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「男女平等は決して、自動的には達成できない」スウェーデンの閣僚が語る3つの転機

ジェンダーギャップ指数114位に後退の日本。上位の国の経験から学べることは?男女平等大臣に聞いた。

2017年11月02日 07時02分 JST | 更新 2017年11月02日 10時51分 JST

11月2日に発表された世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数で、日本は昨年(111位)からさらに順位を落として114位にまで後退した。一方で、上位を占めたのは北欧の国々だった。

その中でも5位につけたスウェーデンは「フェミニスト政府」を世界で初めて自称し、男女平等政策を国の最重要政策に位置付けている。

同国の男女平等担当大臣(子供・高齢者担当兼務)のオーサ・レグネール氏は、ハフポスト日本版の取材に対して「男女平等は決して、自動的には達成できない。決して」と強調した。

現在の社会を築く上で、転機になった主要な3つの出来事について語った。

Yuriko Izutani/HuffPost Japan
男女平等担当大臣(子供・高齢者担当兼務)のオーサ・レグネール氏

1.労働者が足りなくなったこと

スウェーデンでは、1970年代の経済発展に伴って、女性の労働力が必要になった。

人手不足に悩んだ経済界は、男女の別や子供の有無を問わずに働く労働者を必要としていた。また、福祉国家を目指すため、国家としても税収の増加を必要としていた。

そこで進めたのが、社会保障制度や課税単位を世帯から個人単位へと変更することだった。これによって、家事労働をしていた女性たちが外で働くモチベーションを高めたという。

男女平等は人権の問題でもありますが、同時に経済成長のツールでもあります。これは、決して女性への贈り物ではない、ドライでテクニカルなものなんです。日本では配偶者控除の廃止が2016年に大きな議論になったと聞いています。スウェーデンでは、課税システムの変更は男女がそれぞれ外で働くためのモチベーションを大いに高めました」とレグネール氏。

同時に、スウェーデンでは保育園や介護施設の整備による「福祉国家」化と、育児休業制度の充実を進めた。そして、働く女性と保育・介護職などとして働く場所の両方を増やすことに成功したという。

Getty Images/Maskot
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2015年の調査では、20~60歳の労働力率は女性が83.7%、男性が88.7%。国民1人当たりの名目GDPも5万1125米ドルで、世界第12位(日本は22位)だった。平等政策が経済発展に寄与したと考えられているという。

ただ、女性の賃金は男性よりも12%少なく(日本は28%)賃金格差や、経営者層に女性が少ないなどの問題は依然残っている。

2.女性議員の突き上げで政界進出が進んだこと

スウェーデン政府は2014年に「フェミニスト政府」を世界で初めて自称し、政府として男女平等を目指すことをアピールした。

目指すというのは単なるスローガンではありません」とレグネール氏。例えば、すべての閣僚が、あらゆる分野の政策立案や予算要求の際に「その政策で男女平等に近づくのか」を分析した書類を提出し審査を受けるシステムになっているという。

Twitter/IsabellaLovin
妊婦を含む女性閣僚に見守られサインするイザベラ・ロビン副首相。男性に囲まれて大統領令にサインするアメリカのトランプ大統領を揶揄したとして世界中で話題に。

現在、スウェーデンの国会議員の44%、さらに閣僚22人中12人を女性が占めている。レグネール氏は、女性の政界進出の起点になったのは、1990年代だったという。

スウェーデンの選挙は立候補者個人ではなく、党に対して投票する形。党は立候補者に優先順位をつけて名簿にまとめ、優先順に当選していく仕組みになっている(拘束名簿式比例代表制)。

1994年の総選挙で、9年ぶりの政権奪還を狙っていた社会民主党(2017年現在は最大政党)は、女性票を獲得することが最大の目標となっていた。

この選挙を前に、党内の女性グループは、党に対して名簿に男女を交互に記載し、ほぼ同数で当選することになる「サンドイッチ名簿制度」の導入を求め、実施しなければ「独立して新たに女性党を結成する」と迫った。

女性の議員と支持者が離れることを恐れた党側は、この要求を受け入れた。その結果、社民党は女性票を集めて大勝し、国会議員全体に占める女性の比率も40%以上に増えた。以降、他の主要政党も次々に類似の制度を導入するきっかけとなった。

スウェーデンは閣僚にも女性専用の席が確保されているのか?とよく誤解されます。極右政党(スウェーデン民主党)からもそう攻撃されていますが、そうではない。あくまでも各政党が自発的にクオータ制を取り入れ、それが有権者の支持を集めた。そして、閣僚に登用される女性が増え、政府の方針に影響を与えるに至ったのです」とレグネール氏は語る。

3.暴力への対応が新たな課題に

一方で、レグネール氏が「まだ解決できていない問題」として語ったのが、女性に対する暴力への対策だ。1990年代後半から、男女平等政策の焦点は社会全体から私的なレベルへと移りつつあり、現在最も力を入れている問題だ。

1998年に女性に対する暴力禁止法が導入され、99年には性的サービスの購買禁止法(売る側は違法ではない)が発効された。また、政府でも被害者向けのシェルターの設置や、支援方法の改善・普及事業などを進めているという。

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それでもなお、スウェーデンでは、2013年に女性に対する暴力が約2万9000件報告され、そのうちDVなど親しい関係にある相手によって繰り返し激しい暴力を加えられたという例が2000件を占めている。

2014年の調査ではスウェーデンの女性の46%が性的・身体的な暴力を経験しているという調査結果があり、これはEU諸国平均よりも13%高いことがわかっている。

他国と比較してなぜ高いかの原因はよくわかっていません、警察に届ける人の割合が多いことや、例えば「レイプ」の定義が幅広いことなども考えられます。しかし、だからといって決して暴力の問題が存在しないわけではない。対策を進めていかなければなりません」とレグネール氏は語っている。

(取材協力・スウェーデン大使館)