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「在宅の医療ケアが必要な子、体制が整っていない」命を支える現場に必要なもの

頑張っている子どもたち、家族をサポートするために。

2017年12月30日 12時50分 JST | 更新 2017年12月31日 12時37分 JST

在宅で医療のケアが必要な子が増えているが、そのサポート体制は十分でない。生まれて生きることをテーマにしたテレビドラマ「コウノドリ」が注目され、居場所作りに尽力するNPOもあり、関心は高まっている。

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重い病気の子どもと家族のための短期入所施設を始めた国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の賀藤均・病院長に、命を支える現場の課題を聞いた。

国立成育医療研究センター提供

●医療の進歩で増加、高齢者の問題と同じ

――在宅で医療のケアが必要な子どもについて、現状を教えてください。

「厚生労働省の報告によると、新生児集中治療室(NICU)や集中治療室(ICU)などに入院した後、人工呼吸器や胃ろうを使い、たんの吸引や経管栄養といった医療的なケアが必要な子どもは、昨年の推計で1万7000人と言われています。この10年で倍ぐらいに増えました。小さく生まれたり、事故・病気によってケアが必要になったり、慢性の難しい病気の子もいます」

「医療の進歩によって命が助かるようになりましたが、在宅での医療的ケアが必要な子が増えたのも事実です。これは医療の発達に伴ってケアの必要な高齢者が増えているのと同じ現象かもしれません。今は赤ちゃんが1000グラム未満、数百グラムで生まれても助けられます。センターの在院日数は平均10日ですが、半年から1年、入院するお子さんもいます。退院してから医療的ケアが必要なお子さんは、年に130人ぐらいいます。センターにも在宅医療の専門科が数年前にできて、人工呼吸器をつけているお子さんは、月に1回は受診します」

●つきっきりの介護、親の負担大きく

――どんなサポートが必要ですか。

「入院治療している間に、退院してからの生活の準備をします。親御さんには医療的ケアの方法を覚えてもらい、ケアマネジャーや在宅診療を担当する医師・看護師を自宅の近くで探します。自宅では、おむつ交換、胃ろうの消毒、ガーゼの交換、ミキサー食作り、お風呂の介助、たんの吸引に気管切開したところの消毒など、つきっきりの介護が365日、続きます。お子さんが寝てからも夜中に体位を変えることもあるので、親御さんの睡眠時間は少なく、心身の負担が非常に大きいです」

「在宅での医療的ケアは、家族が行っています。以前、学校で先生が医療的ケアが可能かどうかで問題になり、処置をせず子どもが亡くなった例もあったと聞いています。また、福祉・医療・教育の連携が必要で、自治体によって助成に差があります。介護は高齢者のもの、と思われていたので子どもに関しては体制が整っていません。現状で子どもの医療的ケアは丁寧さが必要なため、結果的に報酬が少ない仕組みです」

●子どもが笑って過ごせる場が必要

――センターに、施設ができました。

「重い病気の子と家族のための短期入所施設『もみじの家』を昨年、オープンしました。計画は以前からしていました。センターは、世界のトップレベルの高度医療が求められる病院ですが、在宅で医療的ケアの必要なお子さんが増えており、放っておくことはできませんでした」

「この施設は普通のお家と同じように料理も作れるし、自宅と同じ環境を意識して建てられています。3人部屋が2つ、個室が5つ、家族室2つのほか、共用のダイニングキッチン、家族で入れる浴室、プレイコーナーや音楽室もあります。障害福祉サービス費の1割負担で、使用料は1日2000円から5000円。原則1カ月に1回、最長9泊10日まで使えます。イギリスの小児ホスピスをお手本にしました」

――子どものための場所なんですね。

「この施設を利用するお子さんは、同世代の子と一緒に遊び、ふだんできない経験ができます。就学前の子は外に出る機会が少ないですから。特別支援学校に通っていて、学校が休みの時に利用する家族もいます。寝たきりにしないのが、一番の目的です」

「病棟のベッドを利用して医療的ケアが必要な子を入院させるケースが多くなっています。でも大事なのは、入院しても子どもたちが楽しく笑って過ごせることです。もみじの家では、遊んだり、本を読んだり、おいしいものを食べたりできます。スタッフは看護師が多く、保育士やボランティアもいます」

●全額寄付で設立、地元が協力

――充実した設備ですが、費用はどうしていますか。

「建物は病棟扱いです。全額、寄付金で建てました。こうした施設は医療と福祉の中間にあたり、診療報酬は十分ではありません。年間、5000万円以上の赤字です。これも寄付でまかなっています。地域の人たちが財団を作り、寄付集めやボランティア、利用者への助成金という形で協力してくれます。世田谷区在住の場合は、区からの助成もあります」

●「十分な助成または診療報酬を」

――こうした場を全国に広めるには何が必要なのでしょうか。

「医療者側の『助かったね、頑張ってね』という自己満足で終わってはだめです。頑張っている子どもたち、家族をサポートする施設が必要で、私たちのセンターだけでは足りません。少なくとも各都道府県に1か所はいるでしょう。そのためには、運営が赤字にならないような制度が必要です。具体的な内容を調査して提案しようとしています」

「こうした施設を利用した場合、なんらかの十分な助成または診療報酬があればと思います。目に見える形で、広く理解を呼びかけるのも大事です。日本は、寄付をお願いする方法があまり知られていません。協力者への働きかけやお礼をどうするかも含め、体制をきちんと整えなければなりません」

国立成育医療研究センター提供

かとう・ひとし 1957年生まれ。新潟大医学部卒業。東京大医学部小児科講師、国立成育医療センター循環器科医長などを経て現職。

なかのかおり ジャーナリスト Twitter @kaoritanuki

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