東日本大震災:行き場のない方たちのために...山林を開拓してオープン

理事職員4人は、受け入れ先のなかなか見つからない人たちのために、新たな居場所を作ることを決意しました。

岩手県一関市室根町に2017年7月29日、一般社団法人「ほまれの会」が運営する就労継続支援B型事業所「ラボーレペコラ」がオープンしました。雨にも関わらず、開所式には約100名の関係者や地元の方々が来場し、優雅なハープのコンサートが花を添えました。3,000坪と広く、自然の豊かな施設ですが、開所にこぎつけるまでには長い道のりがありました。

受け皿が圧倒的に不足

「ほまれの会」の理事職員4人は全員が気仙沼市出身の被災者。長年、障がい者支援に携わってきました。4人は相談支援事業所に勤務していましたが、被災した障がい者や、家族から虐待を受けた障がい者の方々の受け皿が圧倒的に不足していることを実感したといいます。受け入れ先の基準に合致せず、行き場のない方々が多くいたため、相談支援事業の限界を感じていました。

そんなとき、気仙沼市で造園業を営んでいた被災者の方から「廃業するので室根にある土地と家屋を使ってほしい」との申し入れがあったのです。4人は意気投合し、受け入れ先のなかなか見つからない人たちのために、新たな居場所を作ることを決意しました。

ガーデニングデザイナーの資格も持つ代表理事の菅原さんが描いた施設のイメージ。入居者の皆さんが一生幸せに安心して生活できるようにという想いが込められています。

しかし資金がほとんどなかったために、その作業は難航しました。鬱蒼とした山林の開拓や、雨漏りがひどく床が抜けた家屋の改修を「ほまれの会」の理事職員4人だけで行わなければならず、何度も挫けそうになりました。その度に受け入れ先のない方々の顔が思い浮かび、苦難を乗り越えて2016年11月にグループホームをオープン、さらにまだまだ需要があることを確信して、今回の事業所の立ち上げに至ったのです。

東屋と菜園プランターは福島県二本松市にある旧平石小仮設住宅で使用していたものを運び込みました(2017年7月29日)

ジャパン・プラットフォーム東北事務所の三浦隆一さんのご紹介を受けたAAR Japan[難民を助ける会]は、公益財団法人イオンワンパーセントクラブさまのご支援を活用し、建屋の建設費用の一部と、水道工事費、東屋と菜園プランターの輸送費、厨房機器を提供しました。

「ラボーレペコラ」はイタリア語で「働く羊」を意味するとのこと。敷地内の畑。生産、加工、販売、流通まで目指しています(2017年7月29日)

開所したB 型事業所「ラボーレペコラ」は、当面は季節の野菜や地域の特産物を用いたお惣菜、羊の飼育、果物・野菜・花の苗の栽培、羊毛・果物製品の加工・販売などをしていく予定です。自然の中で動物や植物と触れ合うことによって施設で暮らす方、通所する方の情緒が安定し、少しずつ社会の中で「生きる力」を養えるようにしたいそうです。

また、3,000坪の土地を有効活用して、農業に携わって特産物を生産するだけではなく、加工にも工夫を凝らして流通・販売までの業務展開も目指しています。「ラボーレペコラ」の商品が独居世帯や高齢世帯、スーパーなどの店舗が不足している地域で必要としている方たちにも行きわたるよう、移動販売も視野に入れているとのことです。

さまざまな想いと願いが詰まった「ラボーレペコラ」。お近くに来られる機会があれば、ぜひお立ち寄りください。

※この活動は、公益財団法人イオンワンパーセントクラブ様からのご支援によって実施されています。

【報告者】

仙台事務所 大原 真一郎

製造メーカーでの勤務を経て、2011年8月より現職。仙台を拠点に岩手、宮城、福島の被災地に毎日のように足を運び、復興支援を行う。宮城県仙台市出身

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