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2018年01月10日 11時22分 JST | 更新 2018年02月02日 17時31分 JST

夫婦別姓を求める「新しい」裁判が始まった。

サイボウズ社長らが掲げる、従来とは違うアイデアとは?

「新しい」夫婦別姓訴訟が始まった。1月9日、サイボウズの青野慶久社長(46)ら4人が、「夫婦別姓」を求める裁判を東京地裁に起こした。青野社長と代理人の作花知志弁護士が霞が関の司法クラブで会見した。

Kazuki Watanabe / Huffpost
記者会見する青野慶久社長

青野社長は2001年に結婚。結婚相手の希望を受け入れ、「特に不利益はないだろうと思って、後先顧みずに」氏を変えたという。ところがいざ変えてみると、銀行口座や免許証、パスポートなどの多くの変更手続きが待っていた。証券口座の変更と株式の名義変更では81万円もの手数料がかかった。いまでも海外出張や株主総会など、「そのギャップにストレスを日々感じながら仕事をしている」と語る。

夫婦別姓を求める裁判は2015年、最高裁が「夫婦は同じ氏を称する」と決めた民法750条のルールを「合憲」と判断したばかり。そのため、今回の裁判は新しい発想で挑む。それはどんなものなのか。

新しい発想

最高裁判決の後も、作花弁護士のもとには、「夫婦別姓を求める裁判を起こしてほしい」という声が届いていた。しかし、前回と同じ主張を繰り返したのでは、最高裁が結論を変える可能性はほぼない。

調査するうち気付いたのが、実は「民法上の氏」と「戸籍法上の氏」は違うということだった。

どういうことか。

民法上の氏のルールはこうなっている。

「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」(民法750条)

つまり、結婚する時に話し合って、夫婦どちらかの氏を名乗るというルールだ。

そして、この氏は離婚したら「元に戻る」(民法767条)ことになっている。

戸籍法上の氏は、この民法上の氏とはずれが生じることがある。

まず離婚後3カ月以内に、戸籍法上の届け出をすれば、「離婚時の氏」を名乗ってもいい(民法767条2項)というルールがある。

さらに、外国人と結婚するときにも違うルールがある。

外国人と結婚した場合、民法上の氏は「変わらない」。しかし、戸籍法上、届け出をすれば結婚相手の氏を名乗れる。さらに、離婚した場合に相手の氏を名乗り続けることも、元の氏に戻すこともできる。

つまり民法上の氏とは別に、「戸籍上、違う氏を名乗っていい」という制度になっているわけだ。

まとめると、この表のようになる。

原告提供

今回、青野社長たちが主張しているロジックは、「日本人同士で結婚した夫婦だけ、結婚前の氏を名乗れないのは、平等ではない。憲法違反だ」というものだ。

原告提供
「法の欠缺(けんけつ)」は、ルールが欠けている、存在しないという意味。

​​​​憲法には、法の下の平等が定められている。

憲法第14条:すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

また、結婚のルールは「個人の尊厳」に立脚して制定されなければならないとされている。

第24条2項:配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

青野さんたちは、法律をこう変えたら?というアイデアも提示している。

その案はとてもシンプルで、戸籍法に「届け出れば、結婚前の氏を名乗ってもいい」という条文をつけ加えるだけだ。

今回のアプローチは、「ルールの変更が最低限で済む」と作花弁護士は話す。

夫婦で同じ氏を名乗るという民法の仕組み、原則は変わらない。子どもが生まれたときにも、結婚する時に決めた氏になる。これは今のルールのままだ。夫婦一緒の氏を名乗りたいという人もそのままだ。

しかし、戸籍法にこういうルールを加えれば、元の氏を名乗ることが、法律上きちんと認められる。そうすれば、現実に起きている不都合のほとんどが解決するはずだ。これが青野さんたちの主張だ。



​​​​青野さんは、夫婦別姓を選べないことが「精神的ストレスなだけではなく、経済合理性としても損失になっている」と指摘。「前回の訴訟で、どれぐらい沢山の人が口惜しい思いをしたのか。数十年間、積み上げられてきた苦しい思いが、今回の訴訟につながっている」と話した。

法改正のニーズはある。青野さんがchange.orgで呼びかけた署名にはすでに約2万人の賛同者が集まっている。

現行ルールを合憲とした2015年の最高裁判決は、その背景の一つに「旧姓使用が広まっている」ことを挙げていた。ところが、当の裁判所で判決や令状などで旧姓使用がOKという運用になったのは2017年9月からだった。奇しくもこの1月9日、最高裁判事に就任した宮崎裕子さん(66)は、最高裁判事として初めて「旧姓を最高裁でも使う」と明言した。

裁判所も変わりつつある。司法は「新しい枠組み」の提案に対し、どういう反応を示すのか。

ただ、そもそも司法判断を待たずに、国会で新しいルール(法律)を作ってしまうという手もある。

作花弁護士は「こういうやり方があることを、裁判所や国会に知ってもらって、そこからうねりをつくって、法改正に繋げたい」と話していた。