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文在寅・大統領誕生で気になる日韓関係 少女像脇には撤去阻止の若者【ルポ】

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ソウルの日本大使館前に設置された少女像と、像の撤去反対を訴える市民

隣国・韓国の新しい大統領に、革新系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏(64)が就任した。野党が政権を取るのは10年ぶり。朴槿恵・前大統領のスキャンダルやその後の大統領選で分裂した国内世論や、悪化している日韓関係はどうなるのか。5月9日の投開票日にソウルを歩いた。

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就任の宣誓をする韓国の文在寅大統領=韓国国会で5月10日

「正義にのっとった国、統合の国、原則と常識が通じる国らしい国をつくるため、共に歩んでくれた偉大な国民の偉大な勝利です。ともに競った候補たちにも感謝と慰労の意を伝えたい。新しい韓国のため彼らとも手をつなぎ、未来のためにともに前進します」。9日午後11時45分、当選したばかり文在寅氏はソウル中心部の光化門広場に設けられた特設会場のステージに姿を現し、そう勝利宣言をした

大勢の支持者で埋め尽くされた会場周辺は「文在寅!」とのコールが響き渡り、熱気はピークに達した。

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光化門広場に設けられた会場に現れた文存寅氏

光化門広場は2016年10月以降、朴大統領の辞任を求めた市民らが無数のろうそくを手に集会を開いた場所だ。その集会は、多いときには100万人を超えたとされる。投開票日の9日の日中は、韓国のテレビ各局がそれぞれ特設スタジオを設け、ここから選挙特番を伝えていた。

なかでも人気だったのは、ケーブルテレビJTBCのスタジオだった。収賄罪などで起訴された朴前大統領の不正の決定的な証拠を報じて政権崩壊の引き金を引いた同局の看板キャスター、孫石熙氏をひと目見ようと、降りしきる雨にもかかわらず人だかりができていた。

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孫キャスターを見ようと、JTBCの特設スタジオには人だかりができた

道端の花壇の端に立ってスタジオをのぞき込んでいた30代の女性会社員は、孫キャスターが来ていると知ってこの場に立ち寄った。JTBCはきちんと報道をしていて信頼しているという。選挙では文氏に投票したと明かしてくれたので、その理由を尋ねると「きちんと国民を引っ張ってくれると思ったからです」と説明した。

■「日韓合意」再交渉を求める文存寅・新大統領

ところで、釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置されたことへの対抗措置として長嶺安政・駐韓大使を一時帰国させるなど冷え込んだ日韓関係は、どこへ向かうのか。

文氏は選挙期間中、日本に対して批判的で、厳しい言動が目立った。2016年7月には、韓国が実効支配する島根・竹島に上陸もしている。また、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたう2015年の「日韓合意」について「間違っている」として見直して交渉をやり直すとも訴えてきた。日本側は合意の再交渉には応じない構えだ。

ソウルの日本大使館前の少女像は、市民団体が2011年12月に設置した。そのすぐ横では、学生たちを中心に、撤去されないように若者らがテントを張って24時間見張っている。

若者らによるとこの見張りは日韓合意成立から続けていて、投票日の9日にはボードに「499日目」と書かれていた。テントの中には4人の人たちがいた。20代の会社員女性は「日本はすでに謝罪してお金も支払ったという姿勢ですが、韓国はきちんとした謝罪を求めています。日韓合意は廃棄して、交渉しなおするのがいいと思っています」と話した。少女像撤去の恐れがなくなるまで、見張りを続けるという。ただ、当然ながら見張りは冬は寒く、夏は暑いと顔をしかめた。

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少女像脇のテントで待機する若者ら。ハフポストが話を聞いたのは右端の女性

文氏、そして日韓関係について、ハフポスト韓国版の金度勲編集長はどう見るのか。「日韓協議について韓国の反応は否定的なものが多いです。再び協議はしても、日本との外交関係に害を与えないようにしたいと思っています。ただしそれは曲芸的なことで、どう成し遂げるのか疑問視する声が少なくないです」と分析した。

ソウル随一の繁華街・明洞。この一角に設けられた投票所で投票を終えた有権者に聞いてみた。元公務員の夫と投票しに来た女性は文氏に投票したという。「周辺国との関係をよくしてくれると思って投票しました。賢く、誠実な人だと感じています。社会の様々なシステムを元通りに、いやもっともっとよくしてもらいたいです」と答えてくれた。

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スペイン紙「ABC」のパブロ・ディエズ特派員

投票所入り口で取材をしていたスペイン紙「ABC」のパブロ・ディエズ中国特派員(42)は「韓国では大統領のスキャンダルや大会社の腐敗が問題になりました。経済は下降し、特に中間層が苦しんでいます。給与が上がらず、不安定です。まるでスペインのようです。社会がどう変わるか感心があったので、韓国に取材に来ました」と説明した。日韓関係については「どこも隣国とは一筋縄でいかないものです。スペインとフランスの関係もそうですから」と笑顔で話していた。
(ソウル)


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「当確」を喜ぶ文在寅氏と支持者たち
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