サッカーW杯ロシア大会の会場、エカテリンブルクのスタジアムが「怖すぎる」と話題に

40メートル超の仮設席が「高すぎる」「角度が急」

サッカーのワールドカップ(W杯)大会を2018年に予定しているロシアで、競技会場の一つとなっているエカテリンブルクのスタジアムが「怖すぎる」と話題になっている。観客席の不足を補うために建て増しされる仮設スタンドが、スタジアムの外に設けられる上に、高さ40メートル以上もあるからだ。スタジアムの屋根とほぼ同じ高さで、視界が遮られて観戦できるのかという不安の声も上がる。

ロシアで開かれる国際的なイベントをめぐってはしばしば、関連施設の不備などが問題になってきた。今回もその「伝統」が繰り返されるのか。

建設が急ピッチで進むエカテリンブルク・アリーナの仮設スタンド(右)
建設が急ピッチで進むエカテリンブルク・アリーナの仮設スタンド(右)
David Mdzinarishvili / Reuters

大会の組織委員会によると、W杯ロシア大会は2018年6、7月、モスクワやサンクトペテルブルク、ソチなど11都市の計12のスタジアムで試合が繰り広げられる。このうち話題になっているのは、エカテリンブルクのスタジアム「エカテリンブルク・アリーナ」だ。

元々、地元のプロチーム「ウラル」のホームスタジアムとして1953年に建設。その後、度々改修工事があり、W杯のために屋根も取り付けられた。正面入り口にはソ連時代からの装飾などがそのまま残され、伝統的な建築物としても知られる。だが、世界的なイベントを開催するにあたり、大きな問題が起きた。

国際サッカー連盟(FIFA)は、W杯の試合会場について、収容人員を最低4万人と規定している。ところが、エカテリンブルク・アリーナは約2万7000人しか収容できなかった。

イギリス紙「ガーディアン」によると、連盟とロシア側とが交渉した結果、特例として3万5000人以上と認められ、急きょ増設工事が始まった。

開催キャンセルは回避されたものの、それでも新たに1万人規模の客席を確保することは困難を極めた。伝統的な建築物であるスタジアムの増改築についてはロシア法による規制が立ちはだかり、その結果、両ゴール後方の狭い範囲に仮設スタンドを計2つ、建て増しすることになった。2017年中には完成する見通しだ。

仮設スタンドは、ほとんどがスタジアムの外に突き出る「異例」の形状。金属製のやぐらが組み上げられた上に座席が設置されている。

ロシア国営の「タス通信」の動画

地元メディア「ウラ・ルー」によると、スタジアムの屋根の高さが45メートルに対し、スタンドの高さは43メートルとほぼ一緒。仮設スタンドをルポする記事の中で、同行者の声として「とても怖い」などとする発言を掲載した。

ウラ・ルーのルポ記事に添えられた動画

後方に見える仮設スタンドの前には、スタジアムの屋根が「立ちはだかる」
後方に見える仮設スタンドの前には、スタジアムの屋根が「立ちはだかる」
Maxim Shemetov / Reuters

また、別の同行者は、選手やボールについては肉眼ではっきり確認できるとしながらも、反対側の掲示板は見づらいと訴えた。さらには「いすが貧弱すぎて、『ゴール』と叫んだ拍子に思わず後ろに倒れるんじゃないか。ましてやフーリガンのような人だったら簡単に外せるだろう」と話した。

建設作業員らが朱色の座席を取り付ける仮設スタンドの工事現場
建設作業員らが朱色の座席を取り付ける仮設スタンドの工事現場
Stringer . / Reuters

ソーシャルメディア上でも「高くて怖い」「傾斜が急」「観戦するのに屋根が邪魔だ」などの声が上がっていると紹介した。

一方、スポーツ紙「ソビエツキー・スポルト」電子版も、仮設スタンドについて「これほど恐ろしくみえるスタジアムはほかにない」とする記事を掲載している。

スタジアム全体。周りの建物と比べると、仮設スタンドの高さがわかる
スタジアム全体。周りの建物と比べると、仮設スタンドの高さがわかる
Maxim Shemetov / Reuters

ロシアでは度々、国際的なイベントの開催に伴って建設された施設をめぐって不備が指摘されてきた。2012年にウラジオストクであったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、会議に合わせて完成させるはずだった高級ホテルなどの施設は、計画の不備や汚職などために間に合わなかった。

2014年にあったソチ五輪でも同じように一部の関連施設の建設が間に合わなかったり、施設内の設備で不具合が相次いだりするなどの問題が生じた。

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