シリア内戦の歯止めにならなかった空爆。迷走するアメリカの軍事作戦

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SYRIA AIRSTRIKE
(Photo by Samir Tatin/Anadolu Agency/Getty Images) | Anadolu Agency via Getty Images
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シリア北西部イドリブ県のシャイフーンを標的とした4月4日の化学兵器攻撃に対する対抗措置として、アメリカはその2日後、シリアの空軍基地をミサイル攻撃した。

ロシア政府は同盟関係にあるバッシャール・アサド大統領への支援をさらに強化し、軍事支援を増強しているほか、シリア沖に軍艦1隻を配備している。 一方、アメリカのレックス・ティラーソン国務長官はロシアがアサド大統領を抑制できなかったために化学兵器による攻撃を招いたとして、ロシアを強く非難した。ティラーソン国務長官は4月12日、モスクワでセルゲイ・ラブロフ外相やウラジミール・プーチン大統領と会談したが、お互いの主張は平行線をたどった。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は5月10日、ホワイトハウスでラブロフ外相と会談し、シリア問題の早期終結と、ロシアがシリアのアサド政権に圧力をかけるよう求めた。

トランプ氏は「シリアに関しては、我々はうまくやれる」と強調したが、6年前から激しい内戦の続くシリア現地の状況は、ほとんど改善していない。ロシア軍とシリア軍のジェット機による空爆はアメリカのミサイル攻撃後も続いている。化学兵器攻撃で標的となった街も空爆を受けている。化学兵器による攻撃子供を含む88人が死亡し、トランプ氏が報復するきっかけとなった。4月10日、イギリスを拠点とするNGO「シリア人権監視団」と活動家らは、シリアのイドリブ県とハマー県もクラスター型焼夷弾による空爆を受けたと訴えた。

もちろん、アメリカの空爆はシリア内戦の調停や通常兵器の使用停止を意図して行われたものではない。ティラーソン国務長官は基本的に、アメリカが行った空爆は化学兵器攻撃に対する制裁であり、 さらなる化学兵器の使用を牽制するための措置だと述べた。ティラーソン国務長官は、今回の攻撃はアメリカがより本格的にシリア内戦に政治的、軍事的に本格介入するといったものではなく、化学兵器の使用という国際法に違反する行為を決して許容しないという警告だと説明した。

4月9日、ABCニュースのジョージ・ステファノプロスのインタビューに答えたティラーソン国務長官は「その点以外、我々の軍事的方針に変わりはない」とコメントした。


2017年4月10日、敵対勢力がダルアー中心部へ侵攻するなか、メンシエ近郊ではシリア軍の空爆によって爆煙が立ち上っている。 ANADOLU AGENCY VIA GETTY IMAGES

アメリカの空爆がアサド大統領の化学兵器使用を阻むという目的通りに機能するのか、もし再び化学兵器による攻撃が起きた場合、アメリカ政府がどう対応するのかはまだ分からない。アサド大統領が、アメリカの攻撃を許容可能なコストだと見なす可能性もある。シリア政府の発表どおり、ミサイル攻撃の被害がごく小規模なものだったとしたらなおさらだ。 ホムス県知事はミサイル攻撃を受けた直後、爆撃を受けた軍事基地は復旧し、運用を再開したと語った

アメリカ側は、シリア軍はミサイル攻撃によって大きな打撃を受けたと主張している。ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官と国防総省(ペンタゴン)は共に、飛行場は復旧済みだとするシリア側の発表を否定した。

ジェイムズ・マティス国防長官は声明の中で「シリア政府はシャイラート空軍基地の航空機の燃料補給や再軍備遂行能力を喪失しており、現時点での滑走路の使用にさしたる重要性はない」と述べた。

マティス国防長官は、ミサイル攻撃でシリア軍の保有する航空機のうち20%を破壊したと発表した。これが事実なら、シリア軍にかなりのダメージを与えたことになる。アメリカ中央軍はマティス長官の発表に先駆けて、攻撃目標は基地にある戦闘機と備蓄燃料であり、飛行場の破壊は作戦目標ではないとツイートした


国防総省が発表したシャイラート基地の爆撃被害評価画像。HANDOUT . / REUTERS

ミサイル攻撃の成否にかかわらず、トランプ政権はシリアに対してどのような政治姿勢を取ろうとしているのか、またミサイル攻撃はより大きな対外戦略の一部なのかどうかという疑問が残る。ティラーソン国務長官は、攻撃はシリア軍へのものだとしている一方、 スパイサー報道官とニッキー・ヘイリー国連大使の両名が発表した声明では、シリアの政権交代を求めている。

アメリカが定めているシリア問題の長期的達成目標は、政府高官の発言が食い違い、さらに不透明さを増している。ティラーソン国務長官とヘイリー国連大使は、アサド大統領の辞任は最優先事項ではないと強調する声明を発表したが、アメリカ政府はそこからまたも急激な方針転換を行った。

アメリカは数年にわたり、シリアへの介入に慎重な姿勢をとってきた。トランプ大統領のもとでこの姿勢が変化したのかどうかは不明だ。シリアにおけるアメリカの最優先事項はISであり、そこにはISから北部の都市ラッカを奪還する軍事作戦も含まれている。

シリアの和平交渉は何年も行き詰まったままだ。2016年12月から停戦合意が発効しているが、戦闘や空爆が継続している。

アメリカがさらなる軍事介入に乗り出すのか世界中が見守っているが、アメリカ政府はシリアの人道危機改善により大きな役割を果たすことにそれほど関心を持っていないようだ。トランプ政権は紛争により国を離れることを余儀なくされた一般市民を支援する対策を一切講じていない。それどころか、支援とは反対に、対外援助予算を削減し、シリア難民を排除している。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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シリアで化学兵器の攻撃【閲覧注意】
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