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総選挙で問われる「野党の立ち位置」と20年前、幻に消えた「保保連合」

20年前の国会で野中広務氏が警告した事態になだれこむ危険性を感じます。

2017年10月07日 17時48分 JST | 更新 2017年10月07日 19時33分 JST
時事通信社
駐留軍用地特別措置法(特措法)改正案について新進党の小沢一郎党首(左)との会談に臨む橋本龍太郎首相(中央)(東京・首相官邸) 1997年04月03日

10月10日、いよいよ衆議院の総選挙が始まります。

安倍首相が突然の「解散・総選挙」を決断したのも、野党第一党民進党の混迷と、小池新党のもたつきぶりを見て、「臨時国会冒頭が好機」と計算したものだったのでしょう。「人づくり革命」や「国難突破」を呼号しながらも、「真摯で丁寧な説明」をしようと反省したのも束の間、「国会論戦からの逃走」は身勝手なやり方そのものでした。

長すぎる国会夏休みと「宿題未提出」解散 (『太陽のまちから』2017年9月25日)
ようやく3カ月の休みを終えて臨時国会を召集しながら、首相の所信表明も、外交・財政・経済の重要政策分野の演説や報告もなく、与野党の代表質問も答弁もなく、冒頭で何もやらずに解散します。もちろん衆参両院の予算委員会での質疑もありません。何一つ議論をしないなら、「臨時国会開催要求」に応えたことにはなりません。国会では誠実に議論すると言いながら、「宿題未提出」「約束不履行」に他なりません。「反省」「謙虚」「丁寧」からかけ離れた真逆の姿勢です。

今回の突然の「解散」という政治手法そのものも、総選挙の争点のひとつです。「数の力」の上にあぐらをかいて、法案に説明のつかない矛盾があったり、論理的破綻があっても、意に介することなく「強行採決」で締めくくるという「問答無用の政治手法」で、共謀罪(組織的犯罪処罰法改正案)も成立させました。国際社会の強い要請だと言いながら、国連関係者からの警告には耳をかさない傲慢な態度は、安倍政権の本質をうかがわせるものでした。

「共謀罪」法に再び警鐘。国連特別報告者 (『報道ステーション』2017年10月3日)
7月に施行された"共謀罪"法に懸念を示す国連特別報告者のジョセフ・カナタチ氏が1日に来日した。カナタチ氏は3日、「"共謀罪"法でプライバシーが損なわれるリスクは増えた。日本の政府高官は、"共謀罪"法を慎重に運用していると発言しているものの、それを監視する機関はどこにあるのか」と改めて警鐘を鳴らしている。また、「日本政府には、国民のためになる保護措置を導入してもらいたい」としている。

過去3回、廃案となった与野党間の論戦のさなかにあった私は、今年の通常国会の議論に呼応しながら連続してブログで問題点を列挙していきましたが、民進党等野党は予算委員会の段階から多面的に問題を掘り下げて、「テロ等防止罪」という呼称は国民的錯誤を意図した虚飾にすぎないことを明確にしてくれました。一方でこの春は、「森友学園」と「加計学園」も大きくクローズアップされ、安倍首相は苦境に立ちました。ついこの間まで、「安倍一強」と呼ばれた政権は、国会論戦により揺さぶられました。国会での野党の役割を久しぶりに見せた場面でもありました。

ところが、私には一抹の不安があります。国会の構図が、「与党対野党」から「現在の与党」と「与党に近い政党」が連立するか、連携して連携して大きな勢力になり、「超巨大与党連合」が出来上がることです。「2017年通常国会」での与野党の攻防と論戦が、二度と行われなくなることへの危惧を持っているのです。

1997年4月11日、衆議院本会議の演壇で自民党の野中広務幹事長の甲高い声が響きわたりました。私は半年前に初当選した議員として、議場の前方で真剣に耳を傾けたことを覚えています。

「この法律がこれから沖縄県民の上に軍靴で踏みにじるような、そんな結果にならないことを、そして、私たちのような古い苦しい時代を生きてきた人間は、再び国会の審議が、どうぞ大政翼賛会のような形にならないように若い皆さんにお願いをして、私の報告を終わります」

この法律とは、駐留軍用地特別措置法改正案。1996年の使用期限が切れていた「象のオリ」と呼ばれていた米軍の楚辺(そべ)通信所の使用期限を特措法改正で使用可能にしようとするもので、この時に野中広務氏は特別委員会委員長として委員長報告を終えた後で、「ふたたび大政翼賛会のような形にならないように若い皆さんにお願いしたい」と付言したのでした。

当時、橋本龍太郎政権は、自民・社民・さきがけの3党連立政権でした。社民党は閣僚を出さない閣外協力の連立与党でありながら、この法案に反対しました。一方、小沢一郎氏率いる新進党は自民党に理解を示して賛成、結党間もない民主党も賛成にまわったので、圧倒的多数で法案が成立する直前に出てきた「大政翼賛会」という言葉でした。新進党は野中発言に怒り、ついに議事録から削除してしまいました。野中演説の後の採決で、衆議院本会議で9割の議員が起立した光景は忘れられません。圧倒的多数でした。

当時の新聞には、「保保連合」という言葉が頻繁に登場しました。小選挙区比例代表並立制が導入された最初の選挙として行われた1996年10月の総選挙で、新進党は361人を擁立して156議席を獲得しましたが、政権獲得に至りませんでした。一方で自民党も単独過半数に届かず、自社さ政権が存続することになりました。国会が始まると櫛の歯が抜けるように、新進党を抜けて自民党の議席に移る議員が続出していきます。私は、その一部始終を見続けていました。 1997年12月、新進党は解党して「保保連合」は幻に終わりました。議席の大半を巨大与党が圧するかもしれないとの畏れは、当時もあったのです。

10月2日、私は枝野幸男氏の立憲民主党旗揚げの記者会見を聞きながら、総選挙の対決軸を記しました。

「排除の論理」はなぜ心を打たないのか 10月総選挙大波乱へ(『太陽のまちから』2017年10月2日)
基本軸は、今回の解散・議論封印も含めた「安倍一強政治」と呼ばれる強権的な政権運営に対しての審判です。もうひとつの軸は、「改憲に賛成」「安保法賛成」という共通項を持った自民党と第2保守政党に対して、強く対抗する寛容な保守リベラルから野党共闘までという選択肢です。

希望の党を第2保守政党と位置づけました。この間も、小池都知事自身が語っていることは、「保守対保守」のステージを意識したものだと受け止められます。先のブログでは「排除の論理」に焦点を当てましたが、これとは逆に「排除しない」という発言に注目しました。

希望の党:自民と連立排除せず 小池氏、安倍政権とは対決 -2017年10月6日 毎日新聞
希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は5日、衆院選(10日公示、22日投開票)の対応をめぐり、民進党の前原誠司代表と東京都内で会談した。前原氏は小池氏に衆院選出馬を要請したが、小池氏は「考えていない」と固辞した。小池氏は会談後、記者団に選挙後の首相指名について、自民党が社会党委員長(当時)の村山富市氏を首相候補とした例をあげて「水と油で手を結んだこともある」と述べ、自民党を含め他党との連立を排除しない考えを示した。

「安倍政権と対決する」とした上で、選挙後に「自民党と連携する可能性」について言及しているところに注目したいと思います。1994年の「自社さ連立・村山富市政権」の例もあげていますが、自民党と社会党が連立した時ほど、自民党と希望の党の政治的距離はぐっと近いように見えます。「政権交代」に言及しながら、「選挙後の与党との連携」に対して野党党首がこれほどに踏み込んだ例を私は知りません。選挙後の国会の姿を決めるのが今回の総選挙ですが、20年前の国会で野中広務氏が警告した事態になだれこむ危険性を感じます。

ずばり国会の機能喪失についての畏れです。国権の最高機関としての国会が、機能を失わないためには、政権与党を弛緩させない野党勢力が必要です。 しかも、一定の議席数を確保することが重要なのです。

解散直前に浮上した旗揚げしたばかりの「希望の党」への民進党の合流は、大胆な「政権交代」をめざす「野党結集」にも見えましたが、どうやら自民党との連携も「排除しない」(小池希望の党代表)という発言から、当初とは別の姿が見えてきます。総選挙で自民党・公明党が過半数を割った場合に、選挙後の首班指名をめぐって「新たな連立劇」の可能性さえ想像させます。 また自民党・公明党が過半数を制し、希望の党が自民党に次ぐ勢力となった場合に起きることも考えてみたいと思います。

国会運営の上で議席数は決定的です。多数派が与党となり、少数派が野党となります。自民党が「単独過半数」で政権運営ができた時代は終わり、「連立の時代」が始まってから、「連立与党の議席数」で過半数を制することが政権存続の条件です。それでも、与野党の議席差が僅差で拮抗する場合には「与野党伯仲」となり、与党側も野党に神経を使いながら、国会運営にあたることになります。

今年の通常国会で「傲慢不遜な国会運営」「力づくの強行採決」等が問題となったのも、自民党・公明党が絶対的多数派であり、野党でありながら政権に協力的な維新を含めれば、野党は民進・共産・社民等の少数勢力となっていることが基本となっています。ぎりぎりの時点で立憲民主党が発足したものの、選挙結果次第では、野党勢力はさらに少数に追いこまれる危険性もあります。

国会で何を審議するかは、各委員会の理事会で決めます。解散前の国会でも、この理事会で野党を代表する理事は少数ですから、共謀罪審議のように理事会で委員長の職権で多数決によって、どんな内容・日程でも強行突破することが可能となっていました。さらに、与党と与党に理解を示す党が力をあわせて、解散前の国会以上の多数派を形成してしまうと、少数野党の声は「聞き置くのみ」となります。

国会運営は与党の意のままとなります。解散前も、予算委員会を開催して、問題となっている「森友学園」や「加計学園」問題を究明することに与党は後ろ向きでした。野党の議席がさらに減少すると、与党にとっても「力づくの国会運営」は不必要になります。すべて政権与党の予定通りに物事は進み、国会での議論の機会も減少します。さらに、野党の質問時間は無残に削られることも起きかねません。

国会の委員会審議等での質問時間は、議席数で配分されます。単純に議席比率で割り当てると、野党の質問時間は短時間となるので、民進党等の野党第一党が与党側と交渉して、与党3割、野党7割と野党全体の質問時間を確保した上で、議席の少ない野党にも一定の質問時間を確保していました。

予算委員会の中継でわかるように、与党質問は「ヨイショ質問」になりがちです。与党としては、なるべく早く予算や法案を通過させたいので、大きな問題点を指摘したり、隠されてきた矛盾を暴露することもありません。もし、野党側の質疑が極端に削減されていたら、大きな関心を呼んだ共謀罪の議論も、「森友学園」「加計学園」問題等に社会的な関心が集中することもなかったと思います。

総選挙にぎりぎり滑り込むことになった立憲民主党は、安倍政権と対決し、野党結集をはかる機運を推進力にして、総選挙直前の絵図を大きく塗り替えました。自民党を中心とした政権を倒しても、その亜流に置き換わるだけでは質的な変化はありません。まずは、野党が野党としてチェック機能をはたし、次の社会に向けたビジョンを描くことが重要です。

これまでの政党のツイッターと比較すると、短時間の桁違いなフォロワー増加の勢いは何を物語るのでしょうか。立憲民主党に派手な話題性はない一方で、地道に堅実に政策を議論する良質な政党に育っていくことを願ってやみません。

時間は限られていますが、論戦の機会でぜひ「国会機能と民主主義の喪失」の危機が近づいていることを明らかにして、中道保守からリベラルまでで広大な政治空白をきちんと埋めていくことで、政治が再生に向かっていくことを希望します。