日本では当たり前の地下鉄の乗車位置表示、ロンドンで導入したら市民から悲しみの声

「20年かけて培った専門知識が台無しになった」

ロンドン市営地下鉄の駅のホームで7月、電車の乗降位置を示す緑のマークがテスト的に導入された。日本では当たり前になっている乗車位置表示だが、ロンドン市民からは悲しみの声も上がっているという。一体どういうことだろうか。

市交通局によると、乗車位置表示が導入されたのは、市民地下鉄のキングス・クロス駅。最も混雑する駅の一つと言われており、ラッシュ時の混雑緩和が目的でテスト導入された。

しかし、長年地下鉄を利用している人からは、電車を待つための最適な位置を探すために努力してきたのに、このマークによって無駄になったとする声も出ている。

デジタルスポーツコンサルタントのダニエル・エアーズ氏は9月12日、Twitterに、「20年かけて培った地下鉄についての個人的な専門知識と、通勤における競争優位性が、緑のペンキのせいで台無しになった」とつぶやいた。

このつぶやきは17日正午現在で、約4万のいいねがつくとともに、1万3000回以上リツイートされた。「解る」「唯一の解決方法は、緑のペンキを買って、プラットフォーム全体を緑に塗ることだ」などのコメントが相次いだ。

エアーズ氏は反響の大きさに、「そこまで真剣に怒っているわけではない」「ちょっとしたジョークのつもりでつぶやいた」としながら、「忙しいときにどこがドアになるかを知ってたら、ちょっと便利だった」などと、ツイートの真相を明かした。

■専門家は「緑色」に疑問の声

現地夕刊紙「イブニング・スタンダード」によると、この乗車位置は、車両から降りる人の位置を示すもので、市交通局は、この緑のエリアでは立ち止まらないように呼びかけているという。

乗車位置表示に対し、利用者からは「良い考えだ」「浸透するまで時間がかかるのではないか」など、様々な声が寄せられているが、専門家からは緑という色が選ばれたことについて疑問の声も出ている。というのも、緑や青は親しみやすい色であるため、赤や黄色に比べて、人が寄ってきてしまうという懸念があるためだ。 地下鉄の広報担当者は緑を選んだことについて、この色が「進む」を意味する色であることから、人々が緑の線の上を「立ち止まらず」、歩いていくことに期待したという。

テストは9月末まで続く予定。市交通局は今後、監視カメラ映像などから、このシステムが効果的かどうかを検証するという。

■日本のしくみを紹介する人も

東洋経済オンラインによると、海外では列車が決められた停止位置にぴったり停まる方が珍しく、整列乗車の習慣のない国は多いという。

なお、エアーズ氏のツイートには、日本の乗車位置の仕組みを紹介するコメントもついていた。

このコメントには、「窮屈な日本や香港の電車でも、本当にうまくいっている」「私たち(イギリス)の地下鉄は、どちらのドアが開くかという表示もなくて恥ずかしい」などの反応が見られた。

東京メトロによると、日本では終戦直後の1947年に、整列乗車が導入されている。混雑緩和が目的で、当時は係員手製の乗車位置標識を設置。駅長自らが先頭に立って、ホーム上で乗客に案内したことで、整列乗車が実現したのだった。

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