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「『LGBTの人』と呼ばれるのは違和感がある」 当事者が語るLGBTの現状と意識

「LGBTという言葉は最近になって爆発的に知られるようになった」

2017年11月04日 15時43分 JST | 更新 2017年11月04日 15時43分 JST

最近メディアなどで聞くことが多くなった「LGBT」という言葉。

LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)の「L」、ゲイ(男性同性愛者)の「G」、バイセクシュアル(両性愛者)の「B」、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)の「T」の頭文字をとったセクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称だ。

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世界ではこの言葉を巡って様々な動きがある。

アメリカでは7月26日、「将官や軍専門家との協議の結果、アメリカ政府はトランスジェンダーを米軍のいかなる職務でも受け入れないことにした」とトランプ大統領がツイッターに投稿し、医療コストや混乱の負担を理由にトランスジェンダーのアメリカ軍での勤務を禁止した。

2015年に全ての州で同性婚を認めることになったアメリカでは、軍にトランスジェンダーの人は約1万5000人いると言われており、大きな反発を呼んでいる。

また、アカデミー賞の最高峰である作品賞を受賞した映画『ムーンライト』(2016年)。黒人コミュニティの中で差別されるゲイの少年を描き、LGBT関連の映画では初の快挙を達成。大きな話題を呼んだ。

LGBTにまつわる動きはアジアでも起こっている。5月には台湾で「同性同士の結婚を認めないことは憲法に反する」という判決が下り、アジアで初の同性婚認可に向けて大きな一歩を踏み出した。

日本では、2年前に渋谷区が同性カップルに対し「パートナーシップ証明書」の交付を開始した。

また9月、テレビのバラエティ番組でのキャラクター「保毛尾田保毛男」がセクシュアルマイノリティを揶揄し笑いのネタにしたとして物議を呼び、BPO(放送倫理・番組向上機構)は「表現の自由の範囲内」とし審査対象にしなかったが、フジテレビは公式サイトで謝罪した。

このように議論が世界中で起こっていることは、LGBTに対する認識が増えてきている予兆なのかもしれない。

■「ゲイの当事者だが『LGBTの人』ではない」

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自身がゲイであることを公表し、LGBTの理解者・支援者を増やすイベント「MEIJI ALLY WEEK」の代表を務める明治大学4年の松岡宗嗣さんに、『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)では話を聞いた。

松岡さんは最近のLGBTを取り巻く状況について「2015年の渋谷区の同性パートナーシップ制度からニュースでも取り上げれるようになり、LGBTという言葉は最近になって爆発的に知られるようになった」と変化を話す。

海外のLGBT事情については、ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏が言及。「1980年代ぐらいから、アメリカの大学のキャンパスで積極的に自分のセクシャリティをカミングアウト(公表)して、差別を無くして理解を深めようという運動が広がっていった。最初はゲイライツ(同姓愛者の人権)と呼ばれていたが、定着してくるとLGBTと分けて、全体で連帯するようになった」と述べた。

また、モーリー氏はLGBTの呼称に多様性があることを紹介。

「LGBTのどれにも当てはまらない人がいることがわかって、LGBTにQ(クィア)という言葉を入れたり、一番長いバージョンだとLGBTQQIP2SAAぐらいまで細分化されるほど色々な呼び名が出てきている。理解を深め社会の認知を深めれば深めるほど、見落とされていた人たちが文字列に加わっていく」と説明した。

L・G・B・T以外の呼称としては、例えば以下のような言葉がある。

「インターセックス(I)」=身体的に男女の区別がつきにくい人

「アセクシュアル(A)」=無性愛者。同性も異性も好きにならない人

「クエスチョニング(Q)」=自分の性別や性的指向に確信が持てない人

呼称を細分化し過ぎることについては「意味があるのか」とコミュニティ内からも異論はあるようだが、松岡さんは「LGBTの人」と呼ばれることに違和感があるという。

「本来は全てのセクシャリティを包括した方がいいが、歴史的な文脈上、便宜的に色んなセクシャリティの人を合わせて『LGBT』と呼んでいるので、(一部を)排除している言葉とは思っていない。ただ、自分自身をゲイの当事者として認識しているが『LGBTの人ですか?』と言われるとそうではない。あくまで一緒に連帯して声を上げていこうという"チーム名"だと思っている。」

この連帯の考えはイベント名にも共通する。「Ally」は味方や同盟といった意味だが、LGBTを理解したい・支援したいと思っている人を表す言葉でもある。

松岡さんは「先ほどのLGBTQQIP2SAAのうちの1つで、そういった理解者・支援者が可視化されることでカミングアウトしやすくなったり、カミングアウトしなくてもこの人は自分を傷つけないだろうと感じられたり、生きやすくなるような環境を作りたいと思っている」とイベント名に込めた思いを明かした。

■LGBTはいないのではなく"見えていない"

「保毛尾田保毛男」騒動に関して、松岡さんはある種の驚きと辛さがあったといい「自分は23歳で、リアルタイムで番組を見ていた世代ではないのである意味驚いた。ホモは差別的な言葉として使われているので、こういう言葉がテレビで放映されてしまうことにびっくりした。身近な年上のゲイの方から、当時は次の日学校に行ったら『保毛尾田保毛男』みたいだなと言われ、いじめられたということを聞いていたので、テレビにもう一回出てきてしまったことは辛いなと思った」と話す。

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モーリー氏はこの騒動を受けてTwitterで動きを追っていたそうで、「中には、ゲイの方でこれを見て育って面白いと思っている人がいて、この件で表現の枠を狭めるのは表現狩りだろうと言って、騒ぎのピンぼけぶりに苛立ちを表現する人もいる」とある意見を紹介すると、松岡さんは「おっしゃる通りで、当事者の中にはむしろ一緒に笑ってたよって人もいる。でも、大事なのは笑いにできない人をどうするかというところだと思うので、当事者の自己責任にはしたくないというのが個人的な思い」と意見を述べた。

モーリー氏はアメリカのアニメ「サウスパーク」を例にアメリカの風土を紹介。

「アメリカでは相当に同性婚も認められ、人権として定着して、反論はありつつも偏見は少なくなっている。アニメの『サウスパーク』はあえてドギツイネタをやるが、社会に理解する土壌があれば、それをゲイの人も理解して笑える。今後、ゲイのコメディアンが日本に出てきて、ゲイネタができなくなったら困ってしまう。他のゲイの人が傷ついたらと考えていたらお笑いができなくなるので、そのバランスが成熟していくことも大事。ルールを先に作るのではなくて」と受け入れる土壌の必要性を訴えた。

電通ダイバーシティ・ラボが全国6万9989名を対象に行った「日本におけるLGBTの割合」の調査では、日本には約7.6%(約1000万人)のLGBTの人がいるとされる。この数字は、左利きの人(約11%)やAB型の人(約9%)と同じくらいの割合ともいえる。

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この割合が示すこととして、松岡さんは「いないのではなく見えていない」と訴える。

「LGBTの人数は、日本で多いとされる名字の佐藤さん、鈴木さん、高橋さん、田中さん、伊藤さん、渡辺さんを合わせた数と同じぐらいと言われている。皆さん今までこの苗字の人に会ったことがあると思う。LGBTというのは、いないのではなく見えていないマイノリティなので、自分の周りにはいないよとか、うちの会社にはいないよと言われてしまうのが現状だと思う。」

なお、7.6%(約1000万人)はあくまでネット調査で答えた人の割合であり、「もちろんカミングアウトしている人もしていない人も対象に聞いているので、このうちカミングアウトしている人はもっと少ないんじゃないか」と松岡さんは述べた。

(AbemaTV/『けやき坂アベニュー』より)

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(2017年11月3日「AbemaTIMES」より転載)