10連休に、ひとり勉強する学生たち 韓国の予備校街から

「親の顔を見るのもなんだか申し訳なくて…」

韓国には日本のお盆にあたる「秋夕(チュソク)」という行事があり、毎年旧暦の8月15日とその前後3日間が休みとなる。

今年は10月4日が「秋夕」当日だが、祝日などが重なり、9月30日〜10月9日の10日間の大型連休となった。

この時期は大半の人が里帰りをする。さながら「民族の大移動」だ。

多くの人が帰省し閑散とする都心とは異なり、ソウル南部の鷺梁津(ノリャンジン)の予備校街は各種試験を準備する学生でにぎわっている。

■連休にも休めない...試験を控える学生の声

もちろん受験生は休みを味わうことなく、合格に向けて静かに走りつづける。鷺梁津一帯は、世間の連休ムードとは程遠い雰囲気だ。周辺のカフェには、「おひとり勉強族」の姿ばかりだ。

今年の鷺梁津は尚更、連休らしさがない。というのも、政府は公務員の雇用拡大方針をすすめており、それを受けて学生たちは追加採用の試験に望むべく準備しているからだ。資格予備校も連休に合わせて、特別講座を設けている。

公務員の追加採用試験に備えて準備中の女性(26)は、今回のお盆は里帰りしない。

韓国のお盆は、親戚が本家に集まり、祭事をとりおこなうのが一般的だ。

彼女の実家は、一族の中心である「本家」だが、親戚が揃った席での近況報告はなんとなく重荷で、居心地も悪いという。

鷺梁津には、時間とお金のない受験生が早く、安く食べられるような屋台がたくさん集まっている。

名節料理(お盆に食べるご馳走)の代わりに、屋台で買った簡素などんぶりごはんで食事を済ませた。それでも、里帰りするよりは気が楽だという。

「家族は私と会いたがっているし、両親も、里帰りして数日休むのはどうかと提案してくれた。でも、行かないことにした」

「連休の間、一人暮らししている部屋で1〜2日休むので満足して、勉強に専念しようと思っている」

彼女はこう話す。さらに、こう付け加えた。

「実家に行って親戚に会っても、勉強はどうなっているかとか、些細な質問もなんとなく負担に感じ、周りの目が気になる」

「合格してから親戚に堂々と会うのがもっと良いと思った」

「センター試験 D-47」の文字が踊る。
「センター試験 D-47」の文字が踊る。
News1

ある男性(28)も「実家に向かうのにかかる時間もそうだが、旅費の負担が大きい」「両親が何か圧をかけたりするわけではないが、親の顔を見るのもなんだか申し訳なくて...。今回の秋夕には一人で充電でもして、勉強する機会にしようと思う」と明かした。

政府は今年の7月、5年間で公務員17万4000人を追加採用すると発表した。採用人数は増えたが、その分多くの人が公務員試験に新たに挑戦するため、競争率は大幅に変わっていない。

9月23日、2017年の地方公務員7級公開採用筆記試験には、計2万8779人が志願した。筆記試験を通過できる人数は222人。倍率は129.6倍で、ここ5年間に実施した試験のうち、最も高い競争率だ。(週刊東亜 10月4日

*地方公務員7級は日本の地方中級公務員と同程度とされる。

12月末から始まる大学編入試験を準備している男性(25)は「連休中に里帰りしても、他の学生は勉強をしているだろうなと思って気になりそう」「競争率が高いことで有名な編入試験を突破するため、弱点を克服する自習時間のつもりで過ごす」とした。

浪人生向けの予備校も、約40日後に迫ったセンター試験を準備するため、お盆を返上して勉強する学生でにぎわっている。

浪人中の女性(20)は実家がソウルだが、連休中は休むことなく予備校で勉強をしている。「家族は田舎に行ったが、勉強をするためソウルに残った」「リズムが乱れるため、(連休は)遊ばないと思う」と話した。

ハフポスト韓国版から翻訳・編集しました。

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学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。

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