海外生活を通して変化した、日本の「頑張る」文化とワーク・ライフ・バランスへの捉え方

日本社会にいると、知らずのうちに、「頑張る精神」へのコミットは人の頭の中に埋め込まれているように思います。

今年は、安倍政権が働き方改革を推進するなどの動きもあり、多くの企業が「働き方変革」「ワークスタイルバランス」といったキーワードを取り入れているように思います。

個人的に2016年は、シンガポールに身をおき米国の会社に勤め、日本のオフィスへ出張に行く機会も幾度かあった年となりました。

そんなトレンドに合わせて、国によって異なる、働く環境について考えてみました。

シンガポール人の視点からみた、日本人の働き方

シンガポールでは日系企業の進出が活発で、日系企業に勤める非日本人の友人も多く、働く文化に関する本音を聞くことがしばしばあります。

日系企業/日本人の働き方の特徴のひとつとして、「プロセス重視」で「効率性の追求に欠ける」ということは、実際の声でよく耳にします。

ある時、大手日系企業に勤めるシンガポール人の友人との会話で、こんな意見を聞きました。

「日本人は、1の地点から100まで行くのに、12345......とすべて順番に踏もうとする。結果に繋がるための的さえ打てば、1から100まですべて押さえなくても効率は良いはずなのに」

私は思わず「なるほどー、確かに!」と、今まで気づかなかったことに深く頷かされてしまいました。

1から100まできっちりと踏んだ人は、「たとえ小さなことでも無駄なものは何も無い、よくやりきった」と、効率よりも「頑張り」が尊重されます。

みんなで頑張る文化

学校生活で経験した運動会や文化祭、クラスの学期目標、部活動などで打ち出した、スローガンを思い返してみてください。努力、根性、初志貫徹、一致団結......

思い返すと、「みんなで」「頑張る」ワードが頻繁に使われることが多かったように思います。

日本において、「頑張ること」は美徳です。

「上司が残っているから、まだ退社する雰囲気じゃない」という考えが生まれやすいのも、「集団で頑張る」ことが根本的に尊重されていて、「そのコミットから抜けること」がマイナスになることに起因しているのかもしれません。

日本社会にいると、知らずのうちに、「頑張る精神」へのコミットは人の頭の中に埋め込まれているように思います。

まだ社会人として働くことの「は」の字も知らないうちから、学校の書道の課題として出され「根性」という言葉に向き合い、たったの二文字をゆっくりと、何度も書き直します。夏休み明けには、壁の隅から隅までひたすら「根性」の文字で埋め尽くされた教室で毎日を過ごします。

アルファベットの「Effort(努力)」という文字を、ペンを紙につける瞬間から放す瞬間まで意識を集中して向き合い、「頑張ること」を人生の中で尊重するようなカルチャーは日本以外で、あまり見たことがありません。

日本人としてワーク・ライフ・バランスを気遣うべきポイント

私が海外生活を初めて経験したのは、学生時のカナダとアメリカへの留学でした。

世界で最も住みやすい街ランキングの上位に毎年位置するカナダのトロントの人々の生活や、欧州や南米など様々なバックグラウンドの人々の生き方のビジョンに触れて、「ライフ」に関して強くインスパイアを受けました。それまで考えたことが無かったほどに、「人生を楽しむことに、こんなにも一生懸命になる」ことの素晴らしさと、「日本人は人生を楽しむことが大概下手だ」ということを感じました。

私は、目標を達成したり思い描くものに到達したりするために、頑張る姿勢をもつことは常に大事にしたいと思っています。

でも、それは仕事や勉強だけでなく、「人生を精一杯楽しむことに頑張る」だったり、「自分が生きたいビジョンを実現するための努力」だったり、「生きる」という広い範囲でエナジーを使うようにしていたいからです。

それに加えて、海外で様々な生き方をする人々と出会い、働く・生きる環境に身をおいて、「日本の頑張る文化の強さと独自の美徳」を客観的に見るようになりました。

仕事をしていて、つい「頑張らなくちゃ!」と自分に言い聞かせることが多くなりがちな私ですが、「必ずしも頑張らなくてもいいんだよ」と自分に声をかけることも必要だと心がけるようにしています。

インターナショナルなチームの中でも、私はやり遂げたいことのために遅くまでオフィスに残ってしまうことが多めです。時間をかけずに、力まずに、できるだけ生産的で効率的に成果を最大化させるようになることは、まだまだ私にとって大きな課題です。

「楽しんでる?」「それは私の生き方?」と随時自分のステータスに尋ねて、その回答を自分の心の声として大切にし、ワーク・ライフ・バランスのメンテナンスをしていくことは、現代の多くの日本人に求められていることかもしれません。

ライター

Erisa

平成元年生まれ。都内の大学を単位ギリで卒業後シンガポールに渡り、米リサーチ企業入社。2015年秋より米大手IT企業に転職し、新な成長痛に奮闘中。仕事も生活も、シンガポールでのいろんな人と文化に囲まれカラフルな日々。好きなものは、人・食べること・飲むこと・旅。

カフェとか可愛い要素皆無の海外就職の仕方、グローバルとキャリアについてのブログ『新卒海外就職啓蒙プロジェクト』

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