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高橋まつりさんの母「電通社長の言葉を信じることはできません」 違法残業の初公判を受けて会見

山本敏博社長「間違いありません」と起訴内容を認める

2017年09月22日 17時25分 JST | 更新 2017年09月22日 19時30分 JST

大手広告会社「電通」が社員に違法な残業をさせたとして労働基準法違反の罪に問われている事件の初公判が9月22日、東京簡裁で開かれた。

朝日新聞デジタルによると、電通の山本敏博社長は法廷で「間違いありません」と起訴内容を認め、「社長として責任を痛感している。特に高橋まつりさんの尊い命を失ってしまった責任は極めて重い。ご本人、ご遺族に改めておわびし、謹んでご冥福をお祈りします」として、ずさんな労務管理を謝罪した

■「にわかに今日の社長の言葉を信じることはできません」

Kenji Ando
会見する高橋まつりさんの母、幸美さん(厚生労働省の記者クラブ)

この裁判は、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が2015年12月に過労自殺をしたことがきっかけで、電通が東京地検の強制捜査を受けて、略式起訴されたことを契機としている。高橋まつりさんの母、幸美さん(54)は公判を傍聴した後、厚生労働省の記者クラブで会見を開いた。幸美さんは、山本社長の姿勢について「にわかには信じられない」と疑問を呈した。

電通の山本社長は、本日、公訴事実をすべて認め、反省とお詫びの言葉を述べ、新しい電通をつくるとの決意を述べておられましたが、今までも電通は、言葉では様々な計画を立て、文書もつくっていました。それを知っている遺族としては、にわかに今日の社長の言葉を信じることはできません。
娘が入社する前にも、電通は、立派な計画は発表していました。しかし、娘は、土曜日も日曜日も休むことができないほどの業務を担当させられたのです。立派な計画や制度を作ったとしても、本当に実行しなければ、意味がありません。

幸美さんは会見冒頭、このように話した上で、電通の取り組みを「今後も監視していきたい」と結んだ。

■長時間労働の横行「狂った常識の中で回っていた」

高橋幸美さん提供
学生時代にアメリカ旅行した際の高橋まつりさん

幸美さんは法廷で山本社長を見たときの心情について「本当に複雑な気持ち」として、以下のように触れた。

社長が自ら法廷に立たれたときに、私の方を見て頭を下げました。現在も社長に、表明されても謝罪をされても娘が帰ってこないのは変わらないので、この日を迎えたときは本当に複雑な気持ちです。

また公判の中で、電通が違法残業を隠蔽するために本人申告の終業時間と、社内のゲートを通過した退館時刻に1時間以上の開きがあった場合に私用として申告させていた。労基署の是正勧告を受けたあとに、そのようなシステムを電通が採用していたことを問われると、険しい顔で以下のように振り返った。

是正勧告を受けたあとに、社員の健康を考える方向には行かず、働く時間を合法的に増やすという施策の方に持っていたということが暴かれた。私は娘が亡くなった後に、それを知って本当に憤りを持ちました。

さらに、まつりさんが亡くなった後、電通の社内で「長時間働けなくて困る」という残業を望む社員がいることについてどう思うかと問われると、以下のように答えた。

長時間労働で、1人の社員が24時間働かなければいけない業務であれば、2人、3人やれば健康を守りながら仕事が遂行できるはず。それを1人が寝ないでやるのは非常につらい。命にも関わる。本当に全員の社員が好きでやってるのか、それを問いたいと思います。

やってらっしゃる方もいると思いますが、その陰で娘がこういう状況に陥り、『やるのが当たり前』『やらないのが弱い』『モチベーションが足りない』と追い込まれていった状況があるので、日本全体の意識が変わらないといけない。電通の社員の方、クライアントの方、全てが今まで狂った常識の中で回っていたのではないかと思います。

■電通の山本敏博社長「尊い命を失った。その責任は重い」

Rio Hamada
囲み取材に応じる電通の山本敏博社長

一方、電通の山本社長は初公判の直後、司法記者クラブで記者団の囲み取材に応じ、改めて高橋まつりさんに謝罪した。

責任の重さを痛感しています。複数の是正勧告を受けたにも関わらず、労働環境を改善できず労働基準法違反に違反しました。社長として深く認識しています。
ご迷惑をおかけした皆さんに心からお詫びします。特に高橋まつりさんの尊い命を失ってしまいました。その責任は本当に重いものだと思っています。ご本人にもご遺族の方にも改めて心からお詫びを申し上げます。

電通裁判は、検察側が「会社の利益を優先し、労働者の心身の健康を顧みなかった」として罰金50万円を求刑して結審した。判決は10月6日を予定している