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「同じ釜の飯」はマボロシ!?カンボジア人テーラーたちとの愛と哀しみの日々

2017年01月20日 17時45分 JST | 更新 2017年01月20日 17時45分 JST

カンボジアより、こんにちは!

オリジナルシャツブランド「Sui-Joh」を経営する浅野佑介です。

習慣、文化が違う国々。その国で生き残っていくために必要なこと。

それは、その国のありかたを知り、受け入れ、その国で仕事をさせてもらっている、という想いを忘れないことだと思います。

しかし、自分の知らない考え方を受け入れることは、僕にとってはバッターボックスで魔球や変化球を投げられたような、とても難しいことでした。

「ようやく見つけた!」理想的な委託先

それを痛切に感じた事件が、事業を立ち上げた当初にありました。

Sui-Johは当初、自前の工房はもち合わせていませんでした。僕は委託製造先を探すべく、プノンペン市内のテーラーをしらみつぶしに訪ね、シャツのオーダーを繰り返しました。

その時に最も問題となったのは、当時ほとんどクメール語ができなかった僕の言語能力不足も大きな要因ですが、仕上がり予定日にできていない、頼んだものと違う生地が使われる、ボタンの間違いなどでした。

日本でいう「ホウレンソウ」が徹底されれば防げるはずのミスが頻発しました。

それに疲れ、あきらめかけたある日の夕方。

あるテーラーの前を通り過ぎ、「一応、ここでもオーダーしておくか」と自転車をUターンさせました。オーナーのティアさん(女性)とテーラーが4名の、家族経営のお店です。

 

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▶オーナーのティアさん

 

ラジオから流れるクメール音楽をみんなで聴きながらミシンを踏む姿が、僕はとても好きでした。ほかのテーラーと比べて、Sui-Johが何を目指すのかという話もよく聞いてくれました。

お母さんみたいなヌアン、お姉さんタイプのパウ、じゃじゃ馬娘のジャン、お調子者の男子チョン。「ようやく見つけた」と、思いました。

それから長い付き合いになりました。彼らと過ごす時間は本当に楽しかったのです。時に口論もしましたが、より仲が深まった、とも思っていました。

連休明け、みんなが帰ってこない!

カンボジアのお盆前の勤務最終日、普段と変わらない会話がそこにありました。

「早く日本に店を出して、私を連れて行ってね。じゃ、またお盆後ね!」と、合言葉のような会話を交わし、みんな帰省していきました。

しかし、お盆が明けて1週間が経過しても、ヌアンを除く3人は帰ってきませんでした。

カンボジアでは、大型連休の後、田舎から戻るのが遅れるのはよくあること。だから、最初はそのようなものだと思っていました。

だって、僕らは同じ釜の飯を食べた仲間として1年以上築いてきた関係があります。

それにしがみついていた僕は、戻ってこない可能性がある、という考えすら排除していました。何か病気や問題が起こったのではないのか、と心配したくらいです。電話しても電源が入っていない状態でした。

やっと連絡がついたひとりから「私、もう辞めたのよ」と何の悪気もない口調で告げられました。響き的に「今日は天気が良いね~」とでも言っているかのようなトーンでした。

 

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▶街のテイラーたち

 

僕はカンボジア人について、大きく誤解している部分がありました。

関係を築けば、彼女たちが何の相談もなしに離れていくことなどありえない、そう思っていたのです。

しかし実際は違ったのです。

農村部で育った彼らの幼少期の話を思い出してみると、そこに今回の出来事のヒントがあったように思います。

田舎の学校の先生は、自分の都合で授業を突然休みにしたり、簡単に教師を辞めてしまったりします。また、小銭を払えば試験の問題を買うことができる、という話さえあります。

身近な大人のそういう振舞いを見て育ち、自分がその行動を選ぶことによってどのような影響が出るかという点について、気にかける習慣は身につかなかったのでしょう。彼らに、悪気はないのです。

幸せになるための選択肢、価値観はひとつではない

その確証を得たのは、約2ヶ月後のある日。辞めた子から電話がかかってきたのです。

文句のひとつでも言ってやろうと意気込んで電話に出ると、「ひさしぶり! 元気? 仕事は順調? 今プノンペンに来ているから、一緒にご飯食べに行かない?」と、あの頃と変わらぬ元気で明るい声で、話し始めたのでした。

帰ってこなかった時は裏切られたような、見捨てられたような気分でした。

でも、彼女にしてみると、裏切ったのでも見捨てたのでもない。自分が幸せになるため仕事を辞めるという選択をしただけ。

僕にとっては悲しいことだったけれど、社会保障など無い現在のカンボジアを、自分に正直に生き抜く術なのかもしれません。

 

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▶工房の仲間たちと

 

彼女の底抜けに明るい声を聞いて、怒っていた気持ちがばかばかしくなりました。

そして無意識に、自分が「常識」を押しつけていたのかもしれない、と思ったのです。

この考え方が正しいのかどうかは、今でも分かりません。

でも、今後もカンボジア人と一緒に楽しく働き、生きていくために、彼らからまだまだ学ぼう、と思っています。

 

 

 

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ライター

浅野 佑介/Yusuke Asano

日常にHAPPYと彩りをお届けするカンボジア発のファッションブランド、Sui-Johの創設者。1981年愛知県生まれ。4人兄弟の長男。会社員を経て、2010年秋よりプノンペン市内のNorton大学 大学院へ入学。その中で、ファッションと文化の融合を目指しシャツ作りを始め、現在はトートバッグやポーチなど幅広く制作をしている。モットーは"Happiness is only real, when it's shared"。ブログに日々をつづっている。

 

 

 

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