「救急ヘリを呼べ」観光客のモラルに、沖縄・竹富島の医師が「疲弊」訴え

「内地の病院の様に、全てが揃っている訳ではありません」「観光客の皆さんは、各離島の状況をよく知った上で、宿泊してもらいたい」

沖縄・竹富島でたった1つの医療機関、竹富町立竹富診療所が、一部の観光客が無理な要求をしてくることで「スタッフが疲弊している」とFacebookで悲痛な訴えをしている。投稿した診療所の唯一の常勤医、石橋興介さん(38)は、ハフポストの取材に対して、「離島の医療資源は限られている。出来ないことが多いことを理解して、マナーを守って欲しい」と話した。

石橋さんがFacebookに投稿したのは2017年7月25日。

「船をチャーターしてほしい」「ヘリを呼んでほしい」「専門医がいない、薬剤がないのはなぜ」と診療内容に対してクレームをつける患者がいるとして、「内地の病院の様に、全てが揃っている訳ではありません」「観光客の皆さんは、各離島の状況をよく知った上で、宿泊してもらいたい」としている。

ハフポスト日本版では、投稿した医師の石橋さんに、現状について聞いた。

——投稿されたような観光客のモラル問題はいつ頃から浮上したことなのでしょうか?

実はずっと歴代の医師が同じ悩みを抱えています。石垣島から一番近い離島で、島の規模に対して非常に多くの観光客が訪れるからです。

——どんな患者さんに困っておられますか

日中は、白砂の道を自転車で走って転んだ、であるとか、熱中症などによる脱水症状などの訴えが多いですね。これは注意すれば防げる可能性があります。

投稿したような、軽症にも関わらず「船をチャーターしてほしい」「ヘリを呼んでほしい」という無理な訴えがあるのは主に夜間です。高級リゾートに宿泊していて「金ならあるんだ」と言う人もいましたし、軽症なので緊急搬送などは不要と診断しても「あなたは(特定の病気の)専門医じゃないから信じられない」となじられたりしたこともありました。

——ちょっと信じられないような事態ですね...

万一、命に関わるような事態には、船などでの救急搬送も不可能ではありません。しかし、観光客の方には、離島はリスクだということを知ってもらいたい。限られた医療資源を大切に使うために、観光で来る方にも理解とマナーが大切です。

私がもう1つ訴えたかったことは、島の人たちは診療所を維持するために我慢している、ということです。

島の人たちは医者がいなくて、不安な苦しい暮らしを強いられた経験がありますから、無茶なことは言いません。週末に体調を崩しても、迷惑をかけてはいけないと診療所に連絡せず、「よく我慢したな」と思うような方さえいました。

島の診療所は本来、そういう島の方たちの健康を維持するためにあって、私もそのために働いているんです。

竹富島と医療

竹富島は石垣島から高速船で約10分。昔ながらの沖縄の町並みが残る島として近年、人気が高まっている観光地だ。

島の人口は364人(2017年1月末)。これに対して観光客は年間約48万2000人(2016年)が訪れる。1989年の約8万6000人から5倍近くに増えており、観光の環境は激変した。

島で唯一の医療機関である町立竹富診療所は、2009年4月〜2011年4月の2年間、2014年7月〜2015年3月までの9カ月間、常勤医が不在だった。

福岡県内の医療機関に勤務していた石橋さんが2015年の4月に常勤医として着任し、現在は医師、看護師、事務職員の3人で診療所が運営されている。夜間の急患の際には3人に加えて、ボランティアの消防団員が駆けつけることになるという。

石橋さんは診療以外にも、65歳未満の死亡率が高いなどの健康課題を解決するため、島をあげての予防医学活動に取り組んでいる。

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