東芝の半導体売却、合弁相手が「待った」 結論まで3~4年かかる恐れも

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2017-03-21-1490084511-1369241-tklogo1000320.jpg本記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら

東芝の経営をめぐる混迷がさらに深まっている。

5月15日、東芝は2017年3月期決算について、当期利益が9500億円の赤字、株主資本が5400億円のマイナスに陥ったと発表した。

米国の原子力事業子会社ウエスチングハウスの破産法申請に伴う損失が膨らんだためだ。だが、4月11日時点で当期利益が1兆0100億円の赤字になる見通しと公表済み。損失額自体にサプライズはない。

埋まらない監査法人との溝


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5月15日、記者会見に臨む東芝の綱川智社長。暫定値の「業績見通し」では不安の払拭につながらなかった(撮影:尾形文繁)

東芝は苦しい立場にある。それは、今回の決算が監査法人の承認が得られない、暫定値の「業績見通し」であったことからもわかる。2016年4~12月期に続き、監査を担当するPwCあらたからお墨付きは得られなかった。

綱川智社長は「こうした事態になったことを改めて深くお詫び申し上げます」と謝罪し、「独立監査人と協調して早期に決算を終わらせることに全力を挙げる」と述べた。

もっとも東芝とPwCの溝は埋まっていない。PwCが問題視しているのは、2015年末にウエスチングハウスが実施した米国の原発建設サービス会社の買収に伴う損失の計上時期である。

東芝は2016年10~12月期に初めて損失を認識したと主張しているが、PwCはその説明に納得しない。「PwCはなぜ意見を出さないのか。理由すら聞かされていない」と東芝幹部は不満を募らせる。

正式な決算短信はいつ出せるのか。6月末には有価証券報告書も提出しなければならない。監査報告書自体がないと有価証券報告書の法定要件を満たせず、上場廃止基準に抵触してしまう。

有価証券報告書の作成ができなければ、過去に繰り返したように提出期限の延長申請という手法もある。もしくは「意見なし」の監査報告書で強行突破できないこともないが、上場維持の審査を行っている東証もさすがに甘い対応ができなくなる可能性がある。

ウエスタンデジタルが半導体売却に”待った”


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綱川社長は「合弁契約に抵触する事実はない」と語気を強めた(撮影:尾形文繁)

ここにきて、債務超過の解消のために東芝が進める半導体メモリ事業の売却の行方も見えなくなってきた。メモリ工場を共同運営する米ウエスタンデジタルとの対立が深刻化しているからだ。

東芝はメモリ事業を分社して作った東芝メモリに合弁会社の株式を移転し、東芝メモリごと売却する方向で入札を実施中。一方、ウエスタンデジタルは、ウエスタンデジタルの同意なしに合弁会社の株式を譲渡することは契約違反と主張してきた。

東芝はウエスタンデジタルの主張に法的根拠がないと反発。東芝メモリの売却を妨害することを止めるように警告文を送付したほか、四日市工場でウエスタンデジタル社員がデータにアクセスすることを制限する可能性にも言及した。

ウエスタンデジタルも黙っていなかった。5月15日、国際仲裁裁判所に東芝メモリの売却差し止めを申し立てたのだ。

綱川社長は「合弁契約に抵触する事実はなく、プロセスを止める根拠はない。東芝の主張の正当性を説明して(買い手の)懸念を払拭する」と強調した。

合弁契約には解釈の余地が残る上、契約の細かな取り決めまでは開示されていないため、部外者にはどちらの主張が正しいのかを判断できない。

ただ、一般的には合弁契約では100%子会社への株式譲渡に制限はかからない。第三者への譲渡になると、相手方の同意や先買権があることは珍しくないが、その場合でも他の買い手の正式提示に見劣りすれば、先買権は無効になるのが普通だ。

結論が出るまでに3~4年かかる


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半導体事業の業績は好調を維持している。写真は車載用半導体(非メモリ)(撮影:尾形文繁)

いずれにしろ、白黒付けるには国際司法に委ねるしかない。

工場を共同運営する両者がいがみ合っても、互いに傷を深めるだけ。工場設備の投資競争において競合の韓国サムスン電子などに遅れをとれば、致命傷になりかねない。その意味ではチキンレースでしかないのだが、不利なのは東芝だ。

近年、日本企業が絡む案件で国際仲裁裁判所マターになったのは、スズキと独フォルクスワーゲンの資本提携解消や三菱重工業と米国の電力会社による原発をめぐる損害賠償請求がある。いずれも日本企業の主張が通ったが、結論が出るまでにスズキで4年弱、三菱重工は3年半かかった。2018年3月末までに債務超過を解消したい東芝は難しい判断を迫られる。

ウエスタンデジタルの東芝メモリに対する入札額は、ほかの売却候補先と比べて「非常に低い」(複数の関係者)。それでは東芝は財務改善が図れないうえ、ウエスタンデジタルでは独占禁止法に抵触するリスクも高い。ウエスタンデジタル1社に東芝メモリを売却する選択肢はない。

である以上、綱川社長が認めるように買い手候補に東芝の主張の正当性(=裁判で勝てること)の理解を得る努力を続けることになる。並行してウエスタンデジタルをなだめる条件闘争も必要になる。

次々と持ち上がる難題をクリアできるだろうか。東芝の綱渡りは続いている。

東芝の会社概要は「四季報オンライン」で

(山田雄大:東洋経済記者)

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