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彼女はなぜ、男たちにメイクをするのか? 始まりは顔へのコンプレックスだった

「メイクは面倒。でも私にとっては、人生を前向きに明るく生きるツール」

2017年10月12日 11時39分 JST | 更新 2017年10月18日 17時52分 JST

男性にメイクをするなどして女装を体験してもらう店が大阪にある。「女装紳士」。1人で切り盛りする女性経営者、IMAさん(27)は「価値観が変わる」と話す。

そもそもメイクは何のためにするのか。より美しくなるため?社会人としてのエチケット?それとも...。IMAさんと改めて考えてみた。

Kazuhiro Sekine
インタビューに応じるIMAさん=大阪市

―男性専門のメイクサービスは聞いたことがありません。始めたきっかけは?

小さいころから絵を描くのが好きで、大阪市内にある美術系の高校に進学しました。卒業後の進路は美大に行くことも考えたのですが、才能に自信がなかったし、知人から「将来は美術の先生になるしかないよ」なんて言われて。思いとどまって、メイクの専門学校に進んだんです。

メイクアップアーティストを目指したんですが、実際になった人から「最初の3年間は無給。親の仕送りが頼み。これが普通」と言われて一度は断念しました。

専門学校を卒業後、「自分にはやっぱり絵しかない」と思い直し、現代画家のような真似事をしていました。しかし長続きはせず、ショップの店員や介護施設のスタッフなどの職を転々としました。

介護施設の仕事は重労働で、おじいちゃんを持ち上げたり、立ちっぱなしだったり。腰が痛くなってつらくてやめました。

そんなとき、画家時代の知り合いの男性から、女装するのを手伝ってくれと頼まれたんです。共通の男友達と久々に会うので、「サプライズ」なことをしたいというのが理由でした。

男性にメイクをするなんて初めてで、全然うまくいかなかったんですよ。でもすごく楽しくて。それまでがつらい仕事で、笑顔のない生活だったので、新鮮な気分にもなりました。

あの笑いをもう一度味わいたいというのと、とにかく男性にうまくメイクできなかったのが悔しくて、自分なりに研究してやろうと思ったんです。

Twitterでモデルを募集して、「実験台」として化粧をさせてもらいました。「ビフォーアフター」を写真で撮らせてもらって、Twitterにアップしたこともありましたね。

でも、やっぱり自己流だと限界があって。例えば、ひげを目立たなくするにはどうするのだろうとか、ニキビでボコボコの肌はどうするんだろうとか。色々と知りたいことがつのって、男性が女性の格好をするパフォーマンス「ドラァグクイーン」向けの特殊メイク講座に出たんです。

ただ、色々と研究にはお金がかかるんですね。東京まで出かけたり、メイクをするのにカラオケボックスを利用したり。バイト代をつぎ込んでしのいでいたんですが、ついに「研究費」がなくなってしまって。

そんな時、双子の兄から「ネイルサロンやるから、一緒にメイクサロンでもやらへんか」って誘われて。そろそろお金も稼がないといけないので、趣味と実益を兼ねて、思い切ってビジネスにしたんです。今から1年ぐらい前のことです。

―客の反応はいかがですか?

少ないときだと月に2、3人。多いときは20人ぐらい。大阪だけでなく、東京や四国からもいらっしゃいます。

お客さんには、なぜメイクしたいのか聞くようにしています。私自身、興味あるんで(笑)。すると、だいたい理由は「人生一度きりの経験をしようと思って」とか、「一度は女性になりきりたかった」とか。

80歳ぐらいのある男性は「人生もう先がないから、自分がしたいということをチャレンジしたい」と話していました。まあ、「女子ってどうなんやろう」という純粋な好奇心やと思います。

たいてい、初めての人は緊張でガチガチ。汗をかく人もいます。でも、そんな人たちを見てきた感想としては、やっぱり価値観が変わるってことが一番大きいと思うんです。

「化粧をするのにこんな時間がかかるんか。彼女が俺のために頑張って化粧してくれてんのに、待ち合わせに遅れたからって腹を立てて申し訳なかった」とか、「スカートって、足閉じなあかんやん」とか。女性の気持ちや大変さがわかると思うんです。

そして、反応で多いのが、メイクした自分の顔を見て「おかんに似てる!」。人によっては「里帰りした気分や。ありがとう」って感謝もしてくれました。

Kazuhiro Sekine
男性に化粧をするIMAさん=大阪市

―メイクについての考えを聞かせてください。

私、実はメイクをし始めたのがすごく早くて、小学校3年生の時なんですよ。と言っても、まぶたを二重に見せるアイプチ程度でしたけどね。とにかく、自分の顔にコンプレックスがあって、それをメイクでどうにかしたかったんです。

高校生のころはギャルでした。でもメイクが上手にできずに、アイラインを引きすぎて、昆虫の触覚に似ているなんて馬鹿にされもしました。傷つきましたね。

父は「生まれ持ったままがバランス取れててええんやで。そのままで行きや」って言ってくれたんですけど、気になりますよね。そんなとき、会社を経営しているやり手の親戚のおばさんが「大人になったらみんな化粧すんねん。そのまま続けたらええ」って言ってくれて。なんだか背中を押してもらった気がしました。

だから、私にとってメイクは、人生を前向きに明るく生きるツールみたいなもんなんですよ。

メイクって、ほんま面倒なんですよ。時間かかりますしね。しなくていいんならしたくない。でも、ゆうてもこの世の中、容姿を気にする人多いですよね。自分に自信が持てなくてもメイクをすることで、すごい力になると思うんですよ。

お店に来てくださる男の人たちも自信をつけて帰る人は多いです。男性って、顔のパーツで本当は美しい部分があるのに、普段気づいてないというか、気にしないことが多いんです。目とかまつげとか。ナチュラルメイクをすることで、きれいなところを浮き上がらせる効果がある。それが自己肯定感につながるようです。

―「社会人の女性にとってメイクはエチケット」などと言われることに窮屈さを感じる人もいるようです。

メイクをするかしないかは、本人の自由だと思います。メイクにこだわりすぎる人は、相手にしなくてもいいのではないですかね。メイクに執着せんと、自分の他の部分を深めていけたらいいですね。しょせん「メイクごとき」ですよ。

とはいえ、私の場合、メイクと深く関わりすぎました。メイクにだいぶ救われましたし、今更やめることはできません。

でも、アイプチはこの歳になってようやくやめられました。自分なりに自信が持てるようになって、少しずつメイクに頼らなくてもやっていける時が増えたんだと思います。

(IMAさんにメイクをしてもらった男性のインタビューは以下です)
関連記事1:「自信につながる」 男性の経験者が語るメイクの意味とは

関連記事2:「政治家も女装を体験した方がいい」 メイクを体験した男性が語る

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