40代独身者が「幸せになれない」根本原因

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結婚しない人は、かわいそうな人なのでしょうか(写真はイメージ) | praetorianphoto via Getty Images
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結婚しない人は「不幸」な人なのか?


「結婚もせず、独身で生きるなんて、そんな生き方は幸福であるはずがない」

そんな言説をいまだに耳にします。それが真実だとするなら、結婚しない男女「ソロモン」はみんな幸福ではないということでしょうか?

2017-03-21-1490084511-1369241-tklogo1000320.jpg本記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら

そもそも、実は日本人の幸福度自体が高くありません。アメリカのシンクタンク、ピュー・リサーチセンターが2014年に世界43カ国を対象とした調査によると、日本の幸福度は43点です。ちなみに、アメリカは65点、ドイツは60点であり、先進国の中では最下位のグループに位置しています。アジアの中でも中国やインドネシア、韓国よりも下です。全体的に、GDPの高さと幸福度とは正の相関にありますが、唯一日本だけがGDPが高いのに幸せを感じられない特殊な国となっています。今年3月に発表された国連の「世界幸福度報告書2017」でも、日本は155カ国中51位と決して高くはありませんでした。

日本人の幸福度が低い要因は、謙虚な国民性、メリットよりリスクを考える慎重さ、周囲との和を尊重する協調主義的な気質などいろいろと考えられますが、そもそも絶対的な幸福の尺度は存在しないため、その定義自体が難しい。これらの調査も、基本的にはアンケート形式による主観的判断です。小さいことに幸せを感じられる人もいれば、どんなにお金持ちでも、豪邸に住んでいようと不幸だと感じる人もいます。過去と比較して相対的に今が好転していれば、それはそれで幸福を感じるかもしれませんが、個人主観に依拠する相対的なものならばなおさら数値化は難しいでしょう。とはいえ、世界的に見て、日本人は幸福感を抱きにくい国民性であると言われていることは確かです。

同様に、よく言われるのが、家族を持たない未婚者は既婚者と比べて不幸度が高いということです。

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未婚と既婚、男女年代別に調べたところ、確かに既婚者のほうが男女ともに幸福度が明らかに高いものになりました。既婚者の場合は、年代が上がるごとに若干幸福度は下がる傾向はありますが、ほぼ全年代で8割以上が幸福であると答えています。

「幸福」と感じる40代未婚男性は36%


一方、未婚者の場合は、男女ともになぜか40代が最低となります。特に、40代未婚男性は幸福と感じる率がたったの36%しかないだけではなく、不幸と感じる率(28%)が最大値を記録しています。40代までずっと未婚だった男女は、結婚できないゆえに不幸感が最大化するということなんでしょうか。

未婚者の幸福度が低い要因として考えられるのは、日本人に特に根強い「結婚規範」にあると考えられます。結婚規範とは、「結婚は必ずすべきだ」「結婚はしたほうがよい」という考え方です。当然、結婚規範は既婚者のほうが高く、未婚や独身者は低くなります。しかし、日本人に関して言うと、未婚・独身者であっても強い結婚規範に支配されているという実態があります。内閣府が2015年に実施した「少子化社会に関する国際意識調査報告書」に、それを裏付ける興味深いデータがあります。

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日本、フランス、スウェーデン、イギリスの4カ国の20歳から49歳までの男女で比較しているものですが、日本の未婚者の結婚規範は、既婚者の71%とほぼ変わらない60%もあります。一方、フランスは18%、スウェーデンは21%、イギリスでも32%と、各国の未婚者の結婚規範は、既婚者の半分程度以下です。日本人は、未婚者であっても「結婚はするべきだ」という規範に、潜在的に強く影響を受けているのです。

強い結婚規範が、未婚者の「欠落感」を生む


こうした強い結婚規範は、ともすれば未婚者に対して「結婚できない自分は何かが足りないのだ」という「欠落感」を植え付けてしまうことになります。欠落感を感じると、人は不幸だと感じやすくなります。そう考えると、やはり「幸福」と「結婚」とは、深い関連性があるものだと考えるべきなんでしょうか。

もうひとつ調査データを示します。ソロ男女と既婚男女で、それぞれの「自己有能感」と「自己肯定感」について調べてみました。すると、対照的なおもしろい結果が出ています。「自己有能感」とは、学業や仕事などで他者より自分は優れているという自負であり、自己実現力ともいえます。「自己肯定感」とは、自分が好きか、自分を認めてあげられているかどうかという視点で、これは幸福感にも通じるものです。

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ソロ男女たちは、一様に「自己有能感」が高い人ほど、「自己肯定感」が高い傾向があります。つまり、「有能でなければ自己肯定できない」と考えがちで、「自己肯定できないのは自分の能力が足りないからだ」という欠落による不幸感を感じる人がやはり多いんです。

反対に、既婚男女は「自己有能感」が明らかに低く、男女ともマイナス表示(有能だと思う人が少ない)となっています。にもかかわらず、「自己肯定感」はソロ男女の3倍以上あります。「自分自身たいした能力はないかもしれないけれど、まあ自分のことは認めているし、好きだ」と既婚者は感じているということです。

これは、夫婦や家族の中において、役割を果たしているという安心感や相互理解、相互承認感によって、こうした自己肯定感を育んでいるのかもしれません。そう考えると、配偶者や家族を持たないソロ男・ソロ女は、逆立ちしてもそうした幸福感を得ることはできないことになってしまいます。

「フォーカシング・イリュージョン」という言葉をご存じでしょうか。これは、ノーベル経済学賞の受賞者であり、行動経済学の祖と言われる米国の心理学・行動経済学者ダニエル・カーネマンが提唱した言葉で、「いい学校に入れば幸せになれるはず」「いい会社に入れば幸せになれるはず」「結婚すれば幸せになれるはず」というように、ある特定の状態に自分が幸福になれるかどうかの分岐点があると信じ込んでしまう人間の偏向性を指します。簡単に言えば、「思い込みから生じる幻想」ということです。

「とにかく結婚したい」という人の思い込み


もちろん目標を定めて努力することは大切ですが、学歴や就職や結婚が自動的に幸せを運んできてくれるわけではありません。たとえば、結婚したいという女性がよく言うセリフに「相手はいないけど、とにかく結婚したい」というのがあります。これこそ結婚という状態に身を置けば、幸福が手に入るはずという間違った思い込みです。結婚すれば幸せになれるという考え方は、裏を返せば、「結婚できなければ幸せになれない」「結婚しないと不幸だ」という理屈と同じで、結婚という特定の状態に依存してしまって、それ以外の選択肢を排除しているようなものです。むしろその思考こそが不幸感を増幅させているのではないかと思います。

幸せの形はさまざまです。結婚して、子どもを産み育て、あたたかい家庭のだんらんに安らぎを感じるのもひとつの幸せの形でしょう。しかし、それだけが幸せになれる唯一の道筋ではありません。自分の愛する人、自分を愛してくれる人とともに時間を過ごすことも幸せの形ならば、恋人や家族でなくても、興味関心や価値観の合う人、または「考え方を同じくする人」との交流でも十分幸せは感じられます。さらには、人であるとも限りません。趣味であれ、仕事であれ、「好きなことに時間を忘れて没頭できること」もまた幸せの形でしょう。

前述したソロ男女の「自己有能感」と「自己肯定感」の相関で言えば、「自己有能感」が高いソロ男女は、ほぼすべてが「自己肯定感」も高いのです。つまり、何らかの自己実現を成し遂げて、自分自身に自信があるソロは自己肯定できているし、結婚という状態いかんにかかわらず幸福感を抱いているということなのです。それこそが、フォーカシング・イリュージョンに惑わされず、幸福を感じられているということでしょう。

幸福とは、結婚しているか子どもがいるかというどんな状態であるかが大事なのではなく、どんな状態であろうと幸福を希求する今この時の行動力があるかどうか、そして、どんな小さな喜びでも素直に受容し、幸福感を抱けるかどうかの心の持ち方ではないでしょうか。

大きなお世話かもしれないですが、逆に、既婚男女の幸福感が高すぎなのではとも思います。既婚男女ともほぼ全年代で、8割以上が幸福感を感じていることは決して悪いことではありません。が、無理やり幸福であると思い込もうとしているということはないでしょうか。それもまたフォーカシング・イリュージョンの罠(わな)です。さらに、万が一離死別でソロに戻った瞬間、一気に不幸感を超えて絶望を感じやしないかと危惧しますが、杞憂(きゆう)であることを願っています。

(荒川 和久:ソロ男プロジェクト・リーダー/独身研究家)

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