あの人のことば

「モテ服」「男ウケ」の時代は終わった。Instagram全盛のいま、ミレニアル世代の心を動かすものとは?

2017年07月27日 01時05分 JST | 更新 2017年09月19日 13時49分 JST

Instagramを筆頭に、写真・動画共有アプリが若者に浸透し、『インスタ映え』『キラキラ女子』などSNSに関連するトレンドも増えてきた。

一方で、『SNS疲れ』といったマイナス要素も浮上するようになった。2017年5月には、Instagramがあらゆるソーシャルメディアの中で最も若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしているとの研究結果も発表されている

若者はいま、SNSとどう向き合っているのか。そして、物心つく時からネットに親しんでいるデジタルネイティブ世代は、どんなものごとに魅力を感じるのか。若年層のSNS事情に詳しい石井リナさんに話を聞いた。インタビューには現役の女子大生にも加わってもらい、ネットの使い方にまつわるリアルな意見交換もしてもらった。

「キラキラ女子」はもういない?若者たちが、Instagramのストーリー機能を使う理由

——まず、石井さんの活動内容から教えていただけますか。

ベンチャー企業のSnSnapに所属していて、リアルイベントやSNSマーケティングをテーマにしたオウンドメディア『COMPASS』の編集長を務めています。SnSnapでは、リアルイベントに来た人たちが、自分のSNSにそのイベント写真を楽しく載せられるようなフォトサービスのプロダクトもつくっています。また、Instagramマーケティングの本を執筆していることもあり、フリーランスのSNSコンサルタントとしても活動しています。セミナーを開いたりマーケティングのイベントに登壇したりしています。

——いまの10代から20代は、Instagramをどのように使っているのでしょうか。

テレビだと、まだ「キラキラ女子」コンテンツ真っ盛り、みたいな取り上げ方が多いけど、それは割と落ち着いてきた気がします。手が込んでいたり、"キラキラ"しすぎたりしていたら「逆にダサイ」という雰囲気が出ている印象があります。

——一時はInstagramに投稿するための「リムジン女子会」が流行ったりもしましたけど、最近はあまり見ないですね。Instagram利用者がトレンドに左右されなくなった、ということなのでしょうか。

トレンドを意識しなくなったということはないと思います。ただ、多様性の良さをみんながわかり始めているから、「人と違っても別にいい」というような風潮はだんだんと出てきたと感じます。

昔よりも、「モテ」を囁かれることもなくなったし。私が高校生、大学生だった時(2000年代)は、ファッション雑誌で「モテ服」とか「男ウケ」、「女ウケ」みたいな言葉がそこら中で出回っていたけど、今の時代にそれってナンセンスで、そぐわないものだなと感じます。

今の若い世代を見ていて感じますけど、「モテ」とか「○○ウケ」にすごく突き動かされている人たちのパイは小さくなっています。それはきっと、すぐに日本以外の世界と繋がれるインターネットやSNSの影響も大きいのではないでしょうか。

——いまInstagramでは、ストーリー機能(※)が通常投稿よりも主流になってきてるくらいの勢いがありますよね。石井さん自身も使われていますか?

最近はストーリーばっかり使っています。私の周りはすでにストーリーしか見ないと話す子もいますね。その時タイムリーに起きていることを何でも載せています。わりと何も隠さず、リアルライフを載せてますね。

ストーリーが若い層に活発に使われているのも、作り込まれすぎた世界観に違和感を覚え始めていることを表していると思います。使っていてより楽な方にいってるというか、よりリアルな方に。

(※)2016年8月にInstagramに追加された新機能。動画や写真をスライドショーを作るように複数投稿していく。

——24時間で投稿が消えてしまうのに投稿する意味はなんだろうと考えていたのですが、現役大学生の田嶋さんは、ストーリーの方が「投稿しやすい」と言っていました。

田嶋:Instagramのフィードは、以前よりも投稿しづらくなりました。ストーリーを使っていて思うのは、フィードはモノを載せるけど、ストーリーはコトや「経験」を載せているって感じがします。瞬間性というか、すぐ消えるけれど、モノとして残したいわけじゃないこと。一瞬で消えてもいいから、楽しさをフォロワーに共有したいみたいな感じです。

——Instagramユーザーに、ストーリー機能はなぜウケているのでしょうか。

石井:SNSってそれぞれ「こういう投稿がウケる」みたいな雰囲気ってあるじゃないですか。ストーリーにはそのルールがまだないからだと思います。

数年前にInstagramを使ったマーケティングのセミナーに登壇した時は、「TwitterとかFacebookって投稿すべきものが限られてるけど、いまInstagramがめちゃくちゃ面白くて、インスタには何でもあげていいんですよ」って話してたんですよ。

まだそんなに盛り上がってない、何のルールもできていないSNSって、その段階ではみんな何でも投稿できる。Instagramが盛り上がり始めていた時は、本当に何でもアップしてたんです。食べたもの、行った場所、一緒にいる人とか、別に一切クオリティも考えずに上げられていたんですけど、利用者の人口が増えるにつれて、ユーザーの中でなんとなく見えないルールみたいなものができていくんですよね。

結果、Instagramにおいては、綺麗な写真や動画が好まれるという雰囲気ができ、投稿のハードルが上がったというような側面がある。

今は、「ルールがない」状態がストーリーにあるんですよね。たぶんストーリーもストーリーで窮屈になったら、別のプラットフォームにユーザーが移っていくのではないでしょうか。

"いいね"プレッシャーや、SNS疲れとの向き合い方

——暗黙のルールみたいなもの、確かにありますね。投稿するたびにいちいちプレッシャーを感じたりする。SNSをやっていると疲れてしまうという人もいます。石井さんもSNS疲れを味わったことはありますか?

Instagram全盛期くらいのときとかは、やっぱりキレイな人の写真とか、私もこういう生活がしたいとか、憧れのような欲求は渦巻いていた気がします。

けど、最近は「もう少しリラックスしようよ」、「そういうのはくだらないよね」っていう声も増えてきましたよね。まだSNS全体がそうなっているわけではないので、そうしたプレッシャーから解放されたらいいなと思います。

田嶋:年齢の差もあると思います。10代など若い人だと、「いいね」がつかないのが気になるとか、フォロワーを増やしたいといったことで悩んでしまう。

石井:「いいね」プレッシャーみたいなの、ありますね。10代や20代前半の子たちや、モデルの卵みたいな子の前で「SNSコンサルタントです」って言うと、「教えてください、どうしたらフォロワー増えますか?」「どういう投稿したら良いんですか?」と言われたりするんですけど、SNSって自分のためのものですよね。個人のSNSに対して私が言うこともないので、自分の好きなように使いなよといつも話してます。

——石井さんは、この3人の中で1番Instagramを使っている方だと思います。疲れないようにSNSと向き合う方法を教えていただけますか。

私は、疲れないように使っています。疲れたと思ったら、1回やめたらいい。20万人くらいフォロワーがいる友人も、疲れたらしばらくスマホを置くと言っていました。1週間とかはたぶん無理だと思うので、1日とかの話だと思いますけれどね。

——1日離れるだけでも全然違いますか?

違うと思いますよ。あとは、海外のトップインフルエンサーもずっとスマホで写真を撮っているんじゃなくて、スマホを放置して海に行くとか、山に行くとかっていう話をしていました。SNSに振り回されることなく、適度に楽しんで使うものであるべきだと思っています。 若者が、心動かすもの。例えば、ピルをレインボーカラーにしてみるとか。

——私は、デジタルネイティブ世代は、どういうものに心を動かされるのかなといつも考えているのですが。流行りでいうと、いまInstagramではフィルムカメラのリバイバルブームが起きていて、『写ルンです』で撮った写真を投稿することが流行っていますよね。

『写ルンです』は、昔っぽい、良い写真が撮れるので若い人たちにウケてるんだと思います。「思い出を残している」という雰囲気があるというか、ナチュラルに味がある。ストリート感が出るというのもあるかもしれません。値段は結構高いんですけどね。

石井さんが『写ルンです』で撮影した写真。


——『写ルンです』で撮影し、現像してその写真をInstagramに投稿するという手間は、煩わしいものではないんでしょうか。

その手間が若い子達にウケているんだと思います。撮って、どんな写真が撮れたかわからない、あがってくるまでどんな風になるのかわからない。撮った写真を人に渡した時にコミュニケーションが生まれて、みんなが「いい写真」って言って喜んでくれるみたいな。それって結構楽しいです。

けど、一時期のパンケーキブームみたいに、Instagramで『写ルンです』が大流行しているわけではないですよ。10人が10人全員持っているわけじゃない。興味ある人とない人が混在しているみたいな感じです。なぜかというと、いまはフォロワー数が1〜10万人くらいの『マイクロインフルエンサー』がたくさんいて、Instagramから情報収集をしている人たちは、そういった比較的狭いコミュニティーの中で、いろんなインフルエンサーからちょっとずつ影響を受けているという感じなので。

——みんなやってる、みたいな大流行が起きない状態だと。石井さんから見て、いわゆるミレニアル世代(※)と呼ばれる世代はどんな人たちで、どんなものに心が動かされると思いますか。

ミレニアル世代の特徴はいろいろあって、ネットでモノを買うのが当たり前の世代で、SNSをヘビーユースしていて、LGBTQという言葉で表される性的マイノリティーといった多様性にもとても寛容です。自意識過剰で、自己顕示欲も強い一面があるってアメリカでは言われていたりするんですけど。

あとは、クリエイティブ的にカッコよくないものにも興味を持たない世代ではないでしょうか。Instagramは写真と動画がメインなので、あまり言語を必要としない。写真も動画もクリエイティブにおける質の高いものに慣れている世代ですよね。そしてクリエイティブにおけるカッコよさも非常に重要視されてると思います。つまり、ビジュアル的な良さがないものは、手に取ってもらうきっかけも少ないと思います。

(※)ミレニアル世代:2000年代に成人あるいは社会人になった世代。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多い。主にアメリカで使用されている言葉。

——ビジュアルで訴えかけられるものがないと、そもそも興味も持ってもらえない。

例えば、今は日本でピルはあまり普及していませんが、インスタジェニックな低用量ピルが販売されたら、みんな興味を持つかもしれないですよね。ポーチに入っていてもカワイイと思えるもの。7曜日分あるから、レインボーカラーみたいに、錠剤が7色違うみたいな。「かわいい、これ」ってなると思う。

今のピルは、かわいくない。私もピルを飲んでいるんですけど、最終的に色で選びました。かわいくない、いかにも『薬』っぽい青いやつと、ちょっとだけポップに見えるピンクの薬があったので、「じゃあピンク」って。

——レインボーカラーのピル...そのくらいポップになれば、もっと持ちやすいかもしれないですね。

何か物事を伝える時に、クリエイティブのかっこよさは一番わかりやすいし、興味を持つきっかけになる。ビジュアルから入るといっても、興味を持って、「かっこいい」「かわいい」って思ったら、それが本当にいいものかどうかについても、しっかり考えるし、向き合う世代だと思います。見た目だけではなくて、その裏側にはちゃんとしたストーリーがあって、それが伝わるようなものであれば、見てもらえると思うし使ってもらえると思うんですよね。

<石井リナさんプロフィール>

平成2年生まれ。新卒でオプトへ入社し、Web広告のコンサルタントを経て、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。また、デジタルプロモーションなどのテーマを中心にライターとしても活動を広げている。現在はリアルイベントにおけるSNSプロモーションを中心に行うSnSnapにて、自身が編集長を務めるオウンドメディア「COMPASS」を立ち上げ、運営中。2016年3月に出版された『できる100の新法則 Instagramマーケティング』を共同執筆し、セミナーや講演なども行う。学生時代より雑誌『ELLE girl』のラボプロジェクトにてリアルイベントの企画や運営に携わるなど、若年層マーケティングを得意とする。