マクロン大統領、 地球温暖化と闘う研究者をアメリカから勧誘 ⇒ 研究費が「けち臭い」と批判も

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AFP
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完璧な回答だった。6月1日にドナルド・トランプ大統領が「パリ協定」離脱を表明し、世界中から非難を浴びたあと、エマニュエル・マクロン大統領はトランプ大統領のスローガンをもじって英語でこう答えていた。「Make Our Planet Great Again」(私たちの地球を再び偉大にしよう)。

とりわけマクロン大統領は、アメリカの研究者に合衆国を出て、地球温暖化と闘うべくフランスに働きに来るよう呼びかけていた。スピーチの大成功をうけた数日後、マクロン大統領は有言実行とでもいうかのように、海外の研究者がフランスに働きに来る意志を応募できる専用のウェブサイトを立ち上げていた。

ウェブサイトは、4年間(トランプ大統領の任期)で最高150万ユーロ(約1億8600万)の研究奨励金が支給されるとしていた。マクロン氏のスピーチから約2週間がたった6月15日、高等教育・研究・イノベーション省のフレデリック・ヴィダル大臣は、この奨励金が3000万ユーロ(約37億円)に引き上げられる見通しと、現在の研究予算からは天引きされないことを明言した。

■せいぜい20人程度の研究者

吉報だろうか?しかしフランス人の研究者の間では、これは付け焼き刃に過ぎないとの声も上がっている。Twitter上では素早い反応があった。フランス国立科学研究センター(CNRS)の複数の研究者がこの「けち臭い」研究費を批判し、せいぜい20人程度の研究者しか呼べないだろうと予想したのだ。

せいぜい20人程度。

やっと確かなことがわかった。4年間で20人の研究者を財政援助して、気候変動研究のリーダーになるだと。まったく馬鹿げている。

また、金額への疑問視に加えて、発案自体が適切かどうかを問う声も上がっている。

「すでに外国人の研究者は雇えている。例えば『フランス国立科学研究センター』(30%の研究者が外国人)。彼らの研究費を割増するので十分だ!」

「アメリカ人研究者を魅きつけることは、本当に優先事項なのか?」フランスの経済日刊紙「レ・ゼコー」で、天体物理学者のオリビエ・ベルネ氏はこう問うた。ベルネ氏はマリーヌ・ルペン氏率いる「国民戦線」が覇権を握るのをなんとしても阻止しようと呼びかけながらも、マクロン氏の政策にも反対するという立場をとる研究者たちの団体「RogueESR」のメンバーでもある。

「RogueESR」内で行われたアンケート結果も示すように、「研究所の予算拡大は喫緊の課題だ」とベルネ氏は言う。同団体は協議の末、10個の主要な改革案をヴィダル大臣に提出した。しかしこれまでのところ大臣側から回答はないという。

3000万ユーロが、何人かのアメリカの研究者をフランスに惹き寄せるために使われる。ただ、これがフランスの大学の財政状況だ。
※表ではレベル1(非常に厳しい状況)としてフランスの6つの大学が、レベル2(厳しい状況)として9つの大学が挙げられている

■歓迎ムードのアメリカ研究者。しかし…

では大西洋の反対側では反応はどうなっているのだろうか?今のところ、アメリカの多くの科学者がこうしたアプローチを歓迎しているようだ。アメリカの環境NGO団体研究員、デイヴィッド・ブロックスタイン氏がその一例だ。アメリカの科学雑誌「サイエンス」にインタビューされたブロックスタイン氏は、今回の発案をすばらしい措置であり機会であると見なしている

それでもブロックスタイン氏は、「この提案に多くのアメリカ人が応じるという可能性はかなり低いだろう」と考えている。また「フランスは自国の研究者にもより多くの機会を与えるつもりがあるのだろうか」と疑問を口にしている。

フランスの日刊紙「ラ・クロワ」のインタビューを受けたほかのアメリカ人研究者は、もっと悲観的だ。「気候変動に関する研究がアメリカで崩壊すれば、事態は一変するでしょう。ただ今のところは、この道を選ぶという誘惑に国会が抵抗することに望みをつないでいますがね」こう話したのは、コロンビア大学地球研究所部長のスティーブン・コーエン氏だ。

また別の研究者、クリスティーヌ・ネグラ氏は、マクロン大統領の申し出に魅きつけられるのは「キャリアをはじめたての研究者だろう」と予測している。というのも、アメリカの研究者の給料は一般的にフランスよりもずっと高いからだ。

残された課題は、この耳に心地いい申し出が、数カ月後にきちんと具体的なプロジェクトになっているかどうかを注視することだ。フレデリック・ヴィダル大臣は「ドイツは、私たちに続いて研究者を迎え入れる準備ができている」と請け合った。

ハフポスト・フランス版より翻訳・加筆しました。