大学院で学びながらお金もらえるの? 地域おこし研究員とは

新しいキャリアの選択肢

・地方創生に関心がある。

・本当は地方で暮らしたいけど、仕事のある都市で働いている。

・社会人を経験して、大学院で学びたくなった。

そんな人に朗報だ。

慶応大学湘南藤沢キャンパスのSFC研究所「社会イノベーション・ラボ」(SIラボ)と大学院政策・メディア研究科「社会イノベータコース」が10月、全国の自治体などと共同で「地域おこし研究員」プログラムを開始した

このプログラムでは、大学院で専門分野を研究しながら、任用された地方の自治体や企業、団体で働きながら報酬をもらい、地方創生の実学を学ぶことができる。講義は、遠隔でeラーニングで受講しながら、月に2〜3回はキャンパスで対面で指導を受けるという。

現在、募集中の地域おこし研究員には、新潟県三条市の「スポーツでまちづくり」や広島県神石高原町の「高校魅力化プロジェクト」のほか、鹿児島相互信用金庫が「地域・企業と連携し、地域おこし」などがある。業務委託での雇用で、報酬は案件によって月額18万円や年間200〜230万円となっている。

SIラボの玉村雅敏教授は、ハフポスト日本版に対し、この取り組みの意義について「社会の課題を、最先端の研究をしながら、現場でトレーニングしていく。地域おこし研究員は、地域に任用されてプロとして実学を学びながら、大学院生として研究者としても学べる」と説明する。

Kaori Sasagawa

■地域おこし研究員「次のキャリアにつながる」

10月1日から「地域おこし研究員」第1号になった太田良冠さんは、すでに鹿児島県長島町で1次産業と飲食店をつなげる商談会やフェアを開催したり、大手調理学校とも提携して食の発信する活動をしている。長島町の人たちとは、お互いに学び合い新たなイノベーションも起きているという。

太田さんは、新たに大学院で学ぶ理由について「将来、事業がやりたいので、相談できる人脈、仲間が欲しい」と率直に語った。地方で働くことはハードルが高くなかったのか。太田さんは「移住は、ただの手段。実際、手続きは5分で済みます(笑)。地域での活動が、次のキャリアにつながります」と話した。

Kaori Sasagawa

取材に同席した土井隆さんは、自らITの会社を経営しながら、長島町で地方創生総括監として働いている。土井さんは、地方で働いてみて「サラリーマンだったときは、会社のミッションと自分のやりたいことがイコールではなかった。都会でくすぶっている人には『地方』という選択肢もある。自治体は、(外の人に)入ってきてもらいたいと思っている」と語った。

Kaori Sasagawa

■「最先端の課題は地方にある」新しいキャリアのかたち

玉村さんは、「自分で挑戦し続けられること。最先端に何かを加えて創造すること。それが研究です」と話す。全国の地域と共同で取り組みを進める秘訣については「一緒にやれるパートナーかは、まずはやりながら考えていくこと。共感し合って、どうしたら動くのか考えること」などと語った。

「地域おこし研究員」の説明会には、20代の若手から30〜40代の社会人が参加している。都市部だけでなく地方からの参加も多いという。

「最先端の課題は地方にある」といわれる。仕事を辞めて大学院で学ぶのは心理的にも金銭的にもハードルが高いが、「地域おこし研究員」であれば、研究しながら働き、次のキャリアを見据えることができる。これからの新しいキャリアの選択肢にしてもいいだろう。

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