「あたしおかあさんだから」歌詞通りの生活を送っていたら、こうなった(マンガ)

渋谷さえらさんが振り返った育児体験とは?

NHK「おかあさんといっしょ」で「うたのおにいさん」を務めていた横山だいすけさんが歌う新曲「あたしおかあさんだから」の歌詞が、インターネット上で批判を集めた。

「あたしおかあさんだから...」と、いろんな「ガマン」を列挙していくことに対して、ネット上では「献身的なお母さん像を呪いのように押し付けている」「ワンオペ育児賛歌だ」などと、違和感を表明する声が相次いだ。

漫画家の渋谷さえらさんは「歌詞を見たら昔を思い出した」と、6ページのマンガをTwitterに投稿した。「すごく共感しました」「泣きそうになりました」と大きな反響が出ている。

Twitter/voxxx
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このマンガによると渋谷さんにも「頑張っていいおかあさんにならねば」と思いこんでいた時期があったという。

育休中に赤ちゃんとひたすら家でいる中で、ストレスを抱え込み、怒りの余り手鍋をコンロにぶつけることすらあった。「子供第一」の生活をする中で、マンガを描くテーマすら見失い「好奇心も知識もない空っぽな女」になってしまった。鏡を見ると、そこには「不満とつらさが全部顔に出たクソババア」がいた。

そこである日、アイドルグループの「でんぱ組.inc」のメンバーだった最上もがに触発されて髪の毛をショートの金髪に。夫のサポートもあって、ライブに行ったり友人とお酒を飲みに行って気分転換をするようになったという。

■考え方を変えて「生きる事自体がかなり楽になった」

ハフポスト日本版では渋谷さんに、どんな思いでこのマンガを描いたのか聞いてみた。

---「あたしおかあさんだから」という歌の歌詞を読んで、渋谷さんの実体験と重ねて、どんなところが似ていると思いましたか?

「あたしよりあなたの事ばかり」

子供はほっとくと死んでしまうので、とにかく全てにおいて子供優先でした。

「今は服もご飯も 全部子供ばっかり」

体温調節がうまくできないからすぐに風邪を引く子供に気候にあった服を、離乳食に移行するために一生懸命野菜やら米やらをすりつぶしたり、とにかく何から何まで自分の事は後回しにして子供の事ばかりしていました。

「あたしおかあさんだから苦手なお料理頑張るの」

料理は本当に苦手で子供がいない時は主人と二人食費が月1万2000円で済んでしまうくらい適当な物を食べていました。さすがに子供の成長のためには、そんな物を食べさせるわけにはいかないので、毎日「今日はこの野菜を使ってこれを作って...」と足りない頭を使ってインターネットのレシピサイトと、にらめっこをしていました。

「あたしおかあさんだからいいおかあさんでいようって頑張るの」

もともと子供は得意ではありませんでしたが、産んだ以上の責任を全うする事、自分の母親も激務の父親に代わって全て一人でやってくれた人だったので「自分も母親のようないいお母さんにならなければ」と無駄に全てを抱え込んでいました。

---なぜ「最上もが」をまねて金髪にしようと思ったのですか?それはお子さんが何歳のころですか?

漫画では判りやすくするためにあのような描き方をしましたが、元々最上もがさんのファンで出産前はでんぱ組.incのライブにも行ってました。このままじゃダメだと思った時にたまたま主人が購読していた雑誌を見たら彼女のグラビアが載っていて、彼女を好きだった事を思い出しました。

金髪ショートにした所で勿論彼女にはなれませんが少しでもクソババアの自分から離れたかったし、鏡を見るたびに最上もがさんと同じ髪型の自分が写る事で「私にはまだ好きなモノがある」という自意識を再確認するために金髪ショートにしました。子供が生後半年くらいの時の事だったと思います。

--- 今はどんなところが歌詞の「おかあさんになるまえ」と似ていますか?

歌詞だと「夜中に遊ぶわ」ですが、終電まで友人と飲んで歩いたりライブに行ったりする所です。

---育児中に考え方を変えて、どんなところが楽になりましたか?

なんというか、生きる事自体がかなり楽になったと思います。命を育てていく事に対するプレッシャーから解放された感じです。当時の日記を見返したら、子供を背負って両手いっぱいに荷物を持って泣いてる自分に、主人が「持ってあげる」と言ってくれている絵が描いてありました。

---「あたしおかあさんだから」という歌の歌詞がネット上で炎上した背景には何があると思いますか?

単純に、子供向け番組で流れるはずの曲なのに子供には到底理解ができないであろう内容だった事。そして時代にそぐわない内容だった事の二点だと思います。子供には「ヒールはいてネイルして立派に働けるって強がってた」という内容は確実に理解出来ませんし、身近にいる私の母親世代の方には「炎上するほどの内容ではない」という意見が多く見受けられました。

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渋谷さんはマンガの最後を「ヒト一人の人生をおかあさんが好きなことを犠牲にしてまで抱え込むなんて無理な話なのです」と締めくくり、「おかあさんだからこそ、好きなモノ、好きな人に頼って大好きな我が子と楽しくいきていければと思います」と結んでいる。

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