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ケニア:「生きる術」を身に着ける

難民支援と同様に大切なのが、受け入れる側の地域社会への支援です。

2017年10月12日 11時53分 JST | 更新 2017年10月12日 14時20分 JST

もともとは長引くスーダン内戦から逃れてきた人々を受け入れるため、1991年に設置されたケニア北西部のカクマ難民キャンプ。今では15ヵ国からの難民、約17万人が生活しており、その7割が18歳以下です。

AAR Japan[難民を助ける会]はこのカクマ難民キャンプで、2013年12月以降内乱状態にある南スーダンから逃れてきた人々への緊急支援活動を始め、現在はキャンプ内にある5つの中等教育校への教育支援と、難民を受け入れる側の地元の人々への支援を行っています。

AAR Japan[難民を助ける会]
中等教育校を訪問したAAR理事長の長有紀枝(2017年3月)

開設から26年...2世代目になっても難民のまま

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中等教育校に通うソマリア難民の女子生徒たち

カクマ難民キャンプでは、2世代にわたって難民となるのが普通になり、人々は母国への帰還、第三国への定住、ケニアへの社会統合もままならずに生きることを余儀なくされています。

このように難民としての状態が長期化した人々を支えるためには、食糧や簡易住居、医療サービスを一時的に提供するといった対症療法的な支援だけでは足りません。

特に困難な状況に陥りやすい若者や女性・子どもは、ほかの難民や地域社会の人々と社会関係を構築し、生活していくための術を身に着ける必要があります。

"生きる術"を学ぶ

AARはキャンプ内にある5つの中等教育校の教員と生徒を対象に、ライフスキル教育研修とカウンセリング研修を行っています。ライフスキルとはその名の通り"生きる術"を学ぶことです。若者や子どもたちは、長期にわたる不安定な難民キャンプでの生活によるストレスを抱えています。

また、児童労働や早期結婚を強要される、「女性に教育は必要ない」との考え方から学校に行かせてもらえない、親を亡くしたりはぐれたりしたために子どもたちだけで生活せざるを得ないなど、さまざまな困難に直面しています。

ライフスキル教育は、自己認識力やストレス対処法、問題解決能力、対人関係や効果的なコミュニケーション能力の向上を通し、このような困難な状況に対応する術を身に着けることを目的としています。

その内容は「問題を一人で抱え込まない」、「教師や友人に相談して一緒に解決の糸口を探ってもらう」といった基本的なことから、不当な要求や圧力をかわすための対処法など、さまざまです。生徒たちは自分自身に自信をつけるだけではなく、他者とのかかわりの中で生活していく大切さを学びます。

また、紛争のトラウマを抱えている子どもや性的搾取の対象となりやすい若者、とくに女性は深刻な心理状態にあります。AARは各校にカウンセリング棟を建設し、専門家が巡回して生徒の心のケアを素早く実施できる体制を整えています。

同時に、学校教員を対象に社会心理研修を実施し、生徒が教員に相談できる環境を整え、持続的にカウンセリングが行えるよう、人材育成にも力をいれています。

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ライフスキル教育の様子

地元との軋轢をなくすために

一方、難民支援と同様に大切なのが、受け入れる側の地域社会への支援です。

カクマ難民キャンプが位置するトゥルカナ県は、ケニアの中でもとても貧しく、人々はヤギやラクダの牧畜で何とか生計を立てています。自然災害への備えは乏しく、気候変動による干ばつや洪水が人びとの生活に及ぼす影響は甚大です。

このように厳しい環境のなか自力での生活を余儀なくされる地域住民と、住居や食事、教育などの社会的サービスが提供される難民との間には、時として軋轢が生じることがあります。

そこでAARは、カクマ難民キャンプから約30km離れたカロベイエの新居住区で、難民と地域住民がともに利用できるコミュニティセンターの建設を国連機関と共同で開始しました。

建設にあたっては難民と地域住民それぞれに説明を行い、双方の代表者とともに建設予定地を視察。センターのデザインや設備についても皆で話し合いながら、コンピュータールームや図書館、多目的ホールをつくることにするなど、難民と地域住民を巻き込む形でプロジェクトを進めています。

また、屋外にも広いスペースを設け、子どもたちがサッカーやリレーなどスポーツを通して触れ合えるようにする予定です。このセンターが、双方の住民が笑いながら語り合える場になることを願いながら、活動を続けていきます。

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地域住民に説明を行うAARの嶋脇武紀

【報告者】

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ケニア事務所 嶋脇 武紀
2014年12月より現職。大学卒業後、国際物流の会社で航空輸出の仕事に携わる。英国の大学院で国際開発学を学び、帰国後AARへ。東京都出身