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小室引退で"文春砲"に逆風、どう思う? 「その人のキャラによって世論の空気が変わる」

「起きたことよりも、誰なのかで、風向きが変わる気がする。そして、大きな分岐点はテレビが拾うかどうかだと思う」

2018年01月29日 14時35分 JST | 更新 2018年01月29日 14時35分 JST

Abematimes

今週、また新たな"文春砲"が炸裂した。元NHKアナウンサーで、「麿」の愛称で親しまれてきた登坂淳一さんによるセクハラ疑惑だ。記事は登坂さんが札幌放送局に勤務していた2011年、新人の女性キャスターに対し体を触りキスを迫ったと報じている。

 今月11日にNHKを退局し大手芸能事務所に所属した登坂さん。今春スタートするフジテレビの新番組の顔として抜擢されることが決まっていたが、"文春砲"を受けて降板することが決定した。

 流行語大賞にもノミネートされ、数々の記事でもはやスクープの代名詞ともなった"文春砲"だが、引退を発表することになった小室哲哉さんへの記事を機に逆風が大きくなっている。

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 週刊文春の公式ツイッターには、「表現の自由だけど、やりすぎ」「もっと日本の未来にプラスになる雑誌を作ってください。裁くべき悪は他にある!」「小室さんの音楽を聞きたい方々への責任。。。。。とってくれるの?」といった批判が殺到、不買運動を求める書き込みも。

 さらに「やっとクソ文春のヤバさが大衆に浸透してきたか。結局こうなるしかないビジネスモデル。誰得と言い続けてきたの俺だけ」(堀江貴文さん)、「もう不倫報道ええやろ。誰にも迷惑かけてない事は放っておきなさいよ!!雑誌がまた一人の天才を殺しました」(エハラマサヒロさん)、「週刊誌による興味本位の有名人不倫報道、いつまでこんな非生産的なことを続けるのか」(舛添要一さん)と、著名人も違和感を表明し始めている。

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 出版不況と言われ、競合誌が発行部数を急激に落とす中、比較的維持している週刊文春。「不倫記事は必要ない」「それを面白がる人がいる限りなくならない」「芸能人なら仕方がない」など、街の若者たちからも声が上がる今、どうなるのだろうか。25日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、文春砲をめぐる問題や背景について考えた。

■「"このハゲー!"の音声で、1000万円以上の収益」

 昨年、自サイトの運営について週刊文春に報じられたこともある東洋経済オンラインの山田俊浩編集長は、新谷編集長とも定期的にも会っており、「ちゃんとした人だ」と前置きした上で、「イエロー・ジャーナリズムの中で、セレブのゴシップは最もおいしいネタ。文春がすごいのは、エース級の優秀な人材が集結して、いい機材を持って、隣の部屋を予約して...ときっちり取材している。欧米には一攫千金を狙って、いい写真が撮れたら高値で売りつけるという世界もある。逆説的だが、市民が勝手に写真に撮って投稿してとなると、もっと雑なものが出てきてしまうので、確認も取材も丹念にやっているという意味ではいい面もあるかもしれない」と話す。

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 その上で、「政治家のスクープにしても、本来は新聞ジャーナリズムが担うもの。本来であれば資本力を持った新聞やテレビが王道の報道をして、ちょっとゲリラ的に、やんちゃな報道するのが雑誌、という関係だった。それが今や、週刊誌がど真ん中にきていて、新聞やテレビが週刊誌を追いかけるようになっている。かつては想像してなかった、不健全な状況だ」と指摘、「しかし、こういうのは麻薬的なもので、よほど強烈なネタでなければ響かなくなりつつあるし、下手にネットやテレビで盛り上がると、雑誌が売れなくなる面もある。一連の"文春砲"によって、『週刊文春』の名前は知れ渡ったが、必ずしも売上にはつながっていない。結局、彼らは素材をテレビや新聞にうることによって稼ぐという方向を見出そうとしている。そこで文春は3万円、5万円で映像素材を販売している。音声の場合は10万円。制作費が削減されているテレビ局としても、"文春が報じた"と言いさえすれば自分たちで取材しなくて良いし、リスクもない。昨年、繰り返しテレビで放送された"このハゲー!"は、1000万円以上の収益を新潮社にもたらした」と説明した。

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 また、山田氏は「今回、文春は世論の声を聞いているのであれば、小室さんの問題についての考え方を明らかにしたり、続報的な記事を書いたりすべきだろうが、今のところ、なかったことにしてしまっている。読者との丁寧なキャッチボールをしなければ風当たりが強くなってしまう」と訴えた。

■「見ている側の"鏡"としてメディアがある」

 日本雑誌協会の「雑誌編集倫理綱領」には、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する」「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権と、ひとしく尊重され擁護されるべきものである。(中略)プライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」「雑誌は、その文化的使命のゆえに高い品位を必要とする」というものもある。

 社会問題を伝えるメディア「リディラバジャーナル」を立ち上げた安部敏樹氏は「世の中が許すなら報じていいし、許さないなら報じていけないということではないと思う。政治家などの公人ではない場合、何を基準にプライベートを暴くのか。しかも、メディアは"準公人"というような奇妙な概念を作って、テレビに出ている人ならスクープしてもいい、という雰囲気になっている」と指摘する。

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 「見ている側の"鏡"としてメディアがある。みんな"不倫なんてありふれている。もっと大事なスクープあるんじゃないの?"と思いながらもメディアがそれに紙面や時間を割くようになったのは、そのほうが部数も視聴率も伸びるから。そうやって我々が作り出したメディアが小室さんを追い詰めたんだから、それを責めるのはおかしいと思う。その先に芸能人が縮こまってしまい、エンタテインメントが面白くなくなっちゃうかもしれない。今こそ見る側のリテラシーが試されているときだ」(安部氏)。

 その上で、安倍氏は「メディアの役割には、情報を作ることと、届けることの2つがあると思う。今まで、新聞やテレビは両方が強かった。それに対して、ネットは届けるだけでお金を儲ける業者ばかりになり、テレビも新聞もその影響を受けるようになった。そんな中で、文春だけがくぐりぬけてきた。この人達をどうして新聞はどうやって部数を維持するかばかり考えていないで、文春の人たちを引っこ抜いて、政治に特化してスクープを狙う部隊を組織すればいい」と提言した。

■「中立的で、ちゃんとしている部分もある」

 『週刊文春』の新谷学編集長は、『文春砲 スクープはいかにして生まれるのか?』(角川新書)で、「目指すのは裁きではなくエンターテインメント」「週刊誌の役割のひとつは"ガス抜き"」とも述べている。

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 プロインタビュアーの吉田豪氏は、「他の雑誌がスクープ報道から撤退していった理由は、訴訟になって負けたときの額が数百万円と上昇してきたから。文春はそこで引かず、売れればいいやと腹を括っている。また、会社の事情で芸能人のスキャンダルをやりづらくなっている。芸能事務所と手打ちしてナシにしたりソフトにするなど、折れないのは東スポと文春だけになっている。連載している人には甘いかもしれないが、それ以外に対しては頑張って頑張って闘っている媒体とも言える。あるタレントさんに、"ぶちまけたい話があるから雑誌を紹介してください"と言われ、文春を紹介した。記事にはならなかったが、他のマスコミがその人のことを批判的に書いた時、文春だけは中立的に書いていた。ちゃんとしている部分もある」と話す。

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 その上で「文春が報じれば、あとのメディアは乗っかってやっても大丈夫という雰囲気がある」「ライバル誌が新谷編集長の不倫スキャンダルを追っているというのを聞いたことがある」とも明かした。

■ふかわりょう、柴田阿弥の意見は...

 タレントとして、報じられる側に立つ可能性もある、ふかわりょうは、今回の文春への逆風について「報じられた側のキャラと対応の違い」と指摘する。

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 「やっぱり人次第で、その人のキャラによって世論の空気が変わる。起きたことよりも、誰なのかで、風向きが変わる気がする。そして、大きな分岐点はテレビが拾うかどうかだと思う。小室さんはテレビに上手く向き合って、90秒間にサビが2、3回出るような曲をつくり、ヒットを生む仕組みを作った。今回の問題にはすごく胸が痛むが、テレビ、新聞に報じられる、というあり方そのものを全面的に否定することはできない。僕はそうした恩恵を棚に上げて、一度苦境になったときだけテレビや新聞に文句を言うのは美学に反する」と言葉を選びながら訴えた。

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 元アイドルの柴田阿弥も、周囲のメンバーがプライベートを報じられた経験を持つ。「当時、私は上に行きたくて、仕事と学校のことだけを考えて生きてたので、恋愛が良いか悪いかは別として、真っ当に頑張っている人が損はしちゃいけないと思っていた。AKBは人気だったし、ルールを破った撮られても仕方ないと考えていた。私たちは好きでこの業界に入った。誰しもができるわけではない仕事、好きなことを仕事にしてお金をもらっている以上、多少の息苦しさは仕方がないし、人から憧れられる仕事だからこそ、まっとうに、清廉潔白に生きた方がいいと思う。人の扱いが公平になることは決してなくて、その人のキャラクターにも左右される、それを頭に入れた上で自分を客観視して生きていくことが仕事につながると思う。みんな気をつけよう!」とコメントしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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