加藤一二三九段、敗れた藤井聡太四段にエール「勝負はつねに負けた地点からはじまる」

「この先の勝ち星も敗戦も、そのすべてを御自身の力にかえて人々のこころに感動を与える棋譜を数多く紡いでほしいと願います」
Kei Yoshikawa/HuffPost Japan

デビュー戦以来負けなしだった将棋の藤井聡太四段(14)が7月2日、佐々木勇気五段(22)との対局に敗れ、初めて公式戦で黒星を喫した。これを受けて、6月に現役を引退した“ひふみん”こと加藤一二三九段は2日夜、自身のTwitterで「人生も、将棋も、勝負はつねに負けた地点からはじまる」とエールを送った。



「将棋界のレジェンド」とも呼ばれる加藤九段は、約63年の現役生活の中で歴代3位の1324勝をマーク。対局数(2505局)と敗戦数(1180敗)はともに歴代最多という金字塔を残している。

加藤九段「こころに感動を与える棋譜を数多く紡いでほしい」

加藤九段は、2日の対局で藤井四段が敗れたことを受けてコメントを発表。「こころに感動を与える棋譜を数多く紡いでほしい」と、激励の言葉を送った。産経ニュースによると、コメント全文は以下のとおり。

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藤井聡太四段の9七歩は好手でしたので一時、互角になったように思いましたが、佐々木勇気五段の5八玉がさらに良い手だったので、藤井四段側にはこれを凌ぐ手が見つからず、以後、佐々木五段側が好転し、本局は藤井四段の負けとなりました。

30連勝という、初の連勝記録大台達成は惜しくも実現なりませんでしたが、藤井四段の実力は中学生にしてすでに本物です。

14歳にして常に沈着冷静、強靱な精神力を備える藤井四段ではありますが、他方でプレッシャーも無意識下には感じていたはずです。

ここで一旦、気分を仕切り直していただいて真っ白な、気軽な気持ちになっていただき、ここからまた新たな目標の達成に向けて今後はさらに伸びやかに、しなやかに、研鑽を重ねていただけたらと考えております。

長い棋士人生は今、ここに始まったばかりです。

この先の勝ち星も敗戦も、そのすべてを御自身の力にかえて人々のこころに感動を与える棋譜を数多く紡いでほしいと願います。

超新星の誕生に湧く将棋界ですが、平安時代より指し継がれる『将棋文化』が、大輪の花を咲かせることができるよう、偉大な後輩の成長からは今後、ますます目が離せませんね。

加藤一二三

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加藤九段「素晴らしい後継者を得た」

加藤九段と藤井四段は2016年12月、藤井四段のデビュー戦となった「竜王戦」6組ランキング戦で対局。この対局は藤井四段が勝利し、ここから破竹の「29連勝」を成し遂げた。

その間、加藤九段の引退が決まると、藤井四段は6月21日の記者会見で「加藤先生とはデビュー戦で対局して、多くのことを学ぶことができましたし、もう迫力のある対局姿が見れないかと思うと、自分としても一抹の寂しさがあります」と語った。

加藤九段も6月30日の引退会見で、「あの少年棋士が引退する私に対して寂しいと言ってくれたことは『素晴らしい後継者を得た』と感動しました」と回顧。自らの最年少記録を抜いて14歳2カ月でプロ棋士となった藤井四段に、将棋界の未来を託すかのようだった。

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