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支援から誰も取り残さないために ― 国連の障がい分野のハイレベル政府間会合で提言

災害時の緊急支援、障がい者支援を行う団体として各国に訴える場を持てたことは、本会議にて大きな意味を持ちます。

2017年12月18日 10時58分 JST | 更新 2017年12月18日 10時58分 JST

1992年、アジア太平洋地域における障がい者への認識を高め、域内の障がい者施策の質の向上を目指すために、国連地域委員会の一つ、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP/United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)の総会にて「アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)」が採択されました。その延長となる第二次十年(2003-2012)に続く第三次十年(2013-2022)の中間年にあたる今年、その中間年評価を行うため、11月27日(月)~12月1日(金)の期間、中国・北京で国連ESCAPのハイレベル政府間会合が開催され、AAR Japan[難民を助ける会]から、東京事務局の野際紗綾子と三木将が参加しました。

「アジア太平洋障害者の十年」域内各国の進捗を確認

AAR Japan[難民を助ける会]

アジア太平洋地域の30以上の国から参加者が集まりました(2017年11月27日)

会議には約30の国や地域から、政府関係者や市民団体、障がい当事者団体などが参加しました。初日の本会議では、アジア太平洋障害者の十年の行動計画であり、域内の障がい者の権利を実現するための「インチョン戦略」について各国政府団から取り組みの進捗状況が報告されました。フィジーでは、これまで障がい者に関する法律は一つしかありませんでしたが、2018年、新しい法律が可決されます。キルギスでも2016年、障がい者のリハビリテーションに関する法律が制定されました。さらにシンガポールでは、2020年までにすべての公共バスを車いすでも乗降可能にする予定であることが伝えられ、各国でインチョン戦略が進められていることが共有されました。

二日目は、インチョン戦略を推進していくための本会議の成果文書「北京宣言」について各国からさまざまな修正案が出ました。障がいインクルーシブな災害時のリスク軽減および災害対応に関する項目では、一部の表現を変えるべきという提案に対し、災害時の障がい者のリスクを考慮し、強い表現から弱い表現に変えるべきではないと反対意見が出されるなど熱い議論が交わされました。 また、市民団体からも積極的な声があがり、全日本ろうあ連盟の嶋本恭規氏からは「手話が一つの言語として認められないと、さまざまな社会活動に参加することができず大きな障壁となり、インクルーシブな社会は実現されない。各国政府は手話を言語として認めてほしい」と意見が述べられました。手話の法的な位置づけについては一日目のサイドイベントでも議論が交わされていました。

AAR Japan[難民を助ける会]

会議の発言内容はサイドイベントも含めすべて国際手話で同時通訳されていました(2017年11月27日)

AAR Japan[難民を助ける会]

嶋本氏による訴え。手話が言語と認められていないことで、聴覚障がい者が社会活動に参加する上での大きな障壁となっています(2017年11月28日)

繰り返されてきた災害時の問題

日本障害フォーラム(JDF)主催の、障がい者のアクセシビリティに関するサイドイベントでは、日本障害者協議会副代表の藤井克徳氏が、障がい者のアクセシビリティをしっかり確保することで震災時の障がい者の犠牲を減らすことができると訴えました。UNESCAPによると、アジア太平洋地域の災害時における障がい者の死亡率は、全体の2~4倍だと言われています。
同サイドイベントの公開討論ではAARの野際紗綾子が、これまでの国内外におけるAARの災害緊急支援の経験や、東日本大震災以降の国内災害で繰り返されてきた問題を基に、今後の防災、減災に向けた提言を行いました。(AARの発言の全文(日本語訳)はこちらから。ぜひお読みください)
東日本大震災の後、仮設住宅がバリアフリーでない、避難所に福祉スペースがない、など障がい者のアクセシビリティにおいてさまざまな問題が生じていましたが、それらの教訓は活かされず、2016年の熊本地震や2017年の九州北部豪雨の被災地でも同様の問題が生じていました。インチョン戦略の目標には、災害時の障がい者支援に関する項目も含まれており、災害時の緊急支援、障がい者支援を行う団体として各国に訴える場を持てたことは、本会議にて大きな意味を持ちます。

3日間の事務レベル会合の後、その結果を踏まえ、閣僚級会議にてインチョン戦略を推進していくための今後の政策が話し合われ、よりインクルーシブな社会を実現させていくための北京宣言が採択されました。
今後もAARは、災害支援の経験を活かし、誰も取り残されない社会を目指した提言を行ってまいります。

AAR Japan[難民を助ける会]

本会議場入口にて。AARの野際紗綾子(左)と三木将(右)(2017年11月29日)

AAR Japan[難民を助ける会]

会議3日目には、本会議場の隣で、中国の障がい者による切り絵や書道などのパフォーマンスが行われました(2017年11月29日)

AAR Japan[難民を助ける会]

本会議中、各国政府や市民団体が交流を深めました。AARが障がい者支援を行っているタジキスタンの政府関係者と意見を交わすAARの野際紗綾子(左)(2017年11月28日)

2017年11月28日中国、北京
サイドイベント「アジア太平洋におけるアクセシビリティ」における
AAR声明文(日本語訳)

議長、ありがとうございます。

AAR Japan[難民を助ける会]は日本の人道支援団体で、世界中で約40年間活動してきました。 そしてその活動地には、2011年に起こった東日本大震災の被災地、福島県、宮城県、岩手県が含まれています。

東日本大震災では、障がい者の死亡率が全体の死亡率の2倍であることが判明しました。仮設住宅は車いす利用者には適切でなく、また避難所は障がい者の生存に十分なスペースを提供できませんでした。そして残念なことに、その後のアジアの災害でも同様の問題が繰り返されています。2016年に起きたマグニチュード7.3の熊本震災も同様です。 3.11の教訓はどこへいってしまったのでしょうか?

私たちはこうした問題が、未来の災害において障がい者に起こることを防がなくてはなりません。そのためには3つのアクセシビリティを確保する必要があります。情報へのアクセス、避難所と仮設住宅へのアクセス、そして一人ひとりの障がい者に必要とされる特別かつ適切な支援へのアクセスです。

日本の市民社会の一員として、私たちは以下を提案します。
第一に、(人道支援の)クラスターシステムのような分野別の調整会議の設立です。会議には、効果的な支援につなぐため、障がい当事者の参画が欠かせません。
第二に、平時の避難訓練の計画段階から障がい者を含めること。
第三に、災害対応における国際ガイドラインの作成です。こうしたガイドラインは障がい者への適切な支援を確保するだけでなく、社会全体に裨益します。

アジア太平洋における国レベルの政策やガイドラインの策定は素晴らしいものがあります。 それらを実施し、すべてのプロセスが障がいインクルーシブであることを、各国政府と市民組織に強く要請します。

ありがとうございました。

AAR Japan[難民を助ける会]

サイドイベントにて、災害時の障がい者支援について政策提言するAARの野際紗綾子(2017年11月28日)

2017年11月28日中国、北京
サイドイベント「アジア太平洋におけるアクセシビリティ」における
AAR声明文(原文)

Thank you, Mr. Chairperson

Association for Aid and Relief, Japan (AAR Japan) is a Japanese humanitarian organization with 40 years of experiences in various countries in the world including Fukushima, Miyagi and Iwate Prefectures, which were severely affected by the Great East Japan Earthquake in 2011.

The Great East Japan Earthquake brought a situation which the death rate of Persons with Disabilities was twice as high as the general populations. The design of the temporary shelters was not suitable for the wheelchair users, and evacuation shelters could not provide sufficient space for persons with disabilities to their survival.
We have been unfortunately experiencing the same problems even in the following disasters such as M.7.3 earthquake in Kumamoto-Japan in 2016 and others in Asia and Pacific countries. What were our lessons learned from March 11?

We need to prevent the same problem for Persons with Disabilities to happen in future disasters by ensuring three accessibilities: the accessibility to information, the accessibility to evacuation centers and temporary shelters, and the accessibility to special and suitable support for Persons with Disabilities.

As a member of Civil Society in Japan, we would like to present three suggestions as follows; firstly establishment of coordination meeting for each sector such as cluster system, where we could ensure full participation of Persons with Disabilities, in order to maximize the effective support. Secondly, training of evacuation exercise should include Persons with Disabilities from the beginning. Third, creation of international guidelines on disaster response should enable accessible aid to all.

Suitable support for Persons with Disabilities should serve the society for all. We are proud of development of national policies and guidelines in Asia-Pacific and would like to urge for further commitment of governments and CSOs for implementations and inclusiveness of Persons with Disabilities throughout the process.

Thank you.


【報告者】
東京事務局 三木 将

AAR Japan[難民を助ける会]

2015年7月より東京事務局で広報・支援者サービスを担当。民間企業を経てケニアでボランティア活動に従事。帰国後AARへ。熊本県出身

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