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視覚・聴覚に障害を持つ人を対象にした唯一の国立大「筑波技術大学」とは!?

新技術より理解が必要?

2017年12月06日 13時16分 JST | 更新 2017年12月06日 13時16分 JST

 視覚障害者か聴覚障害者であることを入学条件にした日本で唯一の大学として知られている筑波技術大学(茨城県つくば市)をご存知だろうか。「社会に貢献できる先駆的な人材育成、高い専門性を授ける」という理念のもと1987年に設置された国立大学で、保健科学部と産業技術学部の2学部が存在、院生を含め360人以上の生徒が在籍している。4日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、同大学を取材した。

■IT技術の進歩で縮まる健常者との差、一方で課題も

 まず、視覚障害者を対象とした保健科学部のある春日キャンパスを訪ねた。「視覚障害といってもいろいろある。視野が狭い学生さんや真ん中だけが見えないという学生さん、ちょっと見えにくい"弱視"から全盲の学生さんまで様々」(保健科学部の小林真准教授)。キャンパス内には点字ブロックはもちろん、点字図書も充実。授業ではあんまの応用実習や点字の理論と実践など、独自のカリキュラムが組まれ、高度な専門知識と技術を身につけることができる。

 学生の長谷川颯さんは、目が見えないことによる苦労はIT技術の進歩によって改善したと話す。小林准教授も「新聞も読めなかったのが、インターネットに音声でアクセスできるようになったため、今ではスマホでニュースサイトも見られるし、TwitterもLINEも見ることができる。得られる情報は多くなった。ただ、それ以上に画像や動画が発達しているので、健常者との差が開いたという考えもあるかもしれない」と話す。

 そんな筑波技術大学が世界から注目を集めることになった技術を生んだのが松尾政輝さん(修士課程2年)だ。画面のコードを読むことが出来ない松尾さんは音声読み上げソフトを使い、聴覚で情報を取得してプログラムを組む。ゲーム開発を手掛ける松尾さんは「見えない人と見える人が一緒に楽しめるゲームを作り、どうやったら一緒に遊べるかという研究している」と話す。松尾さんが開発したゲームは、キャラクターの動きを手でも把握できるようにすることで視覚障害者もプレイできるようにした。

 「目は2歳ぐらいまでは見えていたそうだが、自分ではあんまり見ていた時の記憶はない」という松尾さん。「画面が見られないから遊べるゲームがほとんどなくて、みんなの輪の中にもなかなか入れなかった。じゃあみんなで遊べるゲームを作れたら良いじゃないかと思ってプログラミングを始めた」。

 技術力の高さだけでなく、独自の発想も併せ持つ松尾さんの活動の背景には、スマートフォンの普及など、IT技術の進歩がある。しかしその反面、乗り越えられない壁もあるのだという。

 その答えを求め、聴覚障害者を対象にした産業技術学部のある天久保キャンパスを訪れると、どんな場所でも手話で会話が伝わりやすいように工夫が施されている。チャイムの代わりにはライトが点灯、生徒の注意を引く必要があるときにはライトが点滅する。産業技術学部の河野純大准教授もITの進歩について「いろんなところに技術を使ったサポートが増え、活躍できるところが増えていく」と話す。

 しかし、同学部でのコミュニケーションの最先端技術に関する授業では、技術だけに頼らず、手話で直接対話することを重視している。その理由について同学部の加藤伸子教授は「情報機器の音声認識技術が非常に進んだおかげで便利になった面はたくさんある。ただ、全て問題が解決したように受け取られることが多いが、聴覚障害者と聞こえる人の間のコミュニケーションを技術が阻害する面もある」と指摘した。

 修士課程1年の加藤優さんは「例えば地震が起きたり、電車が事故で急に止まったりしたときにはやっぱり助けてほしいなと思う。何かアナウンスがあっても分からないし、ずっと本を読んでいて気が付かないということもある。緊急の時には、障害があるということを周りの人にわかってほしいなと思う」と話す。

■48.8%にとどまっている障害者雇用の達成率、解決策は

 世界的に見ても障害に対する理解が浅いと言われている日本。およそ1年前、神奈川県の施設で19人の障害者が殺害された事件も記憶に新しい。

 松尾さんは「特に障害を不幸だなと感じたことはほとんど、いや、全くない」と話し、「健常者から障害者への声かけというのもあるが、障害者の方が周りにいる人たちに自分の状況を伝えたり、自分の困っていること、できること、できないことというのを伝えることが大事かなと思う」と訴える。加藤さんは「聞こえない自分に合った生き方を探しながらこれまで生きてきたので、むしろ幸せだったのかなと思う」としながらも、「言葉が通じないことにいつも悩んでいる。みんなが言葉をスムーズに感じて、コミュニケーションが取れる世界になっていったら良いなと思う」と話した。

 学生たちに関わる小林准教授は、障害者に対して特別な意識はないと話す。「身の回りに普通にいるので、隔離されたりしている状況を見ると逆に違和感を感じる。そういう違和感がなくなる社会になると良いなと思う」。河野准教授も「なぜわざわざ障害者と言っているのかは引っ掛かる。私も学生と向き合う中で、相手が聞こえないから伝え方には工夫はあるが、向き合う時の気持ちはみんな同じ」と率直な思いを明かした。

 全国の特別支援学校に在籍する視覚障害・聴覚障害者の大学進学率は約36%。小林准教授によると、人口が減少する中、進学率は上昇しているのだという。また河野准教授も「割合が高くなってきているので良いことだと思う。受け入れたことがない大学はサポートができないと回答をすることも多く、入学できない状況もあった。しかし去年、障害者差別解消法が施行され、これからもう少し増えていくと思う」とした。

 就職希望者のほぼ100%が就職しており、鍼灸師や理学療法士、電機メーカーや通信会社などで活躍している筑波技術大学。しかし現在、障害者の法定雇用率は民間企業で2.0%、国・地方公共団体等では2.3%と定められているが、達成している企業は48.8%にとどまっている。障害者の就職について、どのようなサポートが必要なのだろうか。

 小林准教授は「もっと自分でやりたいことがいっぱいあると思うので、最初からやれないと決めつけないで、いろんなことをやらせて欲しい。そういうサポートツールはいっぱいあるので、ぜひそういう機会を与えてあげて欲しい」、河野准教授は「会社に入って周りが聞こえないということがわからないので、そこのサポートを周りの方も増やしていくような形で、一緒にもっと力を発揮していくような社会になって欲しい」と語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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(2017年12月5日AbemaTImesより転載)