"エロ対決"のセクハラ受けた女性、怒りの告白 「会社の和を乱す存在として雇い止めにされた」

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セクハラ被害について相談したら会社の不当な対応で休職に追い込まれた上に雇い止めになったとして、元契約社員Aさん(30代女性)が5月25日、会社からの雇い止めの無効と慰謝料など約1100万円を求めて東京地裁に提訴した。

Aさんは、システム開発会社「新日鉄住金ソリューションズ」に勤務していた際に40代男性の管理職X氏から執拗なセクハラと、会社から報復とも思える行為を受け、体調不良で休職に追い込まれ、さらには雇い止めとなったと主張している。

一体何が起きたのか。Aさんに現在の思いを聞いた。


■「エロ対決をいつかすること」などのメッセージ

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FacebookでのX氏がAさんとのやり取り。X氏が「エロ対決」を提案している

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FacebookでのX氏がAさんに「とんでもない行動」を示唆したメッセージ

Aさんは、2013年3月に新日鉄住金ソリューションズの派遣社員となり、14年6月からは契約社員になった。仕事上での接点がないX氏からの視線を感じるようになったのは、2013年8月のことだった。この年の忘年会後には、FacebookのメッセンジャーでX氏から、以下のようなメッセージが届くようになった。

「恋は始まってるね!←こういうのを言っちゃうのが中二病」(2013年12月29日)

「(Aさんに)帰りたくないのって言われたら抱きしめたいし、キスぐらいはしたいけどなー」(2013年12月30日)

「今度エロ勝負しましょう」(2013年12月30日)

ことを荒立てたくなかったAさんは「無理」などと茶化して明るく振る舞ったものの、X氏に恋愛感情はなく彼が既婚者だったことから「メッセンジャーは止めましょう」と切り出した。

しかし何度話しても理解してもらえないのでFacebookの友達登録を解消したいと申し出て、つながり解消に成功した。するとX氏は「周りからはクソビッチと呼ばれているし」「面倒くさい女」など、Aさんと思える人物への罵倒とも思われる内容の投稿を始めた。


■ドクターストップで休職 ⇒ 雇い止めを通告

X氏の書き込みには、Aさんの名前はない。しかし自分への攻撃と受け取ったAさんはその後、体重減少や不眠などに悩まされるようになる。

2014年5月、彼女は社内のセクハラ窓口と部長のY氏に相談したが、「これはAさんではない」とX氏が言ったことから、Y部長はそれ以上追求しなかった。

それどころかAさんに深夜に及ぶ時間外業務を与えたり、X氏と直接接点ができるように配置転換をおこなった。さらには時間外業務の賃金の支払いもなかったと、Aさんは語る。

上記に加えて咳や大量の鼻水が止まらなくなった彼女は、ドクターストップにより2015年1月より会社を休職する。すると会社は同年5月末に、何の具体的な理由も提示しないまま「当該契約に基づく労務の提供を期待することができないと判断せざるを得ない」と、一方的に雇い止めを通告してきた。

Aさんは2015年9月に労働組合の「首都圏なかまユニオン」に加盟し、翌10月から2017年4月にかけて、5回の団体交渉をした。しかし会社は「X氏の行為に違法性はない」「(2人のやりとりは)大人の男女の会話」「配置転換などは業務判断で適切」などとし、責任を負うことはないという回答だった。

会社側がどのような調査をしてきたのかの説明をAさんと組合が求めても「きちんと調査した」と告げるのみで、X氏のFacebookや社内メールを開示することは、5回の中では一切なかった。その理由は「組合が外部に内容を公開する可能性があるため」と説明したが、原告代理人の吉田伸広弁護士によると、これは不当労働行為に当たるという。

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5月25日、東京・霞が関の司法クラブで記者会見したAさんの代理人弁護士ら


■「会社の和を乱す存在として雇い止めにされた」Aさんが心境を語る

原告のAさんと筆者は2016年秋、知人を介して出会っている。同年12月、新日鉄住金ソリューションズに事実関係を問い合わせたところ、総務部広報・IR室より「2015年5月末に退職した元契約社員が、当社社員がセクシュアルハラスメントを行ったとして当社に申し入れをしていること、話し合いを行っていることは事実です。当社は、この訴えに関し適切に対応しております」と回答があった。

しかし結果的に、訴訟に至ってしまった。提訴を受けて再度同社に問い合わせをしたが、期日までに回答は得られなかった。そこでAさんに会見後、改めて心境や訴訟に至る経緯を取材した。

――訴訟を起こした今、どんな気持ちですか

2013年末にセクハラを受けて以来、ずっとずっと抱え込んでいました。「2014年6月から名目上の上司になる」とほのめかされて、拒絶したら仕事を失うのではないかと考えてしまいました。大人なのできちんと話せばわかると思ったし、穏便にやり過ごすし、誰にも言わないからと話し合いを何度も持ちましたが、納得してくれませんでした。

ついにはFacebookの友達登録を切り、社内でも個人的なやり取りを断り、うまくいったと思ったところ、ひどい書き込みが連日続いて、報復されていると感じました。そして相手を怖いと感じてしまった。本当は団体交渉の場で解決したかったけれど無理だったし、私の存在や名誉を毀損されたことへの怒りがおさまらなかった。

会社を被告にしたのは、セクハラそのもの以上に、相談しても取り合ってもらえず、会社の和を乱す存在として雇い止めにされたことが許せなかったからです。

私はX氏の暴走を止めるのは上司の役目だと思っていたのに、私のほうが「他人のFacebookを見ている方がおかしい」「このことは誰にも言うな」と言われてしまった。このような会社のあり方が一番おかしいと思います。

――現在の体調と生活は

心療内科や消化器科などに定期的に通院して投薬治療を受けています。ただ、未だに完治の兆しはありません。

現在は通訳のアルバイトをしながら暮らしています。提訴してよかったと思うのは、私1人では立ち向かうことができない相手に立ち向かえたこと。そしてこれまでは友人に「私はこんな目に遭って辛い」と訴えてしまうばかりで、友人との距離もできてしまいました。中には「毅然と対処しなかったあなたが悪い」「会社を訴えるなんておかしい」と言い出す友人もいて、理解されない孤独を深めてしまっていた。

しかしもう1人で苦しまなくてもいいと思えることで、肩の荷が下りた気がします。また組合宛に「応援している」「私もひどい目にあったのでぜひ頑張って」という応援のメッセージもすでに何通か来ていることが励みです。

――提訴の理由は、5回の団体交渉を経ても解決の兆しが見えなかったことなのでしょうか

1回目の交渉をした2015年10月の時点で、会社は私に30万円の見舞金を提示しました。それが2017年5月になると「本件解決金として90万円支払う用意がある」と言ってきましたが、私には医療費だけでも100万円近い自己負担がある。しかしお金以上に、会社には「なぜこのようなことが起きたのか」についての経緯を説明して欲しかったのに、一切なかった。

謝罪もしないと言われた。調査をしたというなら、どのような調査だったのか。X氏にセクハラ防止の教育をしたというのであれば、どのような教育をしたのか。調査結果の資料も「外部に公開する可能性がある」として公開しないなど、不誠実な対応が一番の理由です。

――団体交渉で一番感じた会社への不信感は、どのような点ですか

X氏のことを相談しても取り合わず、彼との接点ができるように私を配置転換した、Y部長が一度も出席しなかったこと。謝罪をするしない以前に、彼には交渉の場で経緯を説明して欲しかった。

セクハラそのものは私がX氏に「会社メールでも個別なメッセージのやりとりをやめましょう」と言ったことで一旦は止まりました。しかしその後、報復行為とも言える尋常ではないFacebookの書き込みが始まり、これはもう自分の力ではどうにもならないと意を決して相談したところ、Y部長は私の声に耳を傾けずにおかしな配置転換をして、それだけではなくさらに仕事を増やしました。Y部長にも報復されているという強い不信感があります。

――Y部長の対応で、一番許し難いことはなんですか

2014年12月にY部長が突然「契約社員の人の不満を聞くランチ会を開催したい。思っていることを率直に語って欲しい」とメールをしてきたこと。私とあと2名の契約社員が参加したのですが、その席で部長が「Aさんは何か不満はないの? せっかく私がこういう機会を設けたのだから、思う存分話して下さい」と言いましたが、この年の6月にX氏のFacebookのセクハラ書き込みを相談した際、「このことは誰にも言うな」と言われていました。

だから私は何も話せなかった。圧力をかけてきた張本人が「思う存分話してください」なんて、ありえません。団体交渉の場で会社側が提示した報告書に「Aさんに聞き取りをしたが、何もないと言っていた」とありましたが、このランチ会の席でのことを指しているのではないかと、怒りに震えました

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最後まで闘うと決めたと、Aさんは決意を口にした。同時に「体調不良は続くものの、少しずつだが友人と出かけたりするなど、日常生活を取り戻しつつある」と、笑顔を見せた。

執筆者:久保木憐(Ren Kuboki)