためにも、その暮らしを知ることは不可欠だと思っています。

問題を起こした子たちは少年鑑別所や少年院に行ったりしますが、一度ですごく変わって帰ってくるわけではない。彼らが暴力をふるったり、お酒を飲んだりしなくても、楽しく生きていくことができるようにするためには、もう少し子どもや親の状況、彼らの育ち方を聞いていかないといけません。私のやり方は、迂回しているかもしれませんが……」

子どもの問題は、親の育ち方とも密接に関係するのだ。ここにも、連鎖があると上間さんは指摘する。

「子どもが同世代の仲間と連れだって歩くことを『ほろほろする』というのですが、要するにネグレクトで育っているということ。沖縄県では児童虐待のうち、ネグレクトの数値がかなり高いです。ただ、親御さんもそうやって育っていて、風俗で働く女性たちに聞くと、『自分の子どももそうやって育つと思っていた』という人が多い。中学生になるともう大人という意識が強く、風俗で働く女性たちも『14歳になったらもう自己責任でしょ?』って言いますね」

繰り返される女性と子どもたちへの暴力や虐待。取り組まなければならない課題は山積している。

「自分の仕事は、重傷の人に絆創膏を貼っているような仕事だなと思うんです。足りない。全然、足りない。私一人が動いたところで間に合わない」

上間さんはこれまでに、男女あわせて16人の調査を行ってきた。現在も継続中だ。本書に登場する女性たちは一見、最悪の状態から脱したように見えるが、現在は「無風状態」でも、再び暴風に巻き込まれる危険はある。上間さんの仕事に終わりはない。上間さんに、「今後も彼女たちが望めば、コンタクトを取っていきますか?」と訊ねたところ、「必要があれば、望まなくても」と笑顔が返ってきた。