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働きかた、変えるためのキモは...「企業風土に多様性が必要」電通社員も悩む

2017年07月22日 01時03分 JST | 更新 2017年07月22日 01時03分 JST
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長時間労働の是正やワークライフバランスの改善など、働きかたについて考える団体「働き方改革研究所」が7月19日、都内でフォーラムを開催し、企業の人事担当者や有識者など約40人が課題や取り組み内容について話し合った。

参加者からは、「長時間労働を是正したいけれど、会社の風土がなかなか変わらない」「若手に権限が移譲しにくい」などの悩みが出たほか、「意思決定の仕組みを変える必要がある」「自己実現のためにいろいろな働き方ができる場所を用意したほうが良い」などの提案もあった。議論の一部を紹介しよう。

■「会社の風土がなかなか変わらない」

日立製作所に勤務するある参加者は、「朝まで働け、週末も働くのが美徳という企業風土が、今でも一部に残っている」などと述べ、残業を減らす対策が悩みだと語った。定時以降の時間を使って社内起業をする若者も出てきているが、まだまだ道半ばだと話した。

新入社員の高橋まつりさんが自殺した広告大手・電通の人事担当者は、「2018年度末までに、新しい電通になる」ことを目指し、会社の構造改革に向けて取り組んでいると述べた。これまでの電通は、長時間働くことをいとわないような人が集まる「同質的な集団」になっていたと分析。次のように打ち明けた。

「(広告企業は)アイデアを生み出すことが仕事なので、大学生の時のサークル活動の延長線上のように、ワイワイやりながらみんなで集まって、何時間かけてでもアイデアを出すことが楽しいという文化がありました。『仕事がなぜ楽しくないのだ』というようなことが、風土的にあったんです。

そういう指向を持った人たちが入ってきて、(高橋さんの自殺のような)あのようなことが起きてしまったということが会社の認識不足だったと思います」

この参加者は、電通における働きかた改革の「キモ」について、「多様性を受け入れていく」ことが大切だと語った。

フォーラムに参加した経済学者の竹中平蔵氏は、「残業するほど暇じゃない」というキャッチコピーのCMがかつて存在したことを紹介しながら、多様性とは何かを説明した。

「(CMの内容は)私の人生は私のものだ。私は恋人と時間を過ごしたい。家族と時間を過ごしたい。将来さらに別の仕事をするために、今、教育投資を受けたい。目の前の仕事は、もちろん一生懸命にやるけれども、残業するほど私暇じゃない。私の人生はもっと高いところにある(というものだった)。

これは個人の今の価値観として、ものすごく重要なことを示していると思うんですよね。自由に生きたいんです。

ですが、自由に生きられるかというと、例えば、たいへん良いといわれる職場に務めている人でも、決して自由ではないんです。

人生、色々な考えの方がいます。私は少々残業してもいいから高い給料が欲しいという人もいれば、私は家族との時間を大切にしたいから5時には帰りたいという人もいる。同じ人間であっても、ライフステージによっても、この考え方は変わる。

ただ、自由な働きかたができるような制度にしたいし、そのために自分も努力したいというのが、ひとつの働きかた改革の視点だと思います」

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竹中平蔵氏

■「意思決定の仕組みを変える必要がある」

安全保障を研究している一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構の部谷直亮氏は、意思決定システムを変えることで働きかた改革につながったアメリカ軍の事例を、かつて同軍が行っていた会議のかたちを踏襲したままの自衛隊と比較して紹介した。

部谷氏によると、アメリカ軍は会議の議長を指揮官が担当し、会議では指揮官の考えをどう実現するかについて議論。一方の自衛隊では、部下が議長を担当し、「こんな可能性があります。あんな可能性もあります」などとすべての可能性を探りつつ、コンセンサスを取りながら会議が進むのだという。

部谷氏は、自衛隊では会議の時間までに部下たちがたくさんの資料を揃えたり、会議での各参加者の発言時間をあらかじめ予測するなどの業務が発生しており、残業が多くなっていると指摘。逆にアメリカ軍は、過激派組織「IS(イスラム国)」などに対応するために意思決定を早くしなくてはいけない状態に追い込まれ、それが働きかた改革につながっている面もあると紹介した。

■「個人の裁量を広げることは、企業にとっても価値になる」

NECに勤務しながらNPOを立ち上げたり、慶応大学で非常勤講師を務めたりしている早田吉伸氏は、働く場を1つの企業に縛らないような、働き先の多様化が必要ではないかと問題提起した。

早田氏は、自身がNECから政府機関に出向した経験や、NPOを立ち上げたことを紹介し、「(仕事場を)越境したり、自分のやりたいことをやることが、自身が所属する企業の新しいビジネスを作ることに生きてくる」と述べた。

しかし、個人が自己実現して幸せになるためには、「ダイバーシティ(多様性)を支えるような働く場を用意する必要がある。個別の企業だけで頑張りましょうというのは難しいのではないか」と指摘。「個人がいろいろなものを流用し合いながら自己実現して、企業や社会にとっても価値があるような社会システムを実装できないか」と提案した。

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早田吉伸氏(左から2番目)

■「働きかた改革は、働く側も雇う側も、一緒になって取り組む必要がある」

フォーラムに参加したメディア企業に勤務する人は、「ある大手企業のトップが、組織の壁を取り払い、若い人にも権限を移譲できるようなカルチャーを作りたいと考えて参加したと発言されたのが印象的だった」と、ハフポスト日本版に話した。「トップの中でもこんな人がいるのかと驚いた。そういう企業に人が集まるのではないか」と感じたという。

働きかた改革研究所の発起人でITシステム業を営む荻島浩司さんは、「もともとIT企業の人たちの働き方を良くしたくて、議論の場の必要性を考えていた」と語った。しかし、IT企業だけではなく、また、政府や企業だけでなく働き手も議論に加わることが、解決につながるのではないかと気がついたのだという。

「今回のフォーラムでも多方向に議論が及んだように、働きかた改革の話は、長時間労働にとどまらず、権限の移譲、ワークシェアリングなど様々な範囲に及びます。経済的に成長するとともに、個人が幸せになるためには、働く側も雇う側も、一緒になって取り組む必要があります。

今後勉強会などを通じて、いろいろな人が課題を持ち寄り、整理して、一緒に知恵を出しながら、一つ一つ解決していきたい」


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