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40人に3人は、字が書けないの? 「発達性読み書き障害」の息子を漫画にした母の思い

『うちの子は字が書けない』の千葉リョウコさんに聞きました

2017年10月26日 18時43分 JST | 更新 2017年10月26日 23時11分 JST

・ノート1ページの漢字練習に1時間かかる。

・黒板の字を写しきる前に消されてしまう。

もし思い当たる人がいたら、その人は「発達性読み書き障害」(発達性ディスレクシア)かもしれない。

漫画家の千葉リョウコさんが、発達性読み書き障害の息子との実体験を描いたコミックエッセイ『うちの子は字が書けない』(ポプラ社)が7月に発売され、NHKで紹介されるなど注目を集めている。

千葉さんの息子・フユくんは、小学2年生になっても字が書けるようにならなかったという。「本を読むのは好きなのに、他のことは問題なくできるのに、なぜ字が書けないの?」。疑問を抱える日々が続いた。

「うちの子は字が書けない」P13より
フユくんの「やさしい3年生になりたい」と書いた字

そんな千葉さんが、発達性読み書き障害を知ったのは教育委員会の講演会だった。「フユが字を書けない原因...これに違いない」。障害を診断されたとき、フユくんは小学6年生になっていた——。

40人学級に3人いるとされる発達性読み書き障害とは、どんな障害なのか。息子の障害を漫画に描いた理由は? 教育現場はどんな配慮をすればいいのだろうか。ハフポスト日本版は千葉さんにメールでインタビューした。

——本書を描いたきっかけは?

長男フユが「発達性読み書き障害」(発達性ディスレクシア)だとわかったとき、情報が欲しくて本を読もうと色々探したのですが、当時は専門的なものしかなく頭に入りづらかったんです。漫画で解説した本があるといいのに...と思いました。

「発達性読み書き障害」は、出現頻度がどの障害よりも高いと言われているのに、認知度がとても低く、教育現場でも知られていないことがあります。漫画でわかりやすく表現することで、多くの方に知ってもらいたい、という気持ちで描き上げました。

「うちの子が字が書けない」千葉リョウコ

——フユくんが字が書けないと疑問に感じたのは、どんな時でしたか?

小学校に入学して漢字の練習が始まると途端につまずき、宿題にものすごく時間がかかるようになりました。

それで、大丈夫かな?と。

本を読むのが好きで、図鑑など隅々まで読んでよく覚えていたので、書けない理由が全くわからず、ずっと、どうしてだろう?と思っていました。

——フユくんが小学6年生のとき、千葉さんが「発達性性読み書き障害」を知って、どう思いましたか?

小学校入学以降ずっと「書くのが苦手」で苦労していたので、発達性読み書き障害だとわかった時は、理由があったんだ...とホッとしました。私もフユも、原因がわかれば改善する方法もあるはずだと考えていたので。

同時に、これから大変だな...とも思いました。本人の気持ちを大事にした上で、親としてどうやってサポートしていくのがいいのかを考えるようになりました。

「うちの子は字が書けない」千葉リョウコ

——「発達性性読み書き障害」のトレーニングをして、フユくんの変化はいかがでしたか?

トレーニング開始以前は、人が当たり前にできることが自分にはできない...ということで自信が持てず、ネガティブな感情を出したりすることが多かったのですが、ひらがな、カタカタが全部書けるようになって自信がついたようです。

小学校1年生でつまずいて、6年生になっても書けなかったのが、トレーニングをはじめて5カ月で全部書けるようになったので。

「うちの子は字が書けない」P14より
トレーニングに使った単語カード

自分に合ったトレーニングをすれば、今よりももっと漢字も覚えられるようになるかもしれない、だから頑張ってやってみよう...というような、前向きな気持ちが生まれたように見えました。

「うちの子は字が書けない」千葉リョウコ

「うちの子は字が書けない」千葉リョウコ

——40人に3人の確率でいる「発達性読み書き障害」。教育現場には、もっとこの障害に対する理解が必要でしょうか。

必要だと強く感じます。

ただ、「障害者差別解消法」ができたことにより、それ以前と比べると「合理的配慮」の必要性があることは教育現場でも認知されてきているのではないかと思います。

先日、フユの学校ではないのですが、高校の先生とお話しする機会があり、「配慮受験」や入学後の「合理的配慮」についてうかがってみたところ、親御さんからの配慮の申し出が増えてきているとのこと。それを受けて学校現場でも体制を整えたいのだけど、なかなか簡単には進まなくて...とおっしゃっていました。

意識は変わってきていると思うのですが、もっと理解が進み、体制が整うのは、いったいいつになるのだろう...と考えてしまいますね。

「うちの子は字が書けない」千葉リョウコ

——具体的には、学校や周囲には、どんな合理的配慮があるといいでしょうか。

発達性読み書き障害にかぎらず、他の障害でも、ひとりひとり全く違う特徴があるわけですから、本に収録されている対談で監修の宇野先生がおっしゃっていたように「全員が特別扱い」できる環境が理想だと思います。なかなか難しいことだとは思うのですが......。

具体的には、読み書きが苦手な子が板書をデジカメで撮影したり、タブレットを持ち込んだりすることができればいいですね。周囲もそれを、目が悪い子がメガネをかけたり、黒板の見えやすい前方の席に座ったりすることと同じようにとらえられるようになれば...と願っています。

——この記事を読んで、子どもが「発達性性読み書き障害」かもしれないと思った保護者や関係者にメッセージを。

まずは発達で気になることがあれば、早目に身近な学校の先生や病院に相談されるといいかと。小さいうちから診断、判定されることによって、苦手なことに対する対処法が見つかりやすいと思います。

実際、フユももう少し早く発達性読み書き障害だとわかれば、もっとたくさん漢字を覚えられたかもしれないというようなことを言われました。

個人的には、読み書きが苦手なことで、心に傷を負うような二次的な障害が出ることが一番怖いので、フユには、苦手なことは誰にでもある、それがたまたまあなたには「読み書き」だったのだ、とくり返し伝えるようにしています。

——他に何か伝えたいことがあれば、お聞かせください。

早い時期に「将来どんな職業につきたいか」を親子で考えてみることも大事なことだと思います。本にも描いたのですが、「好きなこと」ではなく「嫌いでないこと」「不得意ではないこと」を選択肢に入れるときっと道が広がるのではないかと。

私の一番の願いは、将来的に息子が自立して楽しく毎日の生活を送ることです。それまでは息子に寄り添いサポートをし、見守っていきたいと思っています。

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うちの子は字が書けない』(ポプラ社)定価1200円+税。

「うちの子は字が書けない」千葉リョウコ