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文在寅大統領、日韓合意は「再交渉」だが「韓日関係は改善したい」 朴栄濬教授に聞く

2017年05月16日 14時55分 JST | 更新 2017年05月17日 01時06分 JST
JUNG YEON-JE via Getty Images
South Korea's new President Moon Jae-In speaks during a press conference at the presidential Blue House in Seoul on May 10, 2017. Moon was sworn in just a day after a landslide election victory, and immediately declared his willingness to visit Pyongyang amid high tensions with the nuclear-armed North. / AFP PHOTO / POOL / JUNG YEON-JE (Photo credit should read JUNG YEON-JE/AFP/Getty Images)

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の誕生により、冷え込んだ日韓関係はどうなるのか。文氏は選挙期間中から慰安婦問題をめぐる日韓合意の再交渉を要求しており、日本側は「反日」姿勢が強まるのではないかと懸念している。ハフポスト日本版は、文大統領の就任直後、日韓関係に詳しい国防大学(韓国)の朴栄濬(パク・ヨンジュン)教授にソウルで聞いた。

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インタビューに答える朴栄濬教授=5月10日、ソウル

ーーまず、今回の大統領選の感想をお聞かせ下さい。

今回の選挙は朴槿恵(パク・クネ)前大統領が罷免されたことを受けて実施されました。個人的には文氏の選挙公約に不安感を感じた部分もありますが、国民とほとんど対話をせず、側近とも意見交換をしないまま政治運営をしていた朴前大統領への反発の声は強かったです。その国民の思いが、野党(左派「共に民主党」)の文氏に託されるという結果に繋がりました。

ーー文政権の誕生で日韓関係はどうなるとみていますか。

選挙戦では日韓関係はあまり議論になりませんでした。むしろ、対北朝鮮政策やアメリカの最新式迎撃ミサイル「THAAD」配備などが主な争点でした。私は慰安婦問題をめぐる韓日の合意(日韓合意)について、実は、両政府が努力をしていいものを作ったと思っていますし、多くの専門家がそう考えています。しかし、同意に対して国民からの反発は依然として強く、文氏は再交渉を求める方針です。

一方、文氏の外交ブレーンである延世大学の金基正(キム・キジョン)教授は、韓日関係は大事で、合意については再交渉しないといけないとしながらも、韓日関係を改善していきたいと述べています。文氏の公約では、歴史・慰安婦問題は継続的な立場を取りつつ、経済・安全保障面については日本と協力していくことを望んでいます。さらに韓中日での協力、あるいは東アジアの責任共同体の下でアメリカを含めて協力していきたいというのが政策です。

ーー日韓合意について、日本はどう対応するでしょうか。

安倍政権は再交渉に応じないでしょう。だから韓国側は、経済協力を進めたくてもすぐにはできないという懸念を私は持っています。ただ安倍首相にとっても、現在の中国、北朝鮮の情勢を受け、韓国は大切な外交相手です。文氏の本音としては、日本との関係は改善したいのです。私の期待として、文氏は正面から反発することはせずに、戦略的に応じてほしいと思っています。

確かに文氏としては国民に約束したことであり、現段階ではその通りに進めないといけません。しかし、まずどうして慰安婦同意ができたのか、そして朴槿恵政権が慰安婦の被害者のためにどんな政策を取っていたのか、確かめる必要はあります。朴前大統領は被害者にあまり会って話を聞いていませんでした。真相調査のための委員会を設けた方がいいです。安倍首相もこの動きを念頭に置いて、あまり強く反発しないでほしいです。

韓国は外交的に厳しい状況にあります。北朝鮮についてオバマ政権と異なる政策を取っているトランプ政権は不確実性が高く、中国とは「THAAD」配備を巡って関係が悪くなっています。むしろ今は、日本との方が首脳会談がやりやすいでしょう。

ーー文氏は北朝鮮に対して融和的な姿勢を示しています。

北朝鮮政策は、これまでの朴槿恵、李明博の政権と異なり、最終的には非核化、そして南北平和協定を目標に、南北関係改善、民間交流の再開、開城工業団地の再稼働、金剛山観光の再開などを打ち出しています。文氏は南北首脳会談をやりたいとも言っています。思想的には、金大中元大統領の「太陽政策」を受け継いでいますが、金大中氏にしても、最初はアメリカとの関係を重要し、ついで日本との関係も大切にしました。文氏も、北朝鮮との関係改善の準備段階でアメリカと接触し、日本との関係を改善した方がいいというのが私や専門家らの提言です。

文氏は2011年に書いた著書の中で、自身は外交安全に詳しくなく、詳しい人を置いて取り組みたいと書いています。だれがブレーンになって相談していくのか見極める必要があります。先ほど触れた金基正教授は外交ブレーンですし、趙炳ジェ(チョ・ビョンジェ)元マレーシア大使ら周辺には日本を大事に思う人たちが結構いるというのが私の印象です。

ーー文在寅大統領と気があう首脳はいますか。また文氏はどんな人ですか。

文氏は大人しくて、トランプ大統領とはあまり気が合わないと思いますね。性格では違うタイプ。トランプ氏はフィリピンのドゥテルテ大統領やロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長のようなわがままな感じの人とは気が合うかもしれません。安倍首相は外交が有能な人だと思っていますけれども、個人的な性格は違うタイプでしょうがトランプ氏よりは上手に付き合えるでしょう。

文氏は大人しくて、とても優しい人です。でも、自分が正義だと思うことは強く主張します。学習能力があり、新しいものに対しては自分で勉強して理解していく人です。

朴栄濬(パク・ヨンジュン) 1963年、江原道出身。国防大学(韓国)教授。東大大学院で「海軍の誕生と近代日本」を研究し政治学博士。専攻は日本政治外交史と東アジア国際関係。


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「当確」を喜ぶ文在寅氏と支持者たち

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