バニラエア「這って登らせるつもりなかった」 奄美空港で車椅子での搭乗を拒否した問題で

格安航空会社バニラエアが6月5日、奄美空港で「歩けない人は乗れない」として、下半身不随の男性が車椅子に乗った状態で搭乗することを拒否した。これを受けて男性は、車椅子を降りて腕の力でタラップをよじのぼって搭乗した。

格安航空バニラエアが6月5日、奄美空港で「歩けない人は乗れない」として、下半身不随の男性が車椅子に乗った状態で搭乗することを拒否した。これを受けて男性は、車椅子を降りて腕の力でタラップをよじのぼって搭乗した。

運営するバニラ・エア社は16日、「不快な思いをさせて申し訳なかった」と、電話で男性への対応を謝罪するとともに、奄美空港で車椅子でも搭乗できるように設備を導入した。ハフポスト日本版の取材に同社が明らかにした。

バニラエアの1号機=2013年12月、成田空港

■タラップの階段を「這って登った」

車いすでの搭乗拒否を受けたのは、大阪府豊中市の木島英登(ひでとう)さん(44)。高校時代にラグビーの練習中に背骨が折れて下半身不随となった。国内外のバリアフリー事例を紹介する「バリアフリー研究所」の代表をしている。

公式サイトによると、木島さんは6月3日、知人と一緒に関西空港から奄美大島に向かった際、関西空港のチェックインカウンターで、階段の搭乗タラップの写真を見せられた。「歩けますか?」と聞かれ「歩けません」と返答したら「乗れません」の一言だったという。「同行者の手伝いのもと乗降する」と説得して搭乗した。

奄美の美しい海でマリンスポーツを楽しんだ後、2日後に帰る際、奄美空港で騒動が起きた。同行者が車椅子を抱えて上ろうとしたところ、バニラエアから業務委託されている空港職員が「往路に車いすを担いで降りたのは違反」と制止したのだ。「同行者の手伝いのもと、階段昇降をできるなら」という条件で、ようやく搭乗が認められるが、同行者が車いすを持ちあげて乗ろうとしたら「ダメ!」と制止された。

木島さんはそこでタラップの階段に座り、全17段を1段、1段、這い登った。空港職員から、それも「ダメだ」と言われる中で「無視して」搭乗。同行者が木島さんの足首を持ってサポートしたという。

この後、木島さんは「歩けないことを理由に搭乗拒否をするのは、障害者差別禁止法に違反する」として、鹿児島県、大阪府、国土交通省やマスコミなどに報告した。「設備がないなら、できる範囲でお手伝い、配慮してくれたらいいのに。それすら全くなく、さらに自分達で乗るのも認めないのは、ひどい」と、公式サイトで怒りをぶつけていた。

木島さんは2002年にも伊丹空港でANAへの搭乗を拒否されそうになったとして、ブログで問題視していた

■バニラエアの対応は?

奄美空港

バニラエアはANAホールディングス傘下の格安航空会社。奄美空港ではバニラエアの成田空港発着の路線や、JALの航空機はブリッジを利用できるが、バニラエアの関西空港発着の路線に関しては、タラップしか搭乗手段がなく、車椅子を持ち上げる設備もなかった。

ハフポスト日本版は、バニラエアの担当者に取材した。担当者は「車椅子ごと担いだり、利用者の体を抱えたりしてタラップを乗降することは、大変危険なので安全上の理由から認めていない。関空-奄美線では、他の方の補助を受けても自力でタラップを歩いて上り下りできないお客さまから事前に連絡があった際には、搭乗をお断りしていた」と説明した。

バニラエアは車いすの利用者は予約センターの事前確認が必要として、公式サイトで以下のように掲載していた。ただ、木島さんからは事前の連絡がなかったという。

奄美空港施設要件にともない、おからだが不自由なお客様/車椅子ご希望のお客様の安全確保およびSTEP利用時の不意の事故を未然に防ぐために、お客様ご自身またはお連れのお客様の補助を得てSTEPを昇降いただけるかの事前確認が必要となります。事前のご確認は予約センターまでお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。

同社では「自力で歩いて搭乗してもらうのが基本で、歩けない方に這って登らせるつもりはなかった。安全第一を考える中で、相互のコミュニケーションがうまく行かず、お客様に不快な思いをさせたことをお詫びしたい」と話している。

今回の事態を受けて、バニラエアは奄美空港でアシストストレッチャー(座った状態で運ぶ担架)を14日から使用開始。階段昇降機も29日から導入する。自力で歩けない車いすの乗客も搭乗できるようになり公式サイトの記載も変更された。5営業日前までに予約センターに知らせて欲しいと呼びかけている

【訂正】バニラエアの担当者の話は当初、「関空-奄美線では、自力で歩けない車椅子のお客さまから事前に連絡があった際には、搭乗をお断りしていた」と書いていました。正確には「関空-奄美線では、他の方の補助を受けてもタラップを歩いて上り下りできないお客さまから事前に連絡があった際には、搭乗をお断りしていた」という説明だったので訂正します。なお、今回のケースではサポート受けても歩いて上り下りできないので、事前連絡があれば断っていたケースに当たるということです。(2017/06/30 20:14)

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