アメリカ司法省、トランプ氏の大統領選へのロシア介入疑惑の捜査に特別検察官を任命

「十分な信用を得るためには、ミュラー氏を任命する必要があった」

アメリカ司法省のロッド・ローゼンスタイン副長官は5月17日、ロシアが2016年のアメリカ大統領選に干渉した疑惑の捜査を指揮する特別検察官に、ロバート・ミュラー元FBI長官を任命した。

ローゼンスタイン氏は声明で、「違法行為を発見するとか、起訴を正当化するためではない」とした上で、「この特殊な状況で、一般の関心を考えると、通常の指揮系統から独立した権限下に捜査を置く必要がある」と判断したと述べた。

ローゼンスタイン氏は5月17日に出された発表文で、ミュラー氏は特別検査官として「ドナルド・トランプ大統領の選挙戦に関わった人物とロシア政府との関係や連携」また「この捜査から生じた、あるいは生じ得る全ての事柄」を捜査すると述べた。

ロバート・ミュラー氏は12年間、FBI長官を務めた。JONATHAN ERNST / REUTERS

トランプ大統領は17日、「これまで何度も述べてきた通り、私たちがすでに知っていることは、徹底的な捜査によって確かめられるだろう。私の選挙運動と外国との結託は一切なかった」と述べた。トランプ氏は声明の中で「この問題が早急に決着することを楽しみにしている。一方で、私は国民、そして我が国の将来にとって最も重要な問題のための闘いを止めるつもりはない」

ミュラー氏は法的に、アメリカ連邦検事のすべての権限を持って捜査することになる。自身の捜査チームのメンバーを選び、司法省に予算を要求することもできるようになる。

ミュラー氏が望めば、現在ロシア関連の捜査に従事しているFBI捜査官を引き続き任務に当たらせることができる。彼がどこで指揮を執るかについては明らかではないが、司法省は、ミュラー氏が現在のウィルマーヘイル法律事務所の職を辞任すると説明した。

ローゼンスタイン氏は、アメリカ国民が捜査結果に対して「十分な信用」を得るためには、ミュラー氏を任命する必要があったと語った。

「我が国は法の支配に基づいており、一般市民が政府は法を公正に施行していると確信していなければならない」と、ローゼンスタイン氏は述べた。「ミュラー特別検察官は、徹底した完全な捜査を指揮するためのあらゆる適正な手段を持つ。また、真実を追求し、法を適用し、正しい結果にたどり着くだろうと確信しています」

ミュラー氏は、5月17日に声明で「私はこの責務を引き受け、最善を尽くして職務を果たす」と決意を語った。

党派を超えた議員が、司法省のこの判断を正しい方向への一歩だと称賛し、ミュラー氏の任命を歓迎した。

「特別検察官は現状、本当に必要とされていたものだ。ローゼンスタイン司法副長官は正しい判断をした」と、民主党のチャック・シューマー上院院内総務(民主党・ニューヨーク州)は評価した。

「ミュラー氏とは素晴らしい選択だ。非の打ちどころのない、立派な実績の持ち主。多くの人に受け入れられるはずだ」と、ジェイソン・チャフェッツ議員(共和党・ユタ州)はツイートした。

アメリカ上院司法委員会のチャック・グラスリー上院議員(共和党、アイオワ州)は、ローゼンスタイン氏に「絶大な信頼」を置いており、その決定を尊重すると述べた。「ミュラー氏は独立性を重んじることで高い評価を得ており、この任務に就くための正当な資格がある」と、グラスリー氏は声明を発表した。「最終的には、われわれは何が起きたかについて公式に説明し、政府への信用を回復する必要がある」

ポール・ライアン下院議長(共和党、ウィスコンシン州)とミッチ・マコーネル院内総務(共和党、ケンタッキー州)ら共和党首脳は「特別検察官の任命は必要ない」としていたが、17日、一転して司法省の決定を支持すると表明した。

「優先事項は、独立した徹底的な捜査が認められて、どのような結論になろうともその事実に従うことを保証することにある」と、ライアン氏は述べた。

2016年11月8日にトランプ氏がアメリカ大統領に勝利して以来、トランプ陣営がロシアと接触していた疑惑は常につきまとい、この1週間で新たな火種が生まれてしまった。

トランプ氏の大統領就任直前の1月、国家安全保障担当だったマイケル・フリン前大統領補佐官はセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と接触し、ロシアが民主党全国委員会をハッキングしていたことへの報復としてバラク・オバマ前大統領が課していた対ロシア経済制裁の解除に向けて協議したと伝えられている。フリン氏とホワイトハウス高官は、キスリャク大使との会話の中で、経済制裁解除については触れていない、と繰り返し否定した。

しかしフリン氏は2月にそれまでの主張を撤回し、キスリャク大使との会話の中で制裁について議論したかどうかは「定かではない」と発言し、大統領補佐官を辞任した。

コミー前FBI長官は3月20日、トランプ大統領の選挙キャンペーンのメンバーがロシアと共謀していたかどうかを調査していると発表した。フリン氏は同月、独自の調査を行っていた下院と上院の特別委員会の前で、免責と引き換えに証言する意思があると語った。

トランプ大統領は事あるごとにロシアとの接触を否定し、メディアが偽情報を広めていると非難している。トランプ大統領は5月9日、コミー氏を更迭した。トランプ氏は翌日、コミー更迭の決断は、ロシアとの接触疑惑の調査と関係があると認めた。

ワシントン・ポストは15日、トランプ大統領がセルゲイ・ラブロフ外相やキスリャク駐米大使との会談で過激派組織IS(イスラム国)の機密情報を漏洩したと報じた。これに対し、共和・民主両党からすぐに批判が起きた。

ニューヨーク・タイムズはその翌日、トランプ氏がコミー氏に対し、FBIの捜査を終わらせるよう要請していたと報じた。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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