韓国のキム・ギドク監督、ベッドシーン強要・暴行疑惑を釈明 「約4年前のことで...」(全文)

鬼才として知られる韓国の映画監督キム・ギドク氏が、出演者にベッドシーンを強要・暴行したとして告訴された。
VENICE, ITALY - AUGUST 27: Director Kim Ki-duk attends a portrait session for his film 'One on One' during the 71st Venice Film Festival on August 27, 2014 in Venice, Italy. (Photo by Franco Origlia/Getty Images)
VENICE, ITALY - AUGUST 27: Director Kim Ki-duk attends a portrait session for his film 'One on One' during the 71st Venice Film Festival on August 27, 2014 in Venice, Italy. (Photo by Franco Origlia/Getty Images)
Franco Origlia via Getty Images

韓国の映画監督キム・ギドク氏が、映画の撮影中に出演女優に暴行およびベッドシーンを強要したとして、刑事告訴された。8月3日、AFP通信などが報じた。

被害を訴えた女優の身元は公表されていない。ソウル中央地検に提出された告訴状によると、女優(Aさん)は2013年に公開されたギドク監督の映画『メビウス』で母親役を務めるはずだった。しかし、ギドク監督が役にのめり込ませるためAさんの頬を叩き、当初台本にはなかったベッドシーンの撮影を強要したという。

結果的に、Aさんは映画を降板した。

東亜日報によると、Aさんは映画から降板したあと弁護士に法律相談をしたが、自身のキャリアで不利益を被ることなどを恐れて告訴を諦めた。しかし精神的な傷が癒えず、2017年はじめに韓国の映画産業労働組合(映画労組)を訪問。ギドク監督の暴行疑惑について証言し、ソウル中央地検に告訴状を提出したという。

■鬼才として国際的に評価が高いキム・ギドク監督

キム・ギドク監督は、韓国の東南部・慶尚北道生まれの映画監督、脚本家。センセーショナルな作風で知られており、国際映画祭を含め、これまで数多くの映画賞を受賞した経歴を持つ。代表作は『悪い男』(2004年日本公開)、『サマリア』(2005年)、『嘆きのピエタ』(2013年)など。

2004年に『サマリア』でベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。また、2012年には『嘆きのピエタ』でベネチア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受賞している。

被害を訴えている女優が出演する予定だった『メビウス』は、夫の不倫に苦しむ妻が息子の性器を切り落とすという壮絶なドラマを描いた作品で、韓国では上映制限がかけられた。

ベネチア国際映画祭でのキム・ギドク監督

■「4年前のぼんやりした記憶では」...

今回の一件について、ギドク監督はAさんの証言について「誤解がある」とコメントしている。ギドク監督が発表した声明全文は以下の通り。

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その女優(Aさん)とは1996年から一緒に映画制作を始め、長い間友人のように過ごし、私が海外で賞を受賞したあと、数回に渡って懇々と出演要請をしてきました。2004年にベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した後にも、再度出演を頼んできました。

『時間』(2005年)でキャスティングの提案をしましたが、役が気に入らないと断られ、2012年にベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞後、再び出演させてくれないかと頼まれました。『メビウス』での出演を依頼しましたが、約2回の撮影で、出演を放棄し一方的に連絡を経たれました。

3回目の撮影現場には、午前10時まで待っても彼女は現れず、撮影現場に来るよう要請しましたが、結局来ませんでした。製作費用が厳しいこともあり、すでにキャスティング済みだった役者を一人二役になるよう急遽シナリオを修正し、撮影を終えました。

その後、4年が過ぎ、このような状況になりました。

その他の部分については、理解し難く、暴行を加えたという点については以下のように説明したいと思います。

撮影日初日に撮影したのは殴り合いが発生するひどい夫婦喧嘩のシーンでした。4年前のぼんやりした私の記憶では、私は撮影をしながら相手役の視線に立って役者を叩いたり、または自分の頬を自分で殴りながら、「この程度してくれれば良い」と指導しましたが、約4年前のことで正確な記憶ではありません。

作品の事実性を高めるため、役者の立場になろうと集中して生じたことであり、多数のスタッフが見守る中、個人的な感情は全くありませんでした。

それでも、スタッフの誰かが当時の状況を正確に証言すれば、映画人としての自身の立場を考え直すと同時に、私の過ちについて責任を負います。

暴力以外の点については、シナリオにあるシーンを撮るため、監督として最善を尽くす過程で生じてしまった誤解だと思います。

とにかく、この件で傷を負ったAさんに対して、心から謝罪いたします。

それでも、どんな役でも最善を尽くすと出演を数回懇願され、2度も出演を依頼し、一緒に良い映画を作りたかった思いですが、今このような状況になって残念に思っております。

最後に、今回の件で、レベルの高い映画を作る韓国映画業界のスタッフと役者らについて誤解が生じないことを願います。また、私を信じて『人間の時間』(2017年に撮影された同監督の新作)に参加してくださったスタッフ、役者たちに対して、大変申し訳なく思っています。

■映画労組の委員長「現場にいた人々からも証言があった」

一方、映画労組のアン・ビョンホ委員長は、「キム・ギドク監督によって暴行がなされたのは事実で、周辺の状況により立証されている」とし、「役者から合意はなく、映画を作るために強要があった」と説明している

「(ギドク監督は)『数年前のことで記憶はない』と述べているが、現場にいた人々からも証言があった。実際に暴行やベッドシーンの強要があったという事実は否定できないだろう」と強調した。

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