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「ステルス値上げ」とは? 日本とイギリスで増加中、"価格を引き上げない値上げ"の実態

2017年06月18日 21時57分 JST | 更新 2017年06月18日 21時57分 JST

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筆者が購入したスイス製チョコのトブラローネ。ドイツで買ったもの(上写真)と比べて、ロンドンで買ったものは内容量が少なく、形状もわびしい Photo by Izuru Kato

6月3日に英ロンドンで、またテロが発生した。5月に出張した際、筆者もちょうど現場近くで食事をしてロンドン橋をぶらぶら歩いた。犠牲者には外国人も多いため、ひとごととは思えない気持ちになった。

2017-05-15-1494888282-7950911-dol_logo2.jpg 本記事は「ダイヤモンド・オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら

しかし、ロンドン在住の知人に話を聞くと、英国の人々は案外タフで、職場の同僚との会話の中でも大きな動揺は見られないという。

理由の一つとして、かつてアイルランド関連の爆破テロが相次いだため、肝が据わっている人が多い点が挙げられる。また、急な出来事にもろうばいせず、平常心を保ってユーモアを語る気概を尊ぶ価値観も英国人にはある。今回米紙が「英国人が動揺している」と報じたところ、ツイッター上ではジョークで反論するツイートが大盛り上がりを見せている。

「英国人を動揺させること」というハッシュタグには、トイレットペーパーの向きが逆だった、マクドナルドでミルクシェイクの機械が壊れたと言われた、などのたわいもない話が多く掲載され、それらがテロに屈しない姿勢の表れとなっている。その中に、ネスレのチョコレート缶のサイズが年々小さくなっている、というツイートがあった。値下げされていないとすると、実質的な値上げだ。

日本でもそういった「ステルス値上げ」は多数見られる。製造コストは上昇しているが、販売価格は引き上げたくないという企業の常とう手段である。英国では「シュリンクフレーション」(縮みながらの値上げ)と呼ばれている。

昨年6月の国民投票で、欧州連合(EU)離脱派が勝利して以降、英国ではこうした実質的な値上げが頻発している。外国為替市場でポンドが下落して自国通貨安となり、食品の輸入価格が上昇したためだ。英紙「テレグラフ」は、国民投票の前後で食品の内容量がこれほど減っていると報じた。

ドリトスのポテトチップスは200グラム→180グラム、ケロッグのココポップスは800グラム→720グラム、モルティーザーズのチョコは121グラム→103グラム、トロピカーナのジュースは1.75リットル→1.60リットル、アイスランドの冷凍フレンチフライは1.50キログラム→1.25キログラム、モーランドの缶ビールは500ミリリットル→440ミリリットル、ASDAの七面鳥フィレ肉は573グラム→500グラム、セインスバリーのポークソーセージは20本→16本。

スイス製チョコのトブラローネ(写真)も、昨年11月から英国で販売する製品に限って、内容量を減らした。写真の上段はこの5月にドイツ・フランクフルトで購入したもので、下段はその数日前にロンドンで買ったものだ。後者は山と山の間の谷が拡大し、実にわびしい形状だ。このチョコは英国人にはなじみ深い製品であるため、嘆き悲しむ声がインターネット上に多数掲載され、まさに「英国人を動揺させること」になっていた。

「シュリンクフレーション」は肥満対策に有効ではないか、とポジティブに評価する声も一部にあるが、圧倒的多数の英国民は実質的な値上げに怒っている。ただ、EU離脱支持派は国民投票前よりも増えているというねじれた状況だ。

一方、内容量を減らすのではなく、値上げするケースも増えており、「賃金はあまり伸びない中、ポンド安による生活コストの上昇が消費を弱めるのではないか」という心配が台頭してきている。

現在の日本銀行は「物価の上昇は何であれ歓迎される」という奇妙なスタンスだが、英国ではコストプッシュ型のインフレは困るという論調が当然ながら主流である。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

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