クレジットカードのアメックス、始まりは運送業だった!? 100年以上にわたって変化し続けてきたカード会社が目指す「本物のサービス」とは

2017年07月31日 16時00分 JST | 更新 2017年08月23日 05時18分 JST

「アメックス」の愛称で知られるアメリカン・エキスプレスといえば、クレジットカードの草分け。だが"エキスプレス(急行列車)"という社名が象徴するように、もともとは貨物を運ぶ運送業者として開業したことはあまり知られていない。

そのルーツは167年前、ゴールドラッシュに沸くアメリカ。業態を変化させながら、時代を先駆けるサービスを提供し続けてきた「企業哲学」は何か、そして今動きつつある革新的な「本物のサービス」とは、一体どんなものなのか、ひもといていこう。

■成功の秘密は「金脈」ではなく「人」にあり。ゴールドラッシュから始まったビジネス

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創業当時、貨物を運んでいた馬車。

アメリカン・エキスプレス(American Express)の歴史は1850年、アメリカ・ニューヨーク州にさかのぼる。当時アメリカは「ゴールドラッシュ」のまっただ中。1848年にカリフォルニア州サクラメントで砂金が見つかったことをきっかけに、一攫千金を夢見る30万人ほどの人々が一気に西部を目指した。

人が大勢動けば、モノの流れも加速する。独自の視点でそこにビジネスチャンスを見出したのが、アメックスの創業者であるヘンリー・ウェルズ、ウィリアム G・ファーゴ、そしてジョン・バターフィールドの3人だ。

彼らは「金脈」そのものではなく「そこに集まる人々」に着目。すでにそれぞれ運送会社を営み、ニューヨーク周辺路線の事業でしのぎを削っていた3人は、東部—西部間で貨物や人を運ぶ需要が高まると見込み、合資会社を設立した。

見込みは的中し、アメックスはゴールドラッシュの採掘者たちにとって欠かせないサービスに。事業が軌道に乗ると、さらに「スピード」と「安全性」で顧客の満足度を高めることを目指し、社名のもととなった急行列車(エキスプレス)を使った貨物の運送を開始。「人よりも先に荷物が現地に着く」というサービスは今でこそ珍しくないが、当時の人々を驚かせた。

また、今より治安も悪く、輸送手段が不安定だった時代において、強盗やハリケーンで貨物が被害を受けても全額保証するというサービスも支持され、圧倒的な信頼を得ることに成功した。

■時代のニーズをいち早く察知し「金融業」「旅行業」へ進出

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1920年代のパリオフィス。ヨーロッパで暮らすアメリカ人のサロンのような役割も果たしていた。アーネスト・ヘミングウェイやスコット・フィッツジェラルドなどの姿もあったそう。

ゴールドラッシュが過ぎ去った後は、人、物だけではなく「マネー」の輸送にも着目。「簡易で安全な送金」が世の中のスタンダードになると予測し、1882年には世界初となる「マネー・オーダー(郵便為替)」の取り扱いを開始した。これが、アメックスが金融業に乗り出すきっかけとなる。

さらに海外へ渡航するアメリカ人の急増を受けて旅行業にも進出し、1891年には海外渡航者向けの小切手「トラベラーズ・チェック」を世界で初めて発行。「キャッシュレス」という新たな時代の扉を開けた。

運送から旅行、金融へ。卓越した先見性と柔軟な対応力で、業態を変えながら成長したアメリカン・エキスプレスは、20世紀の幕開けとともに事業基盤を広げ、パリやロンドンから香港、マニラとヨーロッパ、アジアにも進出していく。

1958年には「キャッシュレス」の新しい形として、現在のビジネスにつながる「クレジットカード」の発行を開始。各国に築き上げたネットワークを強みに、世界有数の企業へと成長していった。

■100年間"本物のサービス"で人々をサポートしてきた日本オフィス

アメックスが日本に初進出したのは、今からちょうど100年前の1917(大正6)年。場所は当時の横浜港だ。

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横浜に開業したばかりの頃の、アメックスの日本オフィス。

日本オフィスは当初、主に海外からの旅行者のサポートを目的として設立された。100年前のアメリカ人向けパンフレットを見てみると、船旅で2週間かけて日本へ向かい、トータル2ヵ月間滞在するプランが提案されている。欧米とは異なる文化、オリエンタリズムに魅せられ、はるばる日本を訪れたアメリカ人も少なからずいたようだ。

戦後には、アメリカ人向けの旅行業から、日本人に向けた金融サービス業へとシフトしていく。1974年には日本人の海外旅行ブームに先駆け、日本円のトラベラーズ・チェックを発行。1980年には初のゴールド・カードを発行し、次第に日本人にとっても馴染みの存在となっていった。

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20世紀初頭に発行された、日本旅行の案内。

アメックスの創業167年の歴史も、日本における100年の歴史も、顧客のニーズをくみ取り、その時代ごとに求められる価値あるサービスをさまざまな形で提供し続けるというイノベーションの連続であると言える。

2014年から日本支社を率いる清原正治社長も、「『グローバル・サービス・カンパニー』としての誇りこそが、アメリカン・エキスプレスのDNAだ」と語る。

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「見かけのお得さやポイント還元率の高さといった表層的なものだけでは、長くは続きません。きめ細やかな本物のサービスを提供することが真にお客様のためであり、同時に我々のためでもある。そのことを、身をもって知っていることが弊社の強みといえるでしょう」(清原社長)

"本物のサービス"へのこだわりは、特に有事の際に顕著な形となって現れる。例えば、1914年の第一次世界大戦の勃発時には、迅速なサービスによって数千人のアメリカ人旅行者を救い出している。

ヨーロッパの銀行が軒並み停止する中、現金をおろせずロンドンでパニックを引き起こしかけていた旅行者たちのため600万ドル相当の金をかき集め、それらをすべて換金。トラベラーズ・チェックを速やかに換金し、帰国便のチケットを購入できるようサポートした。

日本では2011年の東日本大震災時、すぐさまカード履歴の照合を開始。東北エリアにいる可能性があったカード会員全員の安否を確認した。

さらに「子どものランドセルが流された」という家庭にはランドセルや文房具を送り、帰国を希望する旅行者には、飛行機のチケットを手配。「カードを読み取る機械が壊れた」という店舗では、アメックスのカード情報を提供するだけで10万円まで利用できるようにした。

■「キャッシュレス」の向かう先「コンタクトレス」へ。アメックスのサービスは日々進化し続ける

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長年の歴史の中できめ細やかなサービスを守り続ける一方で、未来を見据えて新技術やサービスも積極的に取り入れている。清原社長は次のように語る。

「アメックスの創業167年の歴史には、常にお客様に卓越したサービスを提供するために、自らを変革し続けていくという企業精神が存在するのです。これまでの100年も、そしてこれからも、お客様に向き合い続けながらサービスを日々進化させていきます。

現代において、お客様はこれまでより利便性を追求したデジタル・サービスを求めています。そのニーズを受け、トラベラーズ・チェック、クレジットカードと展開してきた『キャッシュレス』なサービスは、新しい時代を迎えています。

私たちは現在『Apple Pay』や、カードをかざせば世界中でピッと支払いができる『コンタクトレス』技術を内蔵したクレジットカードの普及を進めています。新しいテクノロジーにいち早く対応することで、国内でも海外でも、お客様により快適な生活を送ってほしいと思っています」

時代の変化を敏感にキャッチし、時には業態を変えながら安心と信頼を携えスピードを持って多様なニーズに応えてきたアメリカン・エキスプレス。世界で167年、日本で100年かけて築き上げてきた"本物のサービス"は、これからも進化を続ける。

(取材・文:阿部花恵 / 撮影:西田香織)

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アメリカン・エキスプレス」は、世界で最も尊敬されるサービスブランドを目指します。