「ここはマフィアの国だ」爆殺されたジャーナリストの息子が訴える

ダフネ・カルアナ・ガリチアさんは、パナマ文書をもとにマルタ政府を追及していた
ダフネ・カルアナ・ガリチアさん(マルタの首都バレッタで2011年撮影)
ダフネ・カルアナ・ガリチアさん(マルタの首都バレッタで2011年撮影)
Darrin Zammit Lupi / Reuters

地中海の島国「マルタ共和国」で、女性ジャーナリストのダフネ・カルアナ・ガリチアさん(53)が自動車に仕掛けられた爆弾によって殺害された。

現地紙「タイムズ・オブ・マルタ」によると、事件が起きたのは10月16日午後3時ごろのことだった。

マルタ島北部のビドニジャにある自宅を出た直後、カルアナ・ガリチアさんが運転するプジョー108が爆発した。車体はバラバラになり、近くの畑まで吹き飛ばされた。カルアナ・ガリチアさんと見られる遺体が見つかったが、損傷が激しく警察は鑑定を諦めたという。

国営放送の情報として、カルアナ・ガリチアさんは「脅迫を受けている」として、殺害の15日前に警察に被害届を出していたとも同紙は報じている。

■パナマ文書をもとにマルタ政府を追及、15日前に「脅迫を受けた」

爆破されたカルアナ・ガリチアさんが運転していた乗用車
爆破されたカルアナ・ガリチアさんが運転していた乗用車
Darrin Zammit Lupi / Reuters

英紙ガーディアンによると、カルアナ・ガリチアさんは世界中の政治家や著名人による租税回避地の利用を指摘する「パナマ文書」の調査報道に関わっていた。

この文書をもとに、ムスカット首相の側近がパナマに会社を置き、アゼルバイジャン首脳に近い銀行から受け取った大金を隠していたとする疑惑を報道。ムスカット首相は潔白を主張して6月に、総選挙を前倒しした経緯があった。

カルアナ・ガリチアさんの矛先は与党に限らず、野党の民族主義政党のリーダーのスキャンダルをブログで報じて名誉毀損で訴えられたこともあった。

政治メディア「ポリティコ」は、カルアナ・ガリチアさんを「女性一人のWikiLeaksだ」と、その報道姿勢を称賛。2017年に最もヨーロッパに衝撃を与えた28人の1人に挙げていた。

■息子のマシューさん「マフィアの国だ」

母のダフネさん(左)と一緒に写る息子のマシューさん(本人のFacebookより)
母のダフネさん(左)と一緒に写る息子のマシューさん(本人のFacebookより)
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マルタは、イタリアのマフィアが関与するオンライン賭博の温床になっているという指摘がある。「タイムズ・オブ・マルタ」によると、四大マフィアの一つ「ンドランゲタ」が、マルタのオンライン賭博で20億ユーロをマネーロンダリングしていると、EUが報告していた。

カルアナ・ガリチアさんもオンライン賭博の問題を追及しており、マフィアに狙われた可能性もありそうだ。

英国メディア「インディペンデント」によるとマルタでは過去10年間で、15件もの「マフィアスタイル」の殺人・傷害事件が起きているという。

カルアナ・ガリチアさんの息子で、同じくジャーナリストのマシューさんは母の死を受けて、Facebookに以下のような怒りの投稿した。

私の母親は、多くの強力なジャーナリストのように、法の支配とそれを侵害しようとする者の間に立っていたため、暗殺されました。

はい、これが私たちが住んでいる場所です。IDカードの性別変更は認められたのに、基本的な自由を行使しようとすれば、バラバラに吹き飛ばされるマフィアの国です。

※マルタでは9月6日から、性別の特定を望まない人はIDとパスポートで「X」マークを指定することができるようになった。

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