国民の半分が貧困層、4人に1人が栄養不良。スーダンの子供たちから夢を奪わないために

日本の戦後復興をもたらした学校給食。私たちにできる「恩返し」とは?

2017年11月10日 12時00分 JST | 更新 2017年11月16日 09時51分 JST

M.Kuroyanagi
輪になって給食を食べる子供たち(北コルドファン州アルデーバ学校)

画像 / M.KUROYANAGI

栄養たっぷりの学校給食が、子どもたちや国の未来を変えるって知っていますか。

その給食代は、1日30円。

これは、国連唯一の食糧支援機関「WFP 国連世界食糧計画」(国連WFP)が、途上国の学校に通う子供たちに給食を支援する「学校給食プログラム」の取り組みです。

どうして学校給食が支援として必要なの? どういう背景で給食支援プログラムが始まったの? そんな素朴な疑問を、国連WFP協会の広報マネジャー、外岡(とのおか)瑞紀さんに聞いてみました。外岡さんには、10月に俳優で国連WFP協会親善大使の竹下景子さんとともに学校給食プログラムが実施されているスーダン共和国を視察した時の様子も伺いました。


M.Kuroyanagi
生徒たちから歓迎を受ける竹下景子さん。

―—途上国の子供たちが学校に通うために、なぜ給食が必要なのでしょうか。

学校給食プログラムには、 学校に来てもらった子供たちに対して朝ごはんやお昼の時間に栄養たっぷりの給食を提供し、貧しい子供たちの生活を守るという側面があります。貧困や紛争などで生活が苦しくなる中、学校給食が出ると少なくとも学校に通っている子供の食料が確保されますし、子供たちの一食分をまかなえることで、家族も助かるというメリットがあります。

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学校に通う子供たち。

途上国では、朝ごはんを全く食べないで学校に来る子供が多くて、学校給食が1日の唯一の食事ということもある。空腹の状態で勉強してもなかなか頭に入ってきませんが、学校給食を食べることで学習効率も上がってきます。

栄養たっぷりの食事を定期的に食べられることで、子供たちの栄養状態も改善されます。

貧しい国ですと子供たちを学校に行かせるのではなく、家庭の働き手にしてしまいます。そうすると子供たちがなかなか学校に通わせてもらえません。特に女の子は学校へ行かせる慣習すらない地域が多いので、学校給食があることが学校に行かせるインセンティブとなるのです。

――そうした「学校に通えない子供たち」は世界でどれくらいいるのでしょうか。

世界の6100万の子供たちが学校に通えず、そして更に多くの子供たちがお腹を空かせたまま学校に通っています。

教育の普及という意味でも、学校給食は重要な役割を果たします。学校給食を食べて育った子供たちが大人になって国を支える人材となる。国連職員になっている人もいれば、その国の大臣や要職についている人もいます。

そもそも学校に行かなければ自分の将来がどういうものになるか分かりませんし、選択肢も広がりません。

学校給食というものはその時の栄養改善や生活を守るということ以上に長期的な効果があるのです。長い目で見れば国の発展にも繋がる支援なのです。

――家庭の環境や距離の問題で学校に来ることが困難な子どもたちが多い途上国で、学校給食の持つ意味が非常に大きいということですね。

日本と違って途上国では、とても長い距離を歩いて通う子供たちが数多くいます。

今回視察したスーダンでも、炎天下の中、遠くの村から通う子供がたくさんいました。朝の6時に家を出発し、徒歩で8時に到着するという話も聞きました。学校に通うこと自体が並大抵のことではないのです。学校に通うことに対する何らかのインセンティブがあること、それが子供たちを学校に向かわせる大きな要素になるのです。

——今回視察に行かれた、アフリカのスーダン共和国とはどのような国ですか

現在のスーダン共和国は、2011年に南スーダン共和国が分離独立しましたが、世界最低レベルの開発途上国とされており、人口の46.5%が貧困層に属しており、4人に一人が栄養不良です。私たちが「飢餓の要因」と言っているもの、つまり「慢性的な貧困」、「紛争」、干ばつや水害といった「自然災害」、そして「経済状況の悪化」、すべてに苦しめられています。

――実際、スーダンに視察に行かれて、現場の雰囲気や、子供たちあるいは教職員スタッフたちからはどのような声が聞かれましたか。

学校の先生方からは、子供たちが学校給食を食べるようになって勉強の効率が上がっていった、という声がありました。

学校には子供たちの親御さんたちもいらっしゃっていました。多くの親御さんたちも幼少の頃、子供と同じ学校に通っていたのですが、当時は学校給食支援がなかったといいます。「自分たちは何かしらの食料を家から持っていかなければいけなかったが、子供たちは学校給食があるおかげで勉強に集中できるし、たくさん食べられるからとても嬉しい」と語っていました。

子供たちを見ていると、夢や希望をもって学校生活を送っている様子が感じられました。子供たちは口々に「医師になりたい」「先生になりたい」といった将来の夢を語ってくれました。そういう夢を持てるようになったのも、学校に来て将来への可能性を広げられているから、なのだと思われます。

中には、足が不自由で、歩けずに数キロ先の家からロバに乗って通っているお子さんもいました。その子が「どうしても伝えたいことがある」と、友達の肩を借りて私たちの元まで来てくれました。そして、「学校給食の支援を受けて勉強ができる。将来は先生になりたい」と力強く語ってくれたのです。学校給食支援が、「子供たち全員が将来への夢を持てる社会づくり」に貢献していると実感した瞬間でした。

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ロバに乗ってアルデーバ学校に通う、ムトゥウェリくん(7歳)

――夢を持つ場としての学校があり、そこで給食を食べることが、子供たちにとって良い記憶として残るのでしょうか。

日本でも、みんなで仲良く給食を食べたことが、楽しい思い出になっている人が多いのではないでしょうか。スーダンの子どもたちも同じだと思います。

スーダンでは給食の時間になると校舎の外に出て、一列に並んで、手を洗う順番を待ち、リーダーの子が順々に水をかける。グループごとに分かれて輪になって大皿に盛られた食事を囲み、みんなで一緒に手で食べます。割り込みすることもなく、誰かが独り占めすることもなく、楽しそうにみんなで食べている。そうした給食の光景が、大人になっても良い記憶として残り、将来に向けて夢や希望を持って頑張ろうと思えるようになるのではないかと思いました。

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給食の前に並んで手を洗う子供たち(シャグエルウィンディ学校)

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グループで給食を囲む子供たち(シャグエルウィンディ学校)

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子供たちと一緒に給食を食べる竹下さん(シャグエルウィンディ学校)

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給食を待つ子供たち(アルデーバ学校)

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給食を運ぶ子供たち(アルデーバ学校)


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各グループの代表が給食の皿を据える(アルデーバ学校)

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おしゃべりしながら給食を楽しむ子供たち(アルデーバ学校)

――親善大使として視察に行かれた竹下景子さんは、現地でどのような感想を持たれていたのでしょうか。

学校給食支援プログラムに強い思いを持っている竹下さんは、今回も子供たちと一緒に給食をとるなどしていましたが、「子供たちの笑顔があれば、大人もみんな明るくなって、頑張れますよね」とおっしゃっていたのが印象的でした。

そして、常々竹下さんがおっしゃっている「食べることは生きること」つまり、人間が生きていく上で食べることは基礎となるのだということを改めて感じたそうです。食べられることで初めて勉強できる、初めて夢を見つけられる。夢を持った子供たちが、将来を担う人材になるわけですから、「子供が元気な国は未来がある」と、視察に行かれる度に思いを新たにするそうです。

――国連WFPによる途上国の学校給食支援が、日本人にとって身近なことであると感じられるになるためには、どのようなことが必要でしょうか。

第二次世界大戦後の日本も、国連の協力で学校給食の提供を受けていました。それによってその世代の子供たちが教育を受けられるようになり、その子供たちが社会を担う人材に育っていくことで、国の発展につながっていったのです。今の日本の経済成長はその時の学校給食支援があったからといっても過言ではありません。

だから、日本が途上国に学校給食支援をするのは、ある意味で「恩返し」というか、「今度は私たち日本人が、途上国の子供たちのために支援する」というように捉えてもらいたいです。

竹下さんは、途上国支援について、「お互いさま」と考えています。支援は一方通行ではない、いつ私たちが支援される側になるかわからない、という意味ですね。

荒川潤 / Gekko
「食糧支援が平和への一歩と言っても過言ではありません」と語る外岡さん。

――こうした学校給食支援を持続させるために、私たち日本人にできるのはどんなことでしょうか。

まずは、学校給食支援をはじめとした食糧支援が、ただ食糧を配るだけではなく、子どもたちを育て、教育を普及させ、国の発展を支え、平和をもたらすことにつながっているのだということを知っていただきたいですね。人を育て、国を作るのですから、そのぶん時間もかかりますが、確実に成果が出ることを学校給食支援が証明してくれています。

もちろん、支援は無限に続くものではないので、どこで終了させるのかの見極めは非常に難しいものです。例えば紛争が終結したとしても、その傷跡は何十年も先まで残るため中途半端な状態で支援を中断してしまうと、その国はすぐにもとに戻ってしまう可能性があります。最終的に国が自立できるようになるまで、多くの方の継続的な支援を必要とするのです。

現在国連WFPでは、1万人の子どもたちに1年間学校給食を届けることを目標に、「世界食料デーキャンペーン」を開催しています。およそ5,000円で、途上国の子供が1年間学校給食の支援を受けられるようになります。多くの著名人からも応援メッセージをいただいており、少しずつ支援の輪が広がっていっているのを感じています。

「何から始めていいのかわからない」という方は、ぜひキャンペーンサイトをのぞいていただき、学校給食支援を知っていただき、支援の輪に加わっていただければ嬉しいです。私たちが「お互いさまだから」と思って何回かランチを節約して寄付をすれば、途上国の子供たちが栄養の改善ができて、1年間学校に通える環境が作れますし、大きな影響を及ぼすことを知ってもらいたいですね。

M.Kuroyanagi
竹下さんと子供たちの集合写真(アルデーバ学校)