どうして体型を気にしなければならないの? 悩む女性たちが摂食障害経験者、人気スタイリストと考えた

「やせたい」「キレイになりたい」「愛されたい」…。どうして女性は体型を気にしなければならないのか。悩み続けた人たちが、摂食障害経験者と人気スタイリストと考えた。
Kazuhiro Sekine

「やせたい」「キレイになりたい」「愛されたい」…。

どうして女性はこんなにも見た目や体型を気にしなければならないのだろう。

悩み続けた人たちが、イベントを通じて摂食障害を克服した女性と人気スタイリストと共に考えた。

イベントは6月28日夜、ハフポストが主催して東京都港区で開催。摂食障害の経験談をハフポストに寄稿した会社員の野邉まほろさんと、お笑い芸人の渡辺直美さんの専属スタイリストを務める大瀧彩乃さんをゲストに招いた。10代から社会人までの約50人が集まり、2人の話に聴き入った。

■「1日に下剤90粒飲んだこともあった」

最初に話をしたのは野邉さん。摂食障害になったのは高校1年のころだったという。

生まれ育った島根県・隠岐の島を離れて松江市内の高校に進んだが、初めての1人暮らしで体調を崩し、1週間休んだ後のテストで赤点を取った。そこから不安や焦りが大きくなり、過食になった。

野邉まほろさん

増えた体重を減らそうとインターネットで調べたところ、下剤を飲めばやせるという情報を見つけて実践。「薬を飲んでから数時間後には3キロもやせた。いい方法を見つけたと思って続けたが、次第に体が慣れてしまい、高校2年生のときには1日90粒飲むようになっていた」と明かした。

摂食障害を治そうと、次に頼ったのがTwitterだった。でもそこに広がっていた情報は「どうやったら吐きやすいかとか、食べても太らない方法とか、『闇』が深かった」という。

そこで野邉さんは、自らポジティブなメッセージを投稿することにしたという。例えば、その1つが次のような文言だ。

投稿を機にブログを書き始め、自らの病気を友人たちに告白する。そして、それまでは「自分を傷つける行為」だった食事も変えようと決意。自ら調理し、盛り付けをおしゃれにすることで、次第に気持ちが上向きになっていった。

「太った自分から何かを取り除くのではなく、今の自分にどうやって付け足すかを意識した」と野邉さん。今は摂食障害を克服したという。

野邉さんのインスタグラム。鮮やかな盛り付けの手料理が並ぶ

■「着やせ」は狙わない

その後、大瀧さんがファッションなどの観点からエピソードを披露。渡辺さんのスタイリストは10年ほど務めており、「『着やせ』を考えて服選びはしません。本人が明るく楽しい気持ちになれることが一番です」と話した。

大瀧さんはかつて「チェキッ娘」というアイドルグループのメンバーだった。アイドルからスタイリストに転身したが、その前後、「やせすぎ」問題に直面していた。

大瀧彩乃さん

「スーパーモデルに憧れていました。様々なブランドの服を着こなすのには、やせていた方がいいと思ったんですね。食べるのを制限して、今より10キロ以上やせていました。自分ではやせすぎという意識はなかったんですが、親から指摘されて。スタイリスト会社に入ったら、今度は師匠にあたる先輩から『まず最初にやる仕事は太ることだ』と言われました」

大瀧さん(左)と渡辺さん

■「『加工なし』の自分を出すのって格好いいけど、ハードルが高い」

イベントの後半は、野邉さんと大瀧さんにハフポストの女性編集者2人が質問し、さらにテーマを深めた。

ハフポストのブログエディター井土亜梨沙が来場者に対し、「これまでにやせたいと思った人はいる?」と聞くと、ほとんどの人が手を挙げた。「ダイエットしすぎたという人は?」という質問に対しても数人が挙手した。

野邉さんは現在もダイエットをしていることを明かした上で、「やせたいという気持ちは悪いことではない。その気持ちをなくすのは難しい。朝は食べるけど夜は食べない。なりたい自分になるためにダイエットはやり続ける」と話した。

ハフポストのニュースエディター生田綾が「なぜやせたいという感情が消えないのか」と問うと、野邉さんは「中学生ごろからやせている方がいいと思うようになったんですが、たいていもてる女子はやせていて、芸能人も、自分が憧れる男の子が好きな女子もやせていた。やせてることが愛されることと思っていた」と打ち明けた。

さらに野邉さんは、「ありのままの自分を出すとか、『加工なし』の自分を出すのって格好いいけど、ハードルが高い。当事者は今が苦しくて悩んでいる。だから、今の自分とどう向き合うかを考える必要がある」と付け加えた。

大瀧さんは「心が健康であることが大事だと思います。まほろさんのように、健康的に前向きにやせることで自分の心が健康になるならそれがいいと思いますし、渡辺直美さんみたいにやせることにはあまり興味がない、食べて元気が出るならそれがいいと思います」と話した。

大瀧さんはまた、自身の仕事に関係するファッションについても触れた。

「ファッションもそうで、黒がダメというわけでもないし、黒い服が好きならそれを着ればいいと思います。(みんな)まわりの目線を気にしすぎているような気がして、もっと自分が好きな格好や、好きなことをしていった方がいいんじゃないかなということは、テレビに出ているモデルさんやタレントさんとかを見ていると思います」

熱心に聴き入る来場者たち

会場からも意見や質問が相次いだ。摂食障害について研究している磯野真穂さんはこう語った。

「今の状況は怖いと思っている。幼稚園の子供でさえダイエットしなきゃって言っている。体が大きくなる時期になぜやせないといけないのか。メディアの影響も大きくて、例えばAKB48の峯岸みなみさんが減量するライザップのCMがありましたけど、彼女なんか元々やせているのに。この状況を放っておいたまま次の世代に渡してもいいものかと思っています」

磯野真穂さん

別の女性は、体型を気にしている人に対してどう接したらいいか質問。野邉さんは「『ありのままでいい』と言われても、『お前はやせてるから言えるんだろ』って思ってしまう。正直、周りの人が何を言っても、どれだけ気を使っても受け入れられない時は受け入れられない。そういうときは体型のことは別に言わなくていい。それ以外のこと、例えば一緒にネイル行こうよとか言えばいい」と答えた。

来場者の質問に答える野邉さんと大瀧さん

大学の看護学部で学ぶ女性は、摂食障害の人への接し方を聞いた。野邉さんは「きれいになる=やせる、という図式でしか考えていない。だから、やせる以外のきれいになる方法を示してあげることが大事。例えばファッションとか」と話した。

メディアによる影響力について別の女性が問うと、大瀧さんは「男性目線でつくられているものが多く、男性の目を気にしなければいけない世間になっている。無理にやせることがおかしいのであって、世の中が変わらないと」と話した。

野邉さんは「やせてるかどうかを伝えるんじゃなくて、その人が自分自身をどう思っているかまで伝えて欲しい。やせている時、自分は生き生きしていたかというと決してそうではなかった。太っている、やせているなんていうのは表面的な話にすぎない」と語った。

■「イベントは前向きな雰囲気でうれしかった」

イベント終了後、来場者に感想を聞いた。自身も摂食障害だという大学生の女性(21歳)は「当事者や医療関係者、専門家が参加する摂食障害のイベントは、重苦しい内容になりがち。でも今日のは前向きな雰囲気でうれしかった」と話した。

この春テレビ局に入社した女性(23歳)も過食になった経験があるという。「職場はまだまだ、女性らしい女性がもてはやされる雰囲気があり、自分も無意識にやせようとしていた」と語った。

ハフポストでは、「女性のカラダについてもっとオープンに話せる社会になって欲しい」という思いから、『Ladies Be Open』を立ち上げました。

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