劣悪な学術誌「ハゲタカジャーナル」とは? 掲載料が目当て、 根拠乏しい「疑似科学」を拡散

国内の大学でも、こうした出版業者からの勧誘に載らないよう注意喚起が広まっている。
イメージ写真(本文とは関係ありません)
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scanrail via Getty Images

信頼性が低い研究論文を掲載する「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる学術サイトが、SNSで話題になっている。毎日新聞が9月3日、日本から5000本を超える論文が、ハゲタカジャーナルに投稿されている内容の記事を掲載したことがきっかけだ。

掲載料を得るために、まともなチェックもしないため、根拠の乏しい「疑似科学」をまき散らしていることなどが問題視され、国内の大学の研究機関でも注意喚起を始めている。

ハゲタカジャーナルとは

一般的な学術誌やその関連サイトに掲載される論文は通常、次のような審査を経て掲載される。

①筆者が投稿

②査読:論文の関連分野の研究者によるチェック

③審査:編集部や著名な研究者で構成される編集委員会が掲載の可否を判断

ーーこの方法で、研究の質を保つ役割を果たしてきた。

対して、ハゲタカジャーナルは、研究者にメールを送りつけ、迅速な掲載ができるなどと誘うが、実際は編集委員会もなく、査読を経ずに掲載。その引き換えとして、論文著者が数万円の掲載料を支払うよう求める。

掲載料の獲得が目的なので、質の担保については関知しない。それだけでなく、研究者の信頼を得るために、その学術誌の影響力を示す偽のデータまで用意している。

こうしたハゲタカジャーナルの急増が、世界的な問題にもなっている。

様々な研究に助成金を出しているアメリカの国立衛生研究所(NIH)は2017年11月、 NIHの助成を受けた研究は、「明確かつ厳密な査読プロセスを持たない学術誌」で発表せず、信頼性のある学術誌に掲載するよう声明を出した。

国内の大学で注意喚起

国内の大学でも注意喚起の動きが広まっている。

その一つ、熊本大学URA(研究支援)推進室は2017年10月、次のように注意喚起した。

「近年、研究成果の公開についてオープンアクセスジャーナルへの投稿が増加しておりますが、これに乗じて単なる金儲けの手段として活動する悪徳な出版社も一部にはあるようです。"predatory publishers"と称され、predatory = 略奪するという意味からハゲタカジャーナルとして訳されています」

同室の担当者はハフポスト日本版の取材に対し「この時期、ハゲタカジャーナルに関して外部で話題になったことから呼びかけた」と説明する。

アメリカの看護学誌に掲載された「ハゲタカジャーナルに論文を載せる5つの理由」と題した論文によると、ハゲタカジャーナルに投稿する研究者の事情は様々だ。

・高等教育制度が不十分な発展途上国の、経験の浅い研究者たちがターゲットになっている。ハゲタカジャーナルに載ることで評判を落とすことに思いが及ばない

・学術誌で掲載を断られることを研究者が「自分の失敗」と自信を失い、確実に載せられるハゲタカジャーナルに申し込んでしまう

・論文をいくつ出したかが評価される場合、簡単に載せられるハゲタカジャーナルに投稿してしまう

・有名な学術誌と紛らわしい名前に引きつけられてしまう

・ハゲタカジャーナルがどんなものかを承知した上で、載せ続ける

誤った判断による悲劇が起きないよう、この論文では指導教員が掲載先を適切に選んだり、論文の掲載を断られてもあきらめずに信頼ある学術誌に載せられるよう導くーーなどの対応を求めている。

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