過労死遺族がスーパー「いなげや」を提訴 遺族「回答すらしてくれない」と憤り

「過労死は私たちの家族が最後であってほしい」
厚生労働省の記者クラブで会見する遺族側の弁護団
厚生労働省の記者クラブで会見する遺族側の弁護団
Kazuki Watanabe / HuffPost

スーパー「いなげや」の男性従業員(当時42歳)が2014年に過労死した事件で2017年12月27日、亡くなった男性の遺族が損害賠償、約1億600万円を求める訴えを東京地裁におこした。

遺族側によると、男性は1995年に正社員として雇われ、2011年11月から志木柏町店で働いていた。「チーフ」という立場だが管理職ではなく、一般食品の発注や棚卸、在庫管理、価格付けなどの仕事をしていた。

男性は、2014年5月25日16時ごろ、店舗で勤務中にろれつが回らなくなって病院に運ばれたが、6月2日に仕事に復帰した。

しかし、男性は6月5日の朝8時〜19時まで勤務した後、駐車場で倒れているところを発見された。大きないびきをかき、けいれんしていて、周囲の呼びかけに応じない状況だったという。男性は6月21日に脳血栓で死亡した。

過労死認定

過労死認定の決め手となったのは、タイムカードに加え、店舗のセキュリティ記録などが残っていたことだった。

たとえば2014年5月19日、男性のタイムカードは7時40分〜18時30分となっていた。しかし、閉店作業のシートでは、23時13分に閉店作業をしたことになっていた。

労基署はこうした点に着目し、労働時間を算定。発症前4カ月目に約96時間、発症前4カ月平均で約76時間の時間外労働があると判断し、過労死認定した。

遺族側弁護団によると、この店舗ではタイムカードの打刻前、打刻後に働くことが常態化していた。働いている間にうっかり打刻を忘れないため、定時にアラームのセットまでしていたという。

その後

過労死認定を受けて、遺族側は、会社側に損害賠償や謝罪、職場環境改善を求めて交渉を申し込んだ。会社側の求めに応じて、遺族側が資料を送付した後、半年が過ぎても具体的な回答が一切ないとして「提訴に踏み切った」という。

記者会見した遺族側代理人・嶋崎量弁護士は「労災認定までされている事案で、職場環境改善も含めて話し合おうと言っているのに、半年も具体的な回答がないというのは常軌を逸している」「こんなに誠実さを欠く交渉をされたことはない」と語った。

いなげや広報はハフポスト日本版の取材に対し、「訴状が届いておらず、回答は控えさせていただきます」と答えた。

遺族は弁護士を通じてコメントを発表した。

《何とか話し合いでの解決を模索しようと考えておりましたが、まともに回答すらしてくれない会社の対応には、残念でなりません。

話し合いの場では、労災の責任を認めてもらい、何より本人が会社のため頑張って働いてきたことを認めてくれるのではないかと、淡い期待をしていましたが、こういった結果になって残念です。亡くなったあとも、労災が認められた後も、それでもなおまともに遺族と向き合ってくれない会社の対応には、憤りをもっています。

訴訟において、きちんと判断していただき、家族としても本人の無念さを晴らせるように頑張るつもりです》

遺族は過労死認定を受け、会社側と交渉を始める際にメディアに次のようなコメントを出していた。

《長時間労働を命令したのは誰ですか?

まさか死ぬとは思わなかったですか?

またかけがえのない命が奪われないよう過労死は私たちの家族が最後であってほしい。》

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