『水曜日のダウンタウン』2時間スペシャルの見どころは?

演出・藤井健太郎氏に聞く番組作りのこだわり

『水曜日のダウンタウン』演出・藤井健太郎氏に聞く SPの見どころと番組作りのこだわり

フジテレビの長寿番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』の終了発表、盤石の強さがより強固になった日本テレビの日曜夜のラインナップ、『ドキュメンタル』『戦闘車』など大きなスケール感のAmazonプライムビデオの独自コンテンツ、『24時間テレビ』の真裏でまさかの『ゴッドタン』初のゴールデンSP、そして日本中が注目したAbemaTV『72時間ホンネテレビ』。今年もバラエティー番組にまつわるさまざまなニュースが大きな話題となった。

そんななか、これまで変わらぬスタンスで笑いを提供し続け、バラエティーファンから熱い支持を集めるのが、TBS系『水曜日のダウンタウン』(毎週水曜 後10:00)だ。単純に笑えるものから、心が少しザワッとするもの、笑いよりも驚きが大きいものまで、今年もさまざまな説で楽しませてくれた。クロちゃんという嘘つきモンスターの本性を暴き、「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」では笑いと同時に感動を生み出し「ギャラクシー6月度月間賞」も受賞するなど、今年もほかの番組にはない大きすぎる振り幅を見せている。来年もテレビっ子をワクワクさせてくれるだろうこの番組の演出を手がける同局の藤井健太郎氏に、きょう27日放送の「2時間スペシャル」の見どころと番組作りのスタンスについて聞いてみた。

■"クロちゃん密着"最新作は「嫌いになるか好きになるか、反響が楽しみ」

今年の同番組から誕生したスターといえば、やはりクロちゃんしかいないだろう。Twitterで呼吸するようにウソをつぶやき、酔っぱらって共演の女性タレントに絡む姿をさらされ、泥酔のまま自宅で暴れまわりベッドの下に潜る模様を隠し撮りされ、トイレで"きばる"音声まで全国放送で流される。ウソを追及されても認めない悪あがきする態度に批判的な声も寄せられるが、本能むき出しの姿を見てクロちゃんのファンになる人も増えているという。2時間SPでは、そんなクロちゃんに密着した企画「フューチャークロちゃん」が放送される。

「あまり同じことをやるのは好きじゃない」という藤井氏だが、「今年は面白いクロちゃんがたくさんあったので、リアルクロちゃんをバージョンアップさせようと思って。けっこう長い尺になりました(笑)」。放送後は、またクロちゃんファンが増えるのでは?「どうでしょうね...。僕らはずっと編集してフラットに見られないので、皆さんの感想を伺いたいです。ストーリーの中にいろいろな要素があるので、嫌いになるのか可哀想になるのか、はたまた好きになるのか、人によって感じ方は様々だと思います」と明かしてくれた。

オンエアされていないシーンで、クロちゃんにもっと深い闇があるのではないかと聞いてみると「まぁまぁ...」と否定をしない藤井氏。「あんまり愛せないところばかりよりも、愛せるクズぐらいがいいですよね。もちろん、笑えるシーンをメインに使っていますが、クロちゃんのいいところが出ているシーンも入れています」、そして「番組が面白いかつまらないか以外に、皆さんがクロちゃんをどう思うか、そこも気になります」と反響を楽しみにしているようだ。

ちなみに、藤井氏はクロちゃんとほとんど会ったことがなく、顔を合せても軽くあいさつをするだけで会話を交わすことはないそうで、「仲良くなって良いことはなにもないですからね」とTwitterでもクロちゃんをブロックしている。この距離感だからこそ、クロちゃんの魅力を最大限に引き出せるのだと納得させるエピソードだ。

きょうのスペシャルでは、「フューチャークロちゃん」のほか、「サンドウィッチマンのあのハンバーガー屋のネタ もはや誰がやっても面白い説」と「松野明美VSターミネーター」の3本立て。今年の最後を飾るにふさわしい爆笑を届けてくれる。

■「今は正直なものが大事な時代」新鮮な意識で来春からの5年目へ

同番組は、来年春で5年目に突入。1~2年で終了することも多いバラエティーでは長寿番組の域に入ってきたが、「毎回違うことをやっているので、その時その時で面白いことをちゃんとやろう、と。『これは水曜日のダウンタウンぽくないからやめておこう』みたいな考えも別にないですし、自然にやっていきます」と藤井氏の意識は常に新鮮で貪欲。そのうえで、作り手として心がけていることを聞くと「今は正直なものが大事な時代だと思う」と話す。

「例えば、失敗した時に失敗したと言うとか。昔は失敗と認めずに成功に見せるのが多かった気がするけど、今は失敗したことを認めたうえで、どう見せるか。隠したりすることが好かれない、という気がします。別に特別なことじゃなく、みんな潜在的に分かっていることだと思いますが。もし2択で迷ったら、今は正直なほうがいいよね、というジャッジはするようにしています」。

この話を聞いて思い出したのが、今月6日放送の「忍法は現代でも意外と通用する説」。オードリーの春日俊彰が忍者となって「水遁の術」で川に隠れ、川辺でBBQを楽しむアニマル浜口&初枝夫妻に気づかれぬよう後ろから近づいて切り付ける、というドッキリ企画だったが、春日に驚いたアニマルが急に激怒。普段の温厚なキャラクターから一転して「誰だ、コノヤロー!」とフライパンをもって春日を追い掛け回すという事態になり、説の検証結果も「アニマルはキレたら怖い」だった。当初の狙いからはズレたかもしれないが、スタッフがアニマルに説明するシーンも放送するなど、正直すぎる内容のVTRは見る人の予想を裏切る笑いを生んだ。

オンエア後、春日は自身のラジオ『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、この時の裏話として「アニマルさんにすっごいキレられたけど、『水曜日のダウンタウン』だから、逆ドッキリにハメられてるのかなと思ってスタッフさんを見たら、みんな真顔だから、リアクションしないパターンのリアルな空気を作る逆ドッキリかな、と思ったり...」と回想。このトークを藤井氏に話すと、「それはちょっと複雑化していますね」と番組の思わぬ進化に笑顔を見せた。

今年のレギュラー放送はこれが最後だが、藤井氏が手がける番組が年内にあと2本も放送される。28日には福本伸行氏の人気漫画『カイジ』を原作にした視聴者参加型バラエティー『人生逆転バトル カイジ』(後10:00)、そして30日にはすっかり恒例となった『クイズ☆正解は一年後』(後11:55)。あすは『カイジ』バラエティー化のきっかけや、作り上げるまでの過程について迫る。

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