ホリエモン出資の宇宙ロケット、7月29日に打ち上げへ 成功すれば民間単独で国内初

堀江貴文氏が役員を務めるベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」が、観測用の宇宙ロケットを7月29日に打ち上げる。成功すれば民間単独での宇宙ロケットの打ち上げは国内初。
インターステラテクノロジズ

北海道大樹町のベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」(稲川貴大社長、14人)が、観測用の宇宙ロケットを7月29日に打ち上げる。

稲川社長らが6日、東京都内で記者会見して明らかにした。成功すれば、宇宙ロケットの打ち上げは民間単独では国内初となる。

記者会見に応じる堀江貴文氏(右)と稲川貴大社長

同社の活動をめぐっては、ライブドアの元社長で実業家の堀江貴文氏も最大出資者として関与。現在は同社の役員でもある。既製品を活用するなどしてコストを抑え、近年増加する小型衛星の打ち上げ受注も視野に入れる。

■目指すは「スーパーカブ」

記者会見には稲川社長と堀江氏らが出席。打ち上げるロケットの仕様や、打ち上げ日程などについて説明した。

それによると、打ち上げは29日午前10時20分〜午後0時半を予定しているという。悪天候などにより、同日午後か30日になる可能性もある。

ロケットは全長約10メートル、燃料などを入れた総重量は約1.2トン。燃料であるエタノールに液体酸素を混合、燃焼させることで推進力を得る仕組みだ。

ロケットの名前は「MOMO」。「モモは漢字で百とも書ける。このミッションは高度100キロを超えるというものだからそう名付けた」と稲川社長は話した。

MOMOのイメージ図

予定では、ロケットは打ち上げ後、エンジンの力で加速する。上空40キロの地点で燃焼が終わり、燃料タンクなどが入っている下部が切り離される。その後、搭載物を格納している上部は慣性によって飛行。宇宙空間(地上から100キロ上空)に達した後、放物線を描くように地上に落下する。

上空40キロに達してから再度同じ高度に落ちてくるまでの約4分間は微小重力(無重力)状態となる。ロケット上部には今回、インターステラテクノロジズが独自開発した機材を載せて通信状況などを調べるが、最大20キロまで搭載できるため、今後は無重力下での実験などをビジネスとして請け負うことを狙う。

MOMOの「売り」は安さだ。これまでロケット開発は国の主導で行われてきた。性能のよさを追い求める一方、開発費や打ち上げ費用が高いのが現状だ。

例えば、JAXA(宇宙航空開発機構)の観測ロケットは2億〜3億円とされる。これに対し、MOMOは「5000万円以下でのサービスの提供を考えている」(稲川社長)という。

稲川社長は言う。

「これまでのロケットは、とにかく高性能のものをつくるというところに主眼が置かれていた。ユーザーにとって宇宙によりアクセスしやすくしようと思うと、宇宙への輸送機械であるロケットのコストを下げることが何より大事になってくる。フェラーリではなくて、スーパーカブのようなイメージのロケット。量産されて、使いやすいロケットを提供したい」

同社はロケットの費用を抑えるため、秋葉原の電気店などで民生品を調達。ネットオークションで落札した中古の工作機械も使うなどして、エンジンや機体を自社で開発した。

■人工衛星運搬も視野

同社が将来的に狙うのは、人工衛星を運搬できるロケットの開発だ。堀江氏は言う。

「サブオービタル(弾道飛行)のロケットをバンバン打ち上げられるようにして、なるべく早く商用化をしたい。並行して、軌道投入用のロケットをなるべく早く開発したい」

人工衛星は近年、技術の進歩で小型化が進み、防災や通信、農業などの分野で需要が増えている。だが、それを運ぶためのロケットの小型化は進んでおらず、大型ロケットに相乗りする形で打ち上げられているのが現状だ。

割安で小型の人工衛星用ロケットの開発。同社はそこにさらなるビジネスチャンスがあるとみている。

人工衛星打ち上げロケットのイメージ図

堀江氏はさらに「その先」についても語った。

「月や小惑星、さらには地球周回軌道から遠いところへの輸送ができる無人ロケットを作りたい。その次はサブオービタル、オービタル(周回軌道)に人を送り込めるようなロケット。さらには、小惑星など、地球以外で資源を確保するためのロケットや探査機のシステムを作っていきたい」

一方、稲川社長は最後にこう述べた。

「元々は去年打ち上げしようと思っていましたが、やはり実際に作ってみると難しかった。うちはビジョンだけを見せて何もしないところではなく、物作りをしている会社。一歩一歩丁寧な仕事をしたい」

■大樹町ってどんなとこ?

マークの位置が今回のロケット打ち上げ場所

打ち上げ場所となる大樹町は北海道南東部にある。太平洋に開けた立地で、打ち上げに適しているとされる。

町の主要産業は酪農や漁業だが、人口減を食い止めようと、1980年代から宇宙産業の誘致に取り組み始めた。

町内には1キロの滑走路を備えた「多目的航空公園」や、JAXAの施設などがある。インターステラテクノロジズの実験施設もこの近くにあり、町が土地を同社に貸すなど支援している。

町は「宇宙のまちづくり」をさらに進めたい考えで、射場の誘致にも取り組んでいる。

▼H2Aロケット23号機の画像集が開きます

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